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朝ご飯を食べ終えた後、出勤時間になるまでの間、リビングで過ごすのがパターンだ。早瀬が会議資料を読んでいる間、俺は授業のノート整理をしている。夏樹と分担している分、効率的になっている。2年生までは学部の垣根がない。取得した単位の結果と希望により、3年生からの学部が決まる。今年の夏に、どの学部を志望するか選択が必要だ。
「夏樹君が理学系の授業分。悠人君が法学系か」
「うん。お互いの得意分野で分けたよ」
「7月に希望を出すんだろう?どこにするか決めたのか?」
「迷っているんだよ……。このまま法学部に入れる感じなんだけど、本当は理学をやりかったからさ……」
父の言いなりになろうとしていたのは、過去の話だ。学業も音楽も両立する約束をした以上、しっかりやっている。学部のことも自分で決める。
早瀬には、大学関係の全てを報告している。成績表のデータは、早瀬の方から父へ送られている。学生の俺と結婚した以上、責任を取るという理由だ。こういう面もカッコいい。
早瀬がパソコンを覗き込んできた。受けている授業と、取得済の単位の一覧表を出してみろと言われて、さっそくファイルを表示させた。
早瀬がスクロールさせてデータを見つめている。コンタクトレンズをやめたから、すっかりメガネ姿が定着している。昇進前の忙しい時期には、額に皺が出来ていた。今は無くなったから安心している。
(カッコいいなーー)
黒崎さんへの憧れとは違う種類だ。早瀬が単位の欄を見て、話し始めた。時々、目をパチパチと見開きしている。その僅かな仕草が分かるぐらい、俺は彼のことを凝視している状況だ。スローモーションのように感じるのは、どうしてだろう?息づかいを感じてドキドキしている。そこで、珈琲のおかわりをするふりをして離れようとした。
「悠人君、こっちにおいでー」
「は、はあい?」
「いい返事だね。たしかに、法学部の合格ラインには到達している。理学部も同じだよ。物理学科は人気があるから厳しそうだ。要求科目が足りないからだ。ここを目指すなら、2年生の春タームで単位取得が必要だ」
「うん。狭き門だよ。基礎物理学実験も取ったけどね……」
「数理科学基礎と微分積分を取っているから、理学部の環境学科はどうだ?環境物理もいいだろう」
「考えてなかったよ。天文学系しか……」
「君に合っている学科だよ」
見てごらんを促されて、画面に近づいた。理学部環境学科のページが表示されていて、三浦半島での活動の様子が載っていた。パッと見て、遠足かと思った。学生達は安全帽にリュック姿をしている。地質の観察中だ。和気あいあいとした空気が伝わってきた。さらに、化学科や物理科へとページが出されていった。
「学生たちの空気感で話す。ここじゃ君には合っていない」
「工学部の内容も好きだし、数学も……」
「……数学科か?さらに向いていない。誰かと話したことがないとか、声を聞いたのが初めてだという生徒がいるんだぞ?夏樹君なら合うだろうが、君なら無理だ」
「実験はチームワークでも、レポート課題は……」
「周りからの空気に影響されるタイプだ。悪い意味じゃないぞ?ポンポン言葉が出てくる相手が合っている。ディベートが苦手だと言っているが、実はいい環境だ。……この野外観察なら、君の好奇心を刺激されるだろう。ガイダンスを受けておきなさい」
「うん。よく知っているんだね。自分のことなのに知らなかったよー」
「悠人君よりも年上だからだ。ネガティブになるな」
「へへへ」
そういうところが好きだと言われてしまった。褒めて伸びるタイプだから可愛いとも。自分にとっても心地いい。甘やかされることも。
だんだん早瀬の顔が近づいてきた。眼鏡姿に見惚れている状態だ。デレデレしている。今もキスされることを期待している。自分らしくないのに、それでもいいかと思えるのは、早瀬の策略だと知った。
「まだ時間がある。可愛い表情をするからだぞ」
「触るなってば……」
「今日はバンド練習だろう。疲れているよね?」
「うん……」
もうすぐで26日の本番を迎える。ベースとギター練習に集中している分、楽器部屋で過ごす時間が増えた。早瀬には理解されているが、寂しさは消えないだろう。自分こそ経験済だ。今度は反対の立場になったなんて。
「裕理さんのことを忘れていないよ」
「そうか?証拠を見せてくれ。逃げるな……」
「あああ……」
軽いキスをされるかと待っていると、いきなり吸引力のあるキスを受け取った。これが掃除機なら売れそうだと、何とも妙な表現の感想を口にして、早瀬のやる気をそいでしまった。
照れくさいから、素直に気持ちを伝えられない。もっとくっつきたいなんて。そうしているうちに出勤時間が近づき、名残惜しさが増した。
「夏樹君が理学系の授業分。悠人君が法学系か」
「うん。お互いの得意分野で分けたよ」
「7月に希望を出すんだろう?どこにするか決めたのか?」
「迷っているんだよ……。このまま法学部に入れる感じなんだけど、本当は理学をやりかったからさ……」
父の言いなりになろうとしていたのは、過去の話だ。学業も音楽も両立する約束をした以上、しっかりやっている。学部のことも自分で決める。
早瀬には、大学関係の全てを報告している。成績表のデータは、早瀬の方から父へ送られている。学生の俺と結婚した以上、責任を取るという理由だ。こういう面もカッコいい。
早瀬がパソコンを覗き込んできた。受けている授業と、取得済の単位の一覧表を出してみろと言われて、さっそくファイルを表示させた。
早瀬がスクロールさせてデータを見つめている。コンタクトレンズをやめたから、すっかりメガネ姿が定着している。昇進前の忙しい時期には、額に皺が出来ていた。今は無くなったから安心している。
(カッコいいなーー)
黒崎さんへの憧れとは違う種類だ。早瀬が単位の欄を見て、話し始めた。時々、目をパチパチと見開きしている。その僅かな仕草が分かるぐらい、俺は彼のことを凝視している状況だ。スローモーションのように感じるのは、どうしてだろう?息づかいを感じてドキドキしている。そこで、珈琲のおかわりをするふりをして離れようとした。
「悠人君、こっちにおいでー」
「は、はあい?」
「いい返事だね。たしかに、法学部の合格ラインには到達している。理学部も同じだよ。物理学科は人気があるから厳しそうだ。要求科目が足りないからだ。ここを目指すなら、2年生の春タームで単位取得が必要だ」
「うん。狭き門だよ。基礎物理学実験も取ったけどね……」
「数理科学基礎と微分積分を取っているから、理学部の環境学科はどうだ?環境物理もいいだろう」
「考えてなかったよ。天文学系しか……」
「君に合っている学科だよ」
見てごらんを促されて、画面に近づいた。理学部環境学科のページが表示されていて、三浦半島での活動の様子が載っていた。パッと見て、遠足かと思った。学生達は安全帽にリュック姿をしている。地質の観察中だ。和気あいあいとした空気が伝わってきた。さらに、化学科や物理科へとページが出されていった。
「学生たちの空気感で話す。ここじゃ君には合っていない」
「工学部の内容も好きだし、数学も……」
「……数学科か?さらに向いていない。誰かと話したことがないとか、声を聞いたのが初めてだという生徒がいるんだぞ?夏樹君なら合うだろうが、君なら無理だ」
「実験はチームワークでも、レポート課題は……」
「周りからの空気に影響されるタイプだ。悪い意味じゃないぞ?ポンポン言葉が出てくる相手が合っている。ディベートが苦手だと言っているが、実はいい環境だ。……この野外観察なら、君の好奇心を刺激されるだろう。ガイダンスを受けておきなさい」
「うん。よく知っているんだね。自分のことなのに知らなかったよー」
「悠人君よりも年上だからだ。ネガティブになるな」
「へへへ」
そういうところが好きだと言われてしまった。褒めて伸びるタイプだから可愛いとも。自分にとっても心地いい。甘やかされることも。
だんだん早瀬の顔が近づいてきた。眼鏡姿に見惚れている状態だ。デレデレしている。今もキスされることを期待している。自分らしくないのに、それでもいいかと思えるのは、早瀬の策略だと知った。
「まだ時間がある。可愛い表情をするからだぞ」
「触るなってば……」
「今日はバンド練習だろう。疲れているよね?」
「うん……」
もうすぐで26日の本番を迎える。ベースとギター練習に集中している分、楽器部屋で過ごす時間が増えた。早瀬には理解されているが、寂しさは消えないだろう。自分こそ経験済だ。今度は反対の立場になったなんて。
「裕理さんのことを忘れていないよ」
「そうか?証拠を見せてくれ。逃げるな……」
「あああ……」
軽いキスをされるかと待っていると、いきなり吸引力のあるキスを受け取った。これが掃除機なら売れそうだと、何とも妙な表現の感想を口にして、早瀬のやる気をそいでしまった。
照れくさいから、素直に気持ちを伝えられない。もっとくっつきたいなんて。そうしているうちに出勤時間が近づき、名残惜しさが増した。
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