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写真の中の天気は快晴で、静かに波打っている水面が、白く反射している。風が気持ちよさそうだ。背景に小さく写り込んでいる建物には見覚えがあり、口元がほころんだ。このホールが建っていてるのが写っていた。
「もしかして、レンボーブリッジから撮りました?」
「よく分かったな!あの遊歩道の休憩スペースから撮った。一人で出かけてなー。……んん。意外なのか?おっさんは、一人でうろつくもんだ。こっちは連写した分だよ。カモメがよく撮れている。コントラストがはっきりした分だ。加工なしだ」
仲間は飛んでいないようだ。この日の植本さんのように、一人で遊びに来ていたのかな?独占状態の空の下を、自由に走り回っているかのようだ。そばにいる子に似ている。
「悠人みたいです。昔、夢占いでカモメのことを調べたことがあるんです。これから自由を満喫できるようになるっていう意味でした」
「……なるほど。彼はブルースを弾いた。……悠人君。楽しかっただろう?あの流れで、ハードロックにアレンジしたよなあ。上手すぎる。ははは、一緒に弾きたくなかったぞ。後で久弥にも聞いてみようか」
「ねえねえ。このカモメ君ってさ、笑っているよ~。悠人のギターに似ていない?……ああ。こっちにおいでよ」
「うん……」
悠人の喉からは、小さな嗚咽が漏れていた。さっきから静まり返っている。いつもよりもずっと。いくら親しくなった先輩と一緒でも、こうして静かにしている。もちろん、相づちを打ちながら笑っている。とても礼儀正しく。
ここでやっと気づいた。自分を押し殺していたのではないか?と。こんなに近くにいるのに。今になって気づいてしまった。こういう事を何度も繰り返しては、歩いてきた方向を振り返り、胸がちくっと痛くなる。そして、ネガティブな反応ばかりしている。今もそうだ。
「悠人、ごめんね。……ううん。君の分の珈琲を飲んだからだね」
「うぇ……っ、まだ飲んでいないのに……」
“ごめんね、気づいてあげられなくて”。今ここでは、この言葉を飲み込んだ。こんなに強い悠人に失礼だろう。面白い失敗をした時に掛けたい言葉だ。茶化す目的が半分で。
この間のことを思い返した。病室のベッドで目を覚ました時に、俺の方が気を遣う言葉も、心配する言葉もかけられなかった。寝返りを打つか?黒崎さんが来てくれたよと。ああやって言葉を選んでくれた。
「間違えて飲んだんだよ~。すぐに淹れるからさ~、許してよ」
「ミルクたっぷりがいい……っ」
「無糖じゃないの?クールな男は……」
「アイスだからいいよ。クールだよ。ふむふむ……っ、うぇ……」
「面白くないよ~。名人のノアを呼んでくる?もう帰ったかな?うんうん……」
さっと立ち上がり、ドリンクバーカウンターへ向かった。誰も俺のことを止めない。周りがどんな会話をしているのは気に留めないようにした。少しずつ前進したい。
こんな考え事をして気がそぞろになり、グラスに注いだ珈琲が溢れてしまった。多すぎたのか。笑い声が聞こえてきた。
黒崎がそばへ来て、手際よく片付けてくれた。その間に新しい珈琲が出来上がり、ストローと紙ナプキンがセットしてあるトレーに乗せた。綺麗に仕上がっている。全て黒崎がやった。
「あんた……。いつからできたの?」
「秘書をやっていたんだぞ?」
「できないって言ったじゃん。お箸の置き場所を覚えたばっかりのくせに。懐石弁当はお箸がついているしさ」
「家の中じゃ出来ない。やりたくない。覚える気もない」
「屁理屈の名人だねえ。3段活用までやってさ……」
面白くない冗談だというツッコミが入った。聡太郎を経由して、悠人へカップを渡した。隣へ座った大和がサンドイッチを頬張り、これは美味いぞーと、悠人にちょっかいをかけた。変顔つきだ。
「もしかして、レンボーブリッジから撮りました?」
「よく分かったな!あの遊歩道の休憩スペースから撮った。一人で出かけてなー。……んん。意外なのか?おっさんは、一人でうろつくもんだ。こっちは連写した分だよ。カモメがよく撮れている。コントラストがはっきりした分だ。加工なしだ」
仲間は飛んでいないようだ。この日の植本さんのように、一人で遊びに来ていたのかな?独占状態の空の下を、自由に走り回っているかのようだ。そばにいる子に似ている。
「悠人みたいです。昔、夢占いでカモメのことを調べたことがあるんです。これから自由を満喫できるようになるっていう意味でした」
「……なるほど。彼はブルースを弾いた。……悠人君。楽しかっただろう?あの流れで、ハードロックにアレンジしたよなあ。上手すぎる。ははは、一緒に弾きたくなかったぞ。後で久弥にも聞いてみようか」
「ねえねえ。このカモメ君ってさ、笑っているよ~。悠人のギターに似ていない?……ああ。こっちにおいでよ」
「うん……」
悠人の喉からは、小さな嗚咽が漏れていた。さっきから静まり返っている。いつもよりもずっと。いくら親しくなった先輩と一緒でも、こうして静かにしている。もちろん、相づちを打ちながら笑っている。とても礼儀正しく。
ここでやっと気づいた。自分を押し殺していたのではないか?と。こんなに近くにいるのに。今になって気づいてしまった。こういう事を何度も繰り返しては、歩いてきた方向を振り返り、胸がちくっと痛くなる。そして、ネガティブな反応ばかりしている。今もそうだ。
「悠人、ごめんね。……ううん。君の分の珈琲を飲んだからだね」
「うぇ……っ、まだ飲んでいないのに……」
“ごめんね、気づいてあげられなくて”。今ここでは、この言葉を飲み込んだ。こんなに強い悠人に失礼だろう。面白い失敗をした時に掛けたい言葉だ。茶化す目的が半分で。
この間のことを思い返した。病室のベッドで目を覚ました時に、俺の方が気を遣う言葉も、心配する言葉もかけられなかった。寝返りを打つか?黒崎さんが来てくれたよと。ああやって言葉を選んでくれた。
「間違えて飲んだんだよ~。すぐに淹れるからさ~、許してよ」
「ミルクたっぷりがいい……っ」
「無糖じゃないの?クールな男は……」
「アイスだからいいよ。クールだよ。ふむふむ……っ、うぇ……」
「面白くないよ~。名人のノアを呼んでくる?もう帰ったかな?うんうん……」
さっと立ち上がり、ドリンクバーカウンターへ向かった。誰も俺のことを止めない。周りがどんな会話をしているのは気に留めないようにした。少しずつ前進したい。
こんな考え事をして気がそぞろになり、グラスに注いだ珈琲が溢れてしまった。多すぎたのか。笑い声が聞こえてきた。
黒崎がそばへ来て、手際よく片付けてくれた。その間に新しい珈琲が出来上がり、ストローと紙ナプキンがセットしてあるトレーに乗せた。綺麗に仕上がっている。全て黒崎がやった。
「あんた……。いつからできたの?」
「秘書をやっていたんだぞ?」
「できないって言ったじゃん。お箸の置き場所を覚えたばっかりのくせに。懐石弁当はお箸がついているしさ」
「家の中じゃ出来ない。やりたくない。覚える気もない」
「屁理屈の名人だねえ。3段活用までやってさ……」
面白くない冗談だというツッコミが入った。聡太郎を経由して、悠人へカップを渡した。隣へ座った大和がサンドイッチを頬張り、これは美味いぞーと、悠人にちょっかいをかけた。変顔つきだ。
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