上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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22-26

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 すると、二葉が理久から呼ばれてリビングへ行った。バラエティー番組の中に面白いものが出て来たそうだ。

 俺はキッチンカウンターのそばに残り、そっと椅子に腰かけた。この間の会食の夜の分を見ると、22時過ぎにメッセージが入っていた。これから帰るという一言のみだ。

「明日の夜、帰って来てほしくなった。ううん……、言わないでおこう。あ、沙耶さんだ……」

 さらに指を滑らせていくと、沙耶さんの結婚式で撮った写真が出て来た。この日、TDDという名前のバンドで活動することが決まった。

 すでに、”Dear drop”という名前のバンドがデビューしていたから、当初予定していた。”Dear drops”が使えなかった。別の名前にするしかなくて、俺の思い付きである、”TO Dear Drops”を選んだ。商標登録関連に引っかからなかったことには、後から首を傾げた。

「……TO、Sが付く違いだから、紛らわしい。よくOKが出たな。あのバンド、解散したのか」

 ディアドロップのボーカルのEMIRIが久弥の仕事を妨害したくて、わざとぶつけてきたものだと解釈している。IKUに喧嘩を売るようなものだ。そういうレコード会社は見つからなかったのだろう。個人で立ち上げたレーベルからデビューしたのを知り、そこまでやるのかと驚いた。邪魔だけをしたかったのかな?それも不思議だ。

「この際だ。やっぱり新しいバンド名で始めたいな。久弥がギタリストで参加しての、TDDだもん。聡太郎みたいに……、再開させたんだ。ふう……、あ、黒崎さんだ!」

 心配かけたのは分かる。スクロールしたまま画面をタップした結果、間違えて切ってしまった。すぐにかけ直すと、スピーカーから聞こえて来たのは、落ち着いた声だった。

「もしもし、黒崎さーん。ごめんね」
「……構わない。どうした?」
「あのね。俺は飛んで行かないよ~~っ」
「……助かる。家から外に出ていないなら安心だ。食事はしたのか?」
「うんっ、北欧堂の夏御膳、厚焼き玉子、あさりの澄まし汁。……理久が遊びに来て、晴海お兄ちゃんも入ってもらって、6人で食べたんだよ。今、リビングで盛り上がっているよ。……理久のおじいさんの話を思い出して、あんたとすれ違いたくないって思った。だから電話したかったんだ」
「……熱が出ているだろう?早めに寝ておけ」
「……あ、そうかもしれない」

 さっそく首筋へ手を当てると熱く感じた。明日はプラセルのオフィスで過ごすが、ここで一日寝てもいいだろう。黒崎にそう話すと、そうしろという返事が返ってきた。

「どうして熱が出ているって分かったの?」
「……そうやって心配事が出て来る時は、熱が出る前だ。忙しくて疲れが出たんだろう。……一貴へ電話すると伝えてくれ。航空便を前倒ししておいてよかった」
「黒崎さん……」
「……お前が言うところの、大魔王の勘だろう。明日の朝、電話する。おやすみ」
「うんっ、おやすみなさい」

 電話を切った後、じんわり身体が温かくなった。心も同時にだ。そこへ、リビングから俺の事を呼ぶ声が聞こえてきた。

 さっそく向かうと、羽音さんと悠人との3人で出演した番組の映像が流れていた。すでに放送が終わっている分だ。面白映像として、番組内のコーナーで取り上げてもらったようだ。

 この撮影が面白かったよと話しながら観ていると、俺の下の方へテロップが出てきた。"お兄ちゃんがデビュー予定です”と。咄嗟に控えめの声を上げたのは、条件反射だった。
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