回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 学食『薄味』は、昼どきでも空いている。おかげでゆっくり食べれる。森本と山崎と真羽は先に到着していた。森本は取ってきている料理には手を付けていない。妙に沈んでいるようだ。冷静で物事に動じない子がめずらしい。

 カウンターから料理を取っていると、お気に入りのチキン南蛮を見つけた。

「なつきー。この和風チキン南蛮が美味しいんだよ。まだ食べたことないよね?」
「ボリューム感があるから食べきれないんだよ。半分食べてくれる?」
「もちろんいいよ!」
「じゃあさ。こっちの筑前煮と、豚しゃぶサラダも」
「うーん……。ゴボウは苦手だよー」
「ゆうとー、野菜も食べろよ~」

 お互いのトレーを眺めた。量には差がある。俺が食べ過ぎなのだろうか?

 窓側の席に着くと、やっぱり森本が沈んだ顔をしている。何かあったのは違いないが、恋愛のことだと察した。彼が好きなのは羽賀先輩だ。しかし、同じ剣道部の国府先輩と仲が良すぎて、付き合っているのではないかと噂になっていた。その件だろうか。

「もりもとー、おまたせ!」
「おつかれー」
「どうしたんだよ?何かあったのかよ?」
「ああ……」
「聞くよ。話せるならさーー」

 やっぱり料理には手を付けていない。自分の代わりに食べてくれというから、ポテトだけつまんだ。その流れで差し出すと、やっと口に入れた。そして、どんどん口に放り込んでいくうちに食べ始めた。早瀬の戦法が役に立った。これほど普段と違う姿を前にして、夏樹も戸惑っている。

「もりもとー。国府さんだよ?」
「ああ……」

 噂をすれば影だと、森本が慌てている。国府さんが手を振っているのに、会釈だけを返している。向こうが苦笑してこっちへ来たから、俺達は隣のテーブルに移った。夏樹が気を利かせて、剣道部は仲がいいよね~と言って、笑った。しかし、国府先輩との噂は知らないようだ。夏樹は噂を耳にしても、聞き流すし、忘れるようにするからだ。

 だから黒崎さんと合うのだと、早瀬が話していたことに納得した。どんなカップルでも相性がある。相性がいい2人なら、喧嘩すら繋がりが強くなるきっかけになるし、ヤキモチすら可愛いものだと思うそうだ。

(俺達はどうかな?裕理さんの心配症が不安だよ。相性が悪いのかな?そんなことはない。俺にはピッタリな人だし、大好きだもん。最近、喧嘩にならないなあー。どうしてかな?俺が子供っぽいし、ネガティブだからかな……)

 わざわざ喧嘩したいなどと言う必要はない。また心配をかけてしまうと思った。すると今度は、夏樹から肩を叩かれた。どうしたの?と心配そうな顔をしている。

「裕理さんが忙しいから遠慮しているんだ。夏樹達みたいになりたいって思っているんだけどさ」
「……そんな。俺達と比べたら駄目だよ。全く違う人間だからさ。よく喧嘩しているって?そうだけどさ。喧嘩したいの?」
「うん」
「黒崎さんとぶつかり合うのは仕方ないことなんだ。悠人達は……、あれ?絵理奈ちゃん!ゆうとー、待っててね~」

 夏樹が席を立ち、さっきからごった返している方向へ向かった。何かもめ事が起きている様子だ。絵理奈ちゃんと宮下が男二人を仲裁しているが、収まる気配がない。

 夏樹がそばへ行って声をかけると、ピタッと押し黙っていた。本当に度胸のある子だと思う。人から嫌われても構わないと言い切る強さもある。しかも、本当に実践している。

 それに比べて、自分はどうだろうか?早瀬のことを思い浮かべた。遠慮するなと言われているのに、こうして電話ができない状況に気持ちが沈んでしまった。
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