336 / 514
22-26
しおりを挟む
すると、二葉が理久から呼ばれてリビングへ行った。バラエティー番組の中に面白いものが出て来たそうだ。
俺はキッチンカウンターのそばに残り、そっと椅子に腰かけた。この間の会食の夜の分を見ると、22時過ぎにメッセージが入っていた。これから帰るという一言のみだ。
「明日の夜、帰って来てほしくなった。ううん……、言わないでおこう。あ、沙耶さんだ……」
さらに指を滑らせていくと、沙耶さんの結婚式で撮った写真が出て来た。この日、TDDという名前のバンドで活動することが決まった。
すでに、”Dear drop”という名前のバンドがデビューしていたから、当初予定していた。”Dear drops”が使えなかった。別の名前にするしかなくて、俺の思い付きである、”TO Dear Drops”を選んだ。商標登録関連に引っかからなかったことには、後から首を傾げた。
「……TO、Sが付く違いだから、紛らわしい。よくOKが出たな。あのバンド、解散したのか」
ディアドロップのボーカルのEMIRIが久弥の仕事を妨害したくて、わざとぶつけてきたものだと解釈している。IKUに喧嘩を売るようなものだ。そういうレコード会社は見つからなかったのだろう。個人で立ち上げたレーベルからデビューしたのを知り、そこまでやるのかと驚いた。邪魔だけをしたかったのかな?それも不思議だ。
「この際だ。やっぱり新しいバンド名で始めたいな。久弥がギタリストで参加しての、TDDだもん。聡太郎みたいに……、再開させたんだ。ふう……、あ、黒崎さんだ!」
心配かけたのは分かる。スクロールしたまま画面をタップした結果、間違えて切ってしまった。すぐにかけ直すと、スピーカーから聞こえて来たのは、落ち着いた声だった。
「もしもし、黒崎さーん。ごめんね」
「……構わない。どうした?」
「あのね。俺は飛んで行かないよ~~っ」
「……助かる。家から外に出ていないなら安心だ。食事はしたのか?」
「うんっ、北欧堂の夏御膳、厚焼き玉子、あさりの澄まし汁。……理久が遊びに来て、晴海お兄ちゃんも入ってもらって、6人で食べたんだよ。今、リビングで盛り上がっているよ。……理久のおじいさんの話を思い出して、あんたとすれ違いたくないって思った。だから電話したかったんだ」
「……熱が出ているだろう?早めに寝ておけ」
「……あ、そうかもしれない」
さっそく首筋へ手を当てると熱く感じた。明日はプラセルのオフィスで過ごすが、ここで一日寝てもいいだろう。黒崎にそう話すと、そうしろという返事が返ってきた。
「どうして熱が出ているって分かったの?」
「……そうやって心配事が出て来る時は、熱が出る前だ。忙しくて疲れが出たんだろう。……一貴へ電話すると伝えてくれ。航空便を前倒ししておいてよかった」
「黒崎さん……」
「……お前が言うところの、大魔王の勘だろう。明日の朝、電話する。おやすみ」
「うんっ、おやすみなさい」
電話を切った後、じんわり身体が温かくなった。心も同時にだ。そこへ、リビングから俺の事を呼ぶ声が聞こえてきた。
さっそく向かうと、羽音さんと悠人との3人で出演した番組の映像が流れていた。すでに放送が終わっている分だ。面白映像として、番組内のコーナーで取り上げてもらったようだ。
この撮影が面白かったよと話しながら観ていると、俺の下の方へテロップが出てきた。"お兄ちゃんがデビュー予定です”と。咄嗟に控えめの声を上げたのは、条件反射だった。
俺はキッチンカウンターのそばに残り、そっと椅子に腰かけた。この間の会食の夜の分を見ると、22時過ぎにメッセージが入っていた。これから帰るという一言のみだ。
「明日の夜、帰って来てほしくなった。ううん……、言わないでおこう。あ、沙耶さんだ……」
さらに指を滑らせていくと、沙耶さんの結婚式で撮った写真が出て来た。この日、TDDという名前のバンドで活動することが決まった。
すでに、”Dear drop”という名前のバンドがデビューしていたから、当初予定していた。”Dear drops”が使えなかった。別の名前にするしかなくて、俺の思い付きである、”TO Dear Drops”を選んだ。商標登録関連に引っかからなかったことには、後から首を傾げた。
「……TO、Sが付く違いだから、紛らわしい。よくOKが出たな。あのバンド、解散したのか」
ディアドロップのボーカルのEMIRIが久弥の仕事を妨害したくて、わざとぶつけてきたものだと解釈している。IKUに喧嘩を売るようなものだ。そういうレコード会社は見つからなかったのだろう。個人で立ち上げたレーベルからデビューしたのを知り、そこまでやるのかと驚いた。邪魔だけをしたかったのかな?それも不思議だ。
「この際だ。やっぱり新しいバンド名で始めたいな。久弥がギタリストで参加しての、TDDだもん。聡太郎みたいに……、再開させたんだ。ふう……、あ、黒崎さんだ!」
心配かけたのは分かる。スクロールしたまま画面をタップした結果、間違えて切ってしまった。すぐにかけ直すと、スピーカーから聞こえて来たのは、落ち着いた声だった。
「もしもし、黒崎さーん。ごめんね」
「……構わない。どうした?」
「あのね。俺は飛んで行かないよ~~っ」
「……助かる。家から外に出ていないなら安心だ。食事はしたのか?」
「うんっ、北欧堂の夏御膳、厚焼き玉子、あさりの澄まし汁。……理久が遊びに来て、晴海お兄ちゃんも入ってもらって、6人で食べたんだよ。今、リビングで盛り上がっているよ。……理久のおじいさんの話を思い出して、あんたとすれ違いたくないって思った。だから電話したかったんだ」
「……熱が出ているだろう?早めに寝ておけ」
「……あ、そうかもしれない」
さっそく首筋へ手を当てると熱く感じた。明日はプラセルのオフィスで過ごすが、ここで一日寝てもいいだろう。黒崎にそう話すと、そうしろという返事が返ってきた。
「どうして熱が出ているって分かったの?」
「……そうやって心配事が出て来る時は、熱が出る前だ。忙しくて疲れが出たんだろう。……一貴へ電話すると伝えてくれ。航空便を前倒ししておいてよかった」
「黒崎さん……」
「……お前が言うところの、大魔王の勘だろう。明日の朝、電話する。おやすみ」
「うんっ、おやすみなさい」
電話を切った後、じんわり身体が温かくなった。心も同時にだ。そこへ、リビングから俺の事を呼ぶ声が聞こえてきた。
さっそく向かうと、羽音さんと悠人との3人で出演した番組の映像が流れていた。すでに放送が終わっている分だ。面白映像として、番組内のコーナーで取り上げてもらったようだ。
この撮影が面白かったよと話しながら観ていると、俺の下の方へテロップが出てきた。"お兄ちゃんがデビュー予定です”と。咄嗟に控えめの声を上げたのは、条件反射だった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる