497 / 514
28-9(夏樹視点)
しおりを挟む
11月18日、金曜日。午前7時。
朝を迎えた。黒崎がいない一日が始まる。今、庭の畑に出ている。一貴さんが一緒に居るから出られている。さっきは黒崎と電話で話した。バーテルスさんの怪我は随分と良くなり、痛みも無くなったそうだ。利き手ではなくてよかったと言っていた。
会食はリラックス出来たようだ。伊吹が去年商談に行った出版社だ。インパクトのある若者だったと、伊吹のことが話題に上ったそうだ。なにせ、現地のイベントに出かけて、カメラとインタビューを頼まれて、会社の宣伝をしたことが知られている。その時、出版社との縁も語ったそうだ。あのガッツが自分に欲しいと、バーテルスさんが言っていたぐらいだ。
「ふう。黒崎さんで良い方に記憶の書き換えをしてもらえたかな?」
トマトとナスとネギに水をかけた。ホースから柔らかいシャワーが出ている。10月に入り、朝晩の気温が低くなった。水温もそうだろう。来月になったら、ネギに寒さよけのカバーをかける。つい最近やったことのように感じる。一年が経つのは早い。
「今日の晩ご飯は何かな?」
今日もお義父さんの家でご飯を食べる。山崎さんが作ってくれている。俺も何か差し入れをしようかと考えて、やめておくことにした。黒崎の留守の間はゆっくりする約束だ。
それにしても、一貴さんは眠くないだろうか。花壇の縁に腰掛けて、空を眺めている。悩んでいるのではないだろう。昨日は藤沢と電話をしていた。笑顔もあった。デートの約束が出来たのだろうか。誘いたい店があると話していた。けっこう長電話だった。
「カズ兄さん~。昨日は藤沢と電話してたじゃん。どうだったんだよ」
「良い感触だった。デートの約束を取り付けた」
「マジで!?」
「ああ。本当だ。修輔君がやっとOKしてくれた。圭一が帰った後の日程を話したら、家族を守ってえらいですねって言ってくれた」
「おめでとう~」
ホースの水を止めて、一貴さんのそばに行った。そして、ハイタッチをした。すると、アンがそばにやってきた。何か面白いことをしているのだろうかという反応だ。
「アンも聞いてよ~。カズ兄さんが藤沢とデートするんだ」
「ここにも呼びたい。アンとユリウスに会わせたい」
「そうだね。ユリウスとは初めましてだね。たしかそうだよね?」
「いや、プラセルに来てくれた時、一瞬だけ会っている。すれ違いになった」
「そうだったんだね。部屋に呼んで、ハンモックと滑り台を見せてあげたら?藤沢、動物が好きなんだ」
「ああ。夜景を見た帰りになると、遅くなる。また今度になるか」
「夜景?まだ早くない?食事の後でこっちに帰ってきたら?一緒に」
「そうか?そう思うか?」
「うん。抱きつきそうだもん。危ないよ」
その光景が目に浮かぶ。はっきり言ってしまった。しかし、一貴さんはシュンとなるどころか、背筋を伸ばした。何か言い出すのだろう。
「今回で押しまくるチャンスにする!」
「やめておきなよ~」
「圭一のように押して押して押しまくる」
「何か聞いたの?」
「ああ。君達が付き合うまでの話を聞いた。この間だ」
「黒崎さんが嫌みたらしくて大変だったんだ」
「君に手を焼いていたそうだ」
たしかにそうだったかも知れない。恥ずかしい話だ。俺も嫌みを言っていた。しかし、藤沢と一貴さんの場合、当てはまらない。年上の一貴さんの方が手が掛かるからだ。いずれにせよ、押しまくるのはやめた方がいいだろう。もう会ってくれなくなるかも知れないからだ。一貴さんの良い面を長い時間をかけて知ってもらいたい。そして、その結果、デートの約束ができたわけだ。
朝を迎えた。黒崎がいない一日が始まる。今、庭の畑に出ている。一貴さんが一緒に居るから出られている。さっきは黒崎と電話で話した。バーテルスさんの怪我は随分と良くなり、痛みも無くなったそうだ。利き手ではなくてよかったと言っていた。
会食はリラックス出来たようだ。伊吹が去年商談に行った出版社だ。インパクトのある若者だったと、伊吹のことが話題に上ったそうだ。なにせ、現地のイベントに出かけて、カメラとインタビューを頼まれて、会社の宣伝をしたことが知られている。その時、出版社との縁も語ったそうだ。あのガッツが自分に欲しいと、バーテルスさんが言っていたぐらいだ。
「ふう。黒崎さんで良い方に記憶の書き換えをしてもらえたかな?」
トマトとナスとネギに水をかけた。ホースから柔らかいシャワーが出ている。10月に入り、朝晩の気温が低くなった。水温もそうだろう。来月になったら、ネギに寒さよけのカバーをかける。つい最近やったことのように感じる。一年が経つのは早い。
「今日の晩ご飯は何かな?」
今日もお義父さんの家でご飯を食べる。山崎さんが作ってくれている。俺も何か差し入れをしようかと考えて、やめておくことにした。黒崎の留守の間はゆっくりする約束だ。
それにしても、一貴さんは眠くないだろうか。花壇の縁に腰掛けて、空を眺めている。悩んでいるのではないだろう。昨日は藤沢と電話をしていた。笑顔もあった。デートの約束が出来たのだろうか。誘いたい店があると話していた。けっこう長電話だった。
「カズ兄さん~。昨日は藤沢と電話してたじゃん。どうだったんだよ」
「良い感触だった。デートの約束を取り付けた」
「マジで!?」
「ああ。本当だ。修輔君がやっとOKしてくれた。圭一が帰った後の日程を話したら、家族を守ってえらいですねって言ってくれた」
「おめでとう~」
ホースの水を止めて、一貴さんのそばに行った。そして、ハイタッチをした。すると、アンがそばにやってきた。何か面白いことをしているのだろうかという反応だ。
「アンも聞いてよ~。カズ兄さんが藤沢とデートするんだ」
「ここにも呼びたい。アンとユリウスに会わせたい」
「そうだね。ユリウスとは初めましてだね。たしかそうだよね?」
「いや、プラセルに来てくれた時、一瞬だけ会っている。すれ違いになった」
「そうだったんだね。部屋に呼んで、ハンモックと滑り台を見せてあげたら?藤沢、動物が好きなんだ」
「ああ。夜景を見た帰りになると、遅くなる。また今度になるか」
「夜景?まだ早くない?食事の後でこっちに帰ってきたら?一緒に」
「そうか?そう思うか?」
「うん。抱きつきそうだもん。危ないよ」
その光景が目に浮かぶ。はっきり言ってしまった。しかし、一貴さんはシュンとなるどころか、背筋を伸ばした。何か言い出すのだろう。
「今回で押しまくるチャンスにする!」
「やめておきなよ~」
「圭一のように押して押して押しまくる」
「何か聞いたの?」
「ああ。君達が付き合うまでの話を聞いた。この間だ」
「黒崎さんが嫌みたらしくて大変だったんだ」
「君に手を焼いていたそうだ」
たしかにそうだったかも知れない。恥ずかしい話だ。俺も嫌みを言っていた。しかし、藤沢と一貴さんの場合、当てはまらない。年上の一貴さんの方が手が掛かるからだ。いずれにせよ、押しまくるのはやめた方がいいだろう。もう会ってくれなくなるかも知れないからだ。一貴さんの良い面を長い時間をかけて知ってもらいたい。そして、その結果、デートの約束ができたわけだ。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる