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コト……。
珈琲をひと口飲むたびに、早瀬の手元をチラッと見ている。俺の左手を取って指輪を試着させているからだ。照れくさくて手を引っ込めていると、強引に取り出されてしまった。
珈琲を飲んでスマホを見ていろと言われて、左手だけ差し出している状態だ。サイズ感で迷っているらしく、店員さんと話しながら進めている。ネットニュースを見ていると、左手が自由になった。どうやら終わったようだ。
「……刻印はこちらで」
「僕の方は、Will not you love it?、彼の方は、You met on that daysでお願いします……」
「……かしこまりました」
テーブルには、文章が書かれた紙が置いてある。文体や装飾などの細かい打ち合わせをしている。その様子を、チラチラと観察した。
早瀬は堂々としていて、大人の余裕を醸し出している。じっと見つめていると、すぐに気づいて微笑みかけられた。ふざけてる早瀬ではなくて、大人の男といったふうだ。不覚にも顔が熱くなった。
「あああ……」
「もうすぐ終わるよ。そろそろ起きていろ」
「起きてるよ」
「静かだから寝ているかと思った」
「スマホを見てろって言ったじゃん……」
「静かでいい」
「もうーーっ、どっちだよ?」
ぶきらぼうに言い返しても笑うだけで、意に返していない様子だ。この包容力に騙されてしまった。自分だって興味がないわけじゃない。納期が2週間から1か月先であることと、お直しする際の注意事項も、しっかりと聞いた。
テーブルの上には、白い布が表面に貼られたケースが置かれている。その中に2人の指輪がはめ込まれている。本当は手に取ってみたいのに、恥ずかしいからできない。
(早くても2週間先なんだー、よく見ておきたいな……。だめだだめだだめだー!)
今回は口に出さないようにした。それでも視線が向くのは止められない。そんな俺のことを早瀬が見ていた。それでもチラチラとケースを見てしまった。
「手に取ってごらん」
「ううん。受け取ってからでいい」
「1ヶ月先かも知れないぞ」
「あー、えーっと……。それまで絆創膏を貼るの?」
「さすがに恥ずかしいだろう?俺は構わないけど。ここで指輪を取ったら、貼らなくてもいいよ」
「あ……」
「カッコいいデザインだろう?シンプルでも」
「うん……」
おずおずと指先がケースに伸びていった。ドキドキしながら触れたとき、早瀬の手が重なった。優しく握られて、躊躇している指先を指輪へを促してきた。
「なんだよー?」
「自分で付けてごらん。カッコいいぞ?」
「そ、そうだね!せっかくだし……。そんなに言うなら?つけてみようかな?んん?いい感じだね!」
どうしよう?クールな男を目指しているのに、指輪を手に取っただけで目頭が熱くなった。早瀬のコートのポケットには、さっきの絆創膏が入っている。そして、目の前には、これから身に着ける証が置かれている。どっちも大事なものだ。緊張していると、早瀬の指先が絡められた。左手の薬指にはめられた時、涙がじんわりと出てきた。
このままだとテーブルを汚してしまう。早瀬から抱き寄せられたから、周りから泣き顔を見られずに済んだ。早瀬のニットの匂いを感じながら、濡れるのを気にしつつも顔を突っ伏した。
背中を優しくさすったり叩かれたりしているうちに、気持ちが落ち着いてきた。その頃には店員さんとの話が終わっており、帰り支度をはじめた。
「……今日はありがとうございました」
「……何かございましたら、お申し付けください。本日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
ガタン……。
重厚なドアが開かれて、店員から見送られて外に出た。会釈をしながらお礼を言って、店を後にした。
珈琲をひと口飲むたびに、早瀬の手元をチラッと見ている。俺の左手を取って指輪を試着させているからだ。照れくさくて手を引っ込めていると、強引に取り出されてしまった。
珈琲を飲んでスマホを見ていろと言われて、左手だけ差し出している状態だ。サイズ感で迷っているらしく、店員さんと話しながら進めている。ネットニュースを見ていると、左手が自由になった。どうやら終わったようだ。
「……刻印はこちらで」
「僕の方は、Will not you love it?、彼の方は、You met on that daysでお願いします……」
「……かしこまりました」
テーブルには、文章が書かれた紙が置いてある。文体や装飾などの細かい打ち合わせをしている。その様子を、チラチラと観察した。
早瀬は堂々としていて、大人の余裕を醸し出している。じっと見つめていると、すぐに気づいて微笑みかけられた。ふざけてる早瀬ではなくて、大人の男といったふうだ。不覚にも顔が熱くなった。
「あああ……」
「もうすぐ終わるよ。そろそろ起きていろ」
「起きてるよ」
「静かだから寝ているかと思った」
「スマホを見てろって言ったじゃん……」
「静かでいい」
「もうーーっ、どっちだよ?」
ぶきらぼうに言い返しても笑うだけで、意に返していない様子だ。この包容力に騙されてしまった。自分だって興味がないわけじゃない。納期が2週間から1か月先であることと、お直しする際の注意事項も、しっかりと聞いた。
テーブルの上には、白い布が表面に貼られたケースが置かれている。その中に2人の指輪がはめ込まれている。本当は手に取ってみたいのに、恥ずかしいからできない。
(早くても2週間先なんだー、よく見ておきたいな……。だめだだめだだめだー!)
今回は口に出さないようにした。それでも視線が向くのは止められない。そんな俺のことを早瀬が見ていた。それでもチラチラとケースを見てしまった。
「手に取ってごらん」
「ううん。受け取ってからでいい」
「1ヶ月先かも知れないぞ」
「あー、えーっと……。それまで絆創膏を貼るの?」
「さすがに恥ずかしいだろう?俺は構わないけど。ここで指輪を取ったら、貼らなくてもいいよ」
「あ……」
「カッコいいデザインだろう?シンプルでも」
「うん……」
おずおずと指先がケースに伸びていった。ドキドキしながら触れたとき、早瀬の手が重なった。優しく握られて、躊躇している指先を指輪へを促してきた。
「なんだよー?」
「自分で付けてごらん。カッコいいぞ?」
「そ、そうだね!せっかくだし……。そんなに言うなら?つけてみようかな?んん?いい感じだね!」
どうしよう?クールな男を目指しているのに、指輪を手に取っただけで目頭が熱くなった。早瀬のコートのポケットには、さっきの絆創膏が入っている。そして、目の前には、これから身に着ける証が置かれている。どっちも大事なものだ。緊張していると、早瀬の指先が絡められた。左手の薬指にはめられた時、涙がじんわりと出てきた。
このままだとテーブルを汚してしまう。早瀬から抱き寄せられたから、周りから泣き顔を見られずに済んだ。早瀬のニットの匂いを感じながら、濡れるのを気にしつつも顔を突っ伏した。
背中を優しくさすったり叩かれたりしているうちに、気持ちが落ち着いてきた。その頃には店員さんとの話が終わっており、帰り支度をはじめた。
「……今日はありがとうございました」
「……何かございましたら、お申し付けください。本日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
ガタン……。
重厚なドアが開かれて、店員から見送られて外に出た。会釈をしながらお礼を言って、店を後にした。
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