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てるてる坊主と干し柿を持って、リビングに入った。ここに旅の手荷物を広げてある。最終確認して詰めていく。黒崎が一つ一つ確認していき、あっという間にパッキングが終了した。
晩御飯まで時間がある。ほうじ茶を淹れたところで、アンと遊んでいる黒崎に声をかけた。ボールを転がしてやり、アンが追いかけて持って来るという遊びだ。まったりしている。
「お茶が入ったよーーー」
「ありがとう。アン。そろそろ休憩だ」
「一週間は長いかな?お義父さんの家なら賑やかだよ。落ち着かないって?キミが言うの?」
アンが尻尾を垂らした。支度を見て理解したようだ。国内の時とは違うのを感じ取っている。俺達の様子から気にしたのだろう。
今日のおやつのサツマイモを食べて、元気を出してもらいたい。アンが俺から呼ばれて、黒崎の膝から降りた後、一目散に食器をのぞいた。こういう面には安心する。
「うんうん。さすがはうちの子だよ。ソクラテス先生の格言にある。生きるために食べよ。……生きるために健康な食事をする。人生を楽しんでいない人は食べるために生き、楽しんでいる人は生きるために食べる。神仙教授から教わったよ」
「なるほど。……俺にも覚えがある。レストランづくりに固執していた。客に楽しんでもらいたい。俺は生きている理由がほしかった」
「……」
口に出さずに返事をしておこう。首だけ縦に振って、黒崎にマグカップを渡した。頬をつまんできた仕草が優しいから胸が痛くなった。
ふと、荷物の中に大雑把に包んであるものに目が留まった。どうやら何冊かの楽譜のようだ。まだ新しいものだと思ったら、古いものだと分かった。
「黒崎さん。これはあんたの楽譜?向こうで弾くの?」
「いや。裕理から預かった。フェリックス氏が、菜々子さんの家に置いて行った分だ。親父が彼女から頼まれて預かっていた。それを裕理に渡したんだが……、突き返してくれと頼まれた。フェリックス氏に直接会う約束がある。……アントンを無くしたのは俺のせいだ。また再開してもらいと頼むのは、昔からやっている経営陣と新しい人たちだ。フェリックス氏には記憶を返す。すまない。こんな話で……」
「いいよ。気にしないでね。返すのはあんたの方がいいね。この家の子だもん」
フェリックスさんが不義理なことを起こさなければ、拓海さんの心が荒れることがなかった。アントン君を生み出したバーテルスビスケット会社の立場を不安定にさせた。そして、フェリックスさんがいくつか経営していた会社を一つ、規模を縮小するきっかけになったという、二度と戻らない過去という名の記憶は、黒崎に引き継がれた。
「夏樹。ありがとう」
これに対しても口に出さすに返事をした。静かに首を縦に振ることで。
さあ、食事の支度をしようと立ち上がると、黒崎が”お手伝いしたい”と声をかけてきた。これには声を出して首を振った。ありがとう!と。
晩御飯まで時間がある。ほうじ茶を淹れたところで、アンと遊んでいる黒崎に声をかけた。ボールを転がしてやり、アンが追いかけて持って来るという遊びだ。まったりしている。
「お茶が入ったよーーー」
「ありがとう。アン。そろそろ休憩だ」
「一週間は長いかな?お義父さんの家なら賑やかだよ。落ち着かないって?キミが言うの?」
アンが尻尾を垂らした。支度を見て理解したようだ。国内の時とは違うのを感じ取っている。俺達の様子から気にしたのだろう。
今日のおやつのサツマイモを食べて、元気を出してもらいたい。アンが俺から呼ばれて、黒崎の膝から降りた後、一目散に食器をのぞいた。こういう面には安心する。
「うんうん。さすがはうちの子だよ。ソクラテス先生の格言にある。生きるために食べよ。……生きるために健康な食事をする。人生を楽しんでいない人は食べるために生き、楽しんでいる人は生きるために食べる。神仙教授から教わったよ」
「なるほど。……俺にも覚えがある。レストランづくりに固執していた。客に楽しんでもらいたい。俺は生きている理由がほしかった」
「……」
口に出さずに返事をしておこう。首だけ縦に振って、黒崎にマグカップを渡した。頬をつまんできた仕草が優しいから胸が痛くなった。
ふと、荷物の中に大雑把に包んであるものに目が留まった。どうやら何冊かの楽譜のようだ。まだ新しいものだと思ったら、古いものだと分かった。
「黒崎さん。これはあんたの楽譜?向こうで弾くの?」
「いや。裕理から預かった。フェリックス氏が、菜々子さんの家に置いて行った分だ。親父が彼女から頼まれて預かっていた。それを裕理に渡したんだが……、突き返してくれと頼まれた。フェリックス氏に直接会う約束がある。……アントンを無くしたのは俺のせいだ。また再開してもらいと頼むのは、昔からやっている経営陣と新しい人たちだ。フェリックス氏には記憶を返す。すまない。こんな話で……」
「いいよ。気にしないでね。返すのはあんたの方がいいね。この家の子だもん」
フェリックスさんが不義理なことを起こさなければ、拓海さんの心が荒れることがなかった。アントン君を生み出したバーテルスビスケット会社の立場を不安定にさせた。そして、フェリックスさんがいくつか経営していた会社を一つ、規模を縮小するきっかけになったという、二度と戻らない過去という名の記憶は、黒崎に引き継がれた。
「夏樹。ありがとう」
これに対しても口に出さすに返事をした。静かに首を縦に振ることで。
さあ、食事の支度をしようと立ち上がると、黒崎が”お手伝いしたい”と声をかけてきた。これには声を出して首を振った。ありがとう!と。
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