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コポコポ……。
コーヒーメーカーから音が立ち、ふんわりとした匂いが広がった。ピーピーという、出来上がりの電子音が鳴った。そして、珈琲をカップに注ぎ入れる音が聞こえて来た。まったりとした時間が流れている。すぐそばには、日本風の家にあるような柱が立っている。この家は洋風だが、リフォーム前は和洋折衷の内装だったらしい。
「お義父さんの家もレトロな洋館だよ」
「そうだよねー。家の中もそうだよね?広い迷子になるんじゃない?地図ってあるの?」
「うひゃひゃ。黒崎さん、実はあるのかな?」
「さすがに地図はなかった。迷子になったことは、ガキの頃にある」
「俺なら100%迷子になるよー」
そうしているうちに、黒崎さんの電話相手の話題に移った。なんと、俺が高校時代に着ていた服のメーカーの社長だった。プラセルコーポレーションという。大学の友達の山崎がデザイン教室に参加したことがある。プラセルには沢山のブランドが揃い、俺達の年代なら誰でも知っている。
「社長の島川一貴は俺の兄貴だ。黒崎製菓グループで仕事をするのを嫌がって、自分で会社を立ち上げた人だ」
「MIDSHIPですよね?」
「悠人君が着ていただろう?」
「知っていたんですね。意外だな。イタリアブランド系が好きだと思っていたんで」
夏樹が入学入学当初に着ていた服がそうだった。プラセルコーポレーションは、買いやすい価格帯のファッションのメンズ物が中心だ。女の子も着ているほどだ。そういう人が身内にいるのか。
「すごいですね。話してみたいなあ……」
「可能かもしれないぞ?ある企業から誘いを受けているそうだ。次の代表取締役社長として」
「すごいなあ……」
「へええ……」
「早瀬孝則専務が千尋製菓から引退する考えだ。いい結果が波に乗った頃に退く意向だ。代表取締役社長のポストが待っているだろうが、ご本人にはそのつもりはない。分相応だと仰っているようだ」
「そんな。回復させたのに……」
「裕理が言うには、お父さんらしいそうだ。次の代表取締役社長へ推薦したのが、島川一貴だ」
「そうだったんですね……」
早瀬からは聞いていない。ニュースを知ったばかりだし、お父さんにすら会えていない状況だ。ションボリしていると、黒崎さんから頭をポンポンと叩かれた。
「そう落ち込むな。黙っているのは悪気があってのことじゃない。一度に聞かせたくないからだ。俺でも夏樹にはそうしていた。嫌だと拗ねるから、さっきはオープンにして電話で話していた。……そろそろ、裕理に連絡してやってくれ。さっきラインが入っていた。仕事の件のついでだ」
「まだ出ないられない時間かも知れません……」
「ゆうとー、それなら、かけ直してくれるよ。悠人の方こそ遠慮してるじゃん。結婚するほどの仲なんだよ~?」
「へへへ……」
そのとおりだ。照れくさいから、リビングのテラス窓のそばに移動して電話をかけた。すると、すぐにつながり、優しい声が聞こえてきた。
「もしもしー?」
「……ちょうどかけるところだった。やっと君の方から電話してくれたね。記念日にしようか」
「かけたことあるだろ?」
「数えるぐらいしかない。駅で転んだとか、迷子になった時ぐらいだ」
「これからは積極的になるよ」
「昨日は積極的だったね」
「バカ!クランユーリめ!」
「ここなら叩かれずにすむのか。ゆうとー、大きな声だったな?」
「もう……」
「もっと、もっと、もっと」
「げええええっ、そんなに言ってないからーーー」
「わけ分かんない……、だろう?」
「さっさと会食に行け!……火星探査に行って、しばらく帰って来るなー」
「明日の昼前には迎えに行く。夜更かししないで、腹巻をして寝るように。圭一さんに代わってもらえるか?」
「うん。待っててね。……黒崎さん。裕理さんが」
「そうか。代わってくれ」
黒崎さんから微笑みかけられた。カッコいい。男としてリスペクトしている。身長と体型はどうにもならなくても、雰囲気だけは近づけるだろう。それを夏樹に語ると、遠慮なく吹き出された。
コーヒーメーカーから音が立ち、ふんわりとした匂いが広がった。ピーピーという、出来上がりの電子音が鳴った。そして、珈琲をカップに注ぎ入れる音が聞こえて来た。まったりとした時間が流れている。すぐそばには、日本風の家にあるような柱が立っている。この家は洋風だが、リフォーム前は和洋折衷の内装だったらしい。
「お義父さんの家もレトロな洋館だよ」
「そうだよねー。家の中もそうだよね?広い迷子になるんじゃない?地図ってあるの?」
「うひゃひゃ。黒崎さん、実はあるのかな?」
「さすがに地図はなかった。迷子になったことは、ガキの頃にある」
「俺なら100%迷子になるよー」
そうしているうちに、黒崎さんの電話相手の話題に移った。なんと、俺が高校時代に着ていた服のメーカーの社長だった。プラセルコーポレーションという。大学の友達の山崎がデザイン教室に参加したことがある。プラセルには沢山のブランドが揃い、俺達の年代なら誰でも知っている。
「社長の島川一貴は俺の兄貴だ。黒崎製菓グループで仕事をするのを嫌がって、自分で会社を立ち上げた人だ」
「MIDSHIPですよね?」
「悠人君が着ていただろう?」
「知っていたんですね。意外だな。イタリアブランド系が好きだと思っていたんで」
夏樹が入学入学当初に着ていた服がそうだった。プラセルコーポレーションは、買いやすい価格帯のファッションのメンズ物が中心だ。女の子も着ているほどだ。そういう人が身内にいるのか。
「すごいですね。話してみたいなあ……」
「可能かもしれないぞ?ある企業から誘いを受けているそうだ。次の代表取締役社長として」
「すごいなあ……」
「へええ……」
「早瀬孝則専務が千尋製菓から引退する考えだ。いい結果が波に乗った頃に退く意向だ。代表取締役社長のポストが待っているだろうが、ご本人にはそのつもりはない。分相応だと仰っているようだ」
「そんな。回復させたのに……」
「裕理が言うには、お父さんらしいそうだ。次の代表取締役社長へ推薦したのが、島川一貴だ」
「そうだったんですね……」
早瀬からは聞いていない。ニュースを知ったばかりだし、お父さんにすら会えていない状況だ。ションボリしていると、黒崎さんから頭をポンポンと叩かれた。
「そう落ち込むな。黙っているのは悪気があってのことじゃない。一度に聞かせたくないからだ。俺でも夏樹にはそうしていた。嫌だと拗ねるから、さっきはオープンにして電話で話していた。……そろそろ、裕理に連絡してやってくれ。さっきラインが入っていた。仕事の件のついでだ」
「まだ出ないられない時間かも知れません……」
「ゆうとー、それなら、かけ直してくれるよ。悠人の方こそ遠慮してるじゃん。結婚するほどの仲なんだよ~?」
「へへへ……」
そのとおりだ。照れくさいから、リビングのテラス窓のそばに移動して電話をかけた。すると、すぐにつながり、優しい声が聞こえてきた。
「もしもしー?」
「……ちょうどかけるところだった。やっと君の方から電話してくれたね。記念日にしようか」
「かけたことあるだろ?」
「数えるぐらいしかない。駅で転んだとか、迷子になった時ぐらいだ」
「これからは積極的になるよ」
「昨日は積極的だったね」
「バカ!クランユーリめ!」
「ここなら叩かれずにすむのか。ゆうとー、大きな声だったな?」
「もう……」
「もっと、もっと、もっと」
「げええええっ、そんなに言ってないからーーー」
「わけ分かんない……、だろう?」
「さっさと会食に行け!……火星探査に行って、しばらく帰って来るなー」
「明日の昼前には迎えに行く。夜更かししないで、腹巻をして寝るように。圭一さんに代わってもらえるか?」
「うん。待っててね。……黒崎さん。裕理さんが」
「そうか。代わってくれ」
黒崎さんから微笑みかけられた。カッコいい。男としてリスペクトしている。身長と体型はどうにもならなくても、雰囲気だけは近づけるだろう。それを夏樹に語ると、遠慮なく吹き出された。
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