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てきぱきとモニター越しの会話を済ませて、聖河さんがファイルにペンを走らせた。その間に、黒崎からベッドに横にさせられた。よかったな、甘い物が食べられるぞと言って、笑っていた。
黒崎の肩越しに見えているのは、午後から置かれた小さめの機械だ。良くなっているから、小さなものに変わったのだと、教えてもらった。そして、明後日の午前中に退院が決まり、ホッとした。
「ありがとうございます。ホッとしたよ」
「……当院は融通がきくというか、方針が柔らかい。いろんなリクエストに応えていますよ。食べてもらわないと困りますし。……朝食の希望はありますか?」
「うん。えーーっと」
「フルーツ、ヨーグルトとか。おかゆの量は?」
聖河さんが静かに待ってくれた。何かリクエストをしないといけない。そういう気になるほどの、真面目な様子で佇んでいる。俺が焦っているのが分かったのか、黒崎が笑っている。
おかゆの食器に視線を向けて、ある事に気づいた。もっとサラサラした方がいい。これを頼んでみよう。
「思いついたよ。おかゆの汁気、多めの方が好きなんだ。少しだけ増やして欲しい」
「……汁気をですか。ご飯が固かった?」
「ううん。おつゆの量のことだよ。サラサラしたのがいい」
「……なるほど。そういうことか。……山岸です。黒崎夏樹さんの朝食ですが、つゆだくのお粥でお願いします。……そう、つゆだくで。……それから、僕の分で出前もお願いします。クスノキ屋の……、ねぎ玉牛丼。つゆだくで。……お願いします」
「聖河さん、面白いねえ」
「……本人は真面目だ」
「あんた、笑っているじゃん~」
「……寝ていろ。すぐに届かない」
「……おまたせしました。……ああ」
聖河さんが苦笑した。牛丼ばかり食べて栄養が偏ると、スタッフから注意されたそうだ。さっきモニター越しに聞こえて来た笑い声は、また違った意味合いだと思う。
「医者の不養生といいます。たんぱく質と野菜、炭水化物が一度に食べられるけど、なかなか理解してもらえない」
「うちの家もそうだよ。ざるそばと、カツ丼オンリーの2人がいるんだ」
「ああ、島川さんのことですね。佐伯さんに抱きついていたから、取り押さえました。僕の方で……。ご友人にも手伝って頂けました……」
「ええー?警察に捕まった!?」
「……夏樹、心配するな。聖河さんの冗談だ。一貴が久弥さんの荷物を持った時に、つまづいて転びかけた。その時に抱きついたんだ。裕理も一緒に居たぞ」
「よかった~。……ふあ、ふあーー、くしゃみ……、ティッシュ。どこどこ……」
いきなり鼻がムズムズした。勝手が違うから手を伸ばしても取れなくて、聖河さんからサッと差し出された。瞬時の動きに驚きながら、くしゃみを出した。二連発だ。
「ふあああーー、ぶあっくしょん!ああーー、はあーー」
「……拭いてやる。こっちを向け」
「うん……。ずず……、もっと?んん……」
「まだだ。寒いのか?」
黒崎から鼻を拭いてもらい、はっと我に返った。いつもやってくれるのに甘えて、何の抵抗もなく身を任せてしまった。黒崎が決まり悪そうにした。聖河さんの方は軽く頷いて、またファイルにペンを走らせている。
「あの……、書いているの?」
「もちろんです。……仲が良いですね。圭一君が鼻水を拭いてあげていたと。……また熱が出て来たかな?診察します。パジャマの前を開けて下さい」
「は、はい……」
聴診器を向けて来たから、すぐにパジャマのボタンを外した。面倒くさいから脱いでおこう。アンダーシャツ姿になり、自分の二の腕の内側を見て後悔した。一昨日の夜に黒崎から付けられた、キスマークが残っていた。
黒崎の肩越しに見えているのは、午後から置かれた小さめの機械だ。良くなっているから、小さなものに変わったのだと、教えてもらった。そして、明後日の午前中に退院が決まり、ホッとした。
「ありがとうございます。ホッとしたよ」
「……当院は融通がきくというか、方針が柔らかい。いろんなリクエストに応えていますよ。食べてもらわないと困りますし。……朝食の希望はありますか?」
「うん。えーーっと」
「フルーツ、ヨーグルトとか。おかゆの量は?」
聖河さんが静かに待ってくれた。何かリクエストをしないといけない。そういう気になるほどの、真面目な様子で佇んでいる。俺が焦っているのが分かったのか、黒崎が笑っている。
おかゆの食器に視線を向けて、ある事に気づいた。もっとサラサラした方がいい。これを頼んでみよう。
「思いついたよ。おかゆの汁気、多めの方が好きなんだ。少しだけ増やして欲しい」
「……汁気をですか。ご飯が固かった?」
「ううん。おつゆの量のことだよ。サラサラしたのがいい」
「……なるほど。そういうことか。……山岸です。黒崎夏樹さんの朝食ですが、つゆだくのお粥でお願いします。……そう、つゆだくで。……それから、僕の分で出前もお願いします。クスノキ屋の……、ねぎ玉牛丼。つゆだくで。……お願いします」
「聖河さん、面白いねえ」
「……本人は真面目だ」
「あんた、笑っているじゃん~」
「……寝ていろ。すぐに届かない」
「……おまたせしました。……ああ」
聖河さんが苦笑した。牛丼ばかり食べて栄養が偏ると、スタッフから注意されたそうだ。さっきモニター越しに聞こえて来た笑い声は、また違った意味合いだと思う。
「医者の不養生といいます。たんぱく質と野菜、炭水化物が一度に食べられるけど、なかなか理解してもらえない」
「うちの家もそうだよ。ざるそばと、カツ丼オンリーの2人がいるんだ」
「ああ、島川さんのことですね。佐伯さんに抱きついていたから、取り押さえました。僕の方で……。ご友人にも手伝って頂けました……」
「ええー?警察に捕まった!?」
「……夏樹、心配するな。聖河さんの冗談だ。一貴が久弥さんの荷物を持った時に、つまづいて転びかけた。その時に抱きついたんだ。裕理も一緒に居たぞ」
「よかった~。……ふあ、ふあーー、くしゃみ……、ティッシュ。どこどこ……」
いきなり鼻がムズムズした。勝手が違うから手を伸ばしても取れなくて、聖河さんからサッと差し出された。瞬時の動きに驚きながら、くしゃみを出した。二連発だ。
「ふあああーー、ぶあっくしょん!ああーー、はあーー」
「……拭いてやる。こっちを向け」
「うん……。ずず……、もっと?んん……」
「まだだ。寒いのか?」
黒崎から鼻を拭いてもらい、はっと我に返った。いつもやってくれるのに甘えて、何の抵抗もなく身を任せてしまった。黒崎が決まり悪そうにした。聖河さんの方は軽く頷いて、またファイルにペンを走らせている。
「あの……、書いているの?」
「もちろんです。……仲が良いですね。圭一君が鼻水を拭いてあげていたと。……また熱が出て来たかな?診察します。パジャマの前を開けて下さい」
「は、はい……」
聴診器を向けて来たから、すぐにパジャマのボタンを外した。面倒くさいから脱いでおこう。アンダーシャツ姿になり、自分の二の腕の内側を見て後悔した。一昨日の夜に黒崎から付けられた、キスマークが残っていた。
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