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12時半。
学食の『薄味』でご飯を食べている。佐久弥は薄味派だから丁度いい。2時限目の心理学の授業には間に合いようがなかった。同じ授業を取っている森本にノートを頼んだ。
これから理学部1号館のホールで研究発表が開かれる。佐久弥が見ていく。ここに着いた時に申し込みを済ませておいた。佐久弥は卒業生だから勝手が分かっている。今日の発表会は、物理学科と環境学科の二つだ。どっちを選ぶか?と聞いたところ、物理学科が良いと返事が返ってきた。そして、その答えの理由に、ビックリしてズッコケそうになった。物理学科は佐久弥が行っていた学科だと分かったからだ。人気のある狭き門の学科だ。
「さくやー、なんで物理学科なんだよ?狭き門をくぐるなよー!」
「向いていただけだ。悠人はなー、環境学科がいいだろう。裕理と同じ意見だ」
「なんで?」
「野外巡検のファッションがだ。安全帽にリュックが可愛いぞ」
「もう……」
「からかっていない。俺には似合わないから羨ましい。……雑誌の取材を受けたとすると、こういうことがあった。ディアドロップのイメージに合わないから嘘を載せたことがある」
「どんな嘘だよー?」
「ディアドロップの俺の趣味は『ドライブ』だ。……本当は、お菓子づくりと、ミシンだ。好きなんだよ。でも、公表していなかった」
「げええええっ。……弟のお稽古バッグを作ったのかー!」
「だろーー?」
「なるほど……」
イメージづくりと維持が必要なのか。ディアドロップの佐久弥と、実際の本人はかけ離れている。新しいプロジェクトでも、イメージを固定するのかな?その答えは『NO』だった。
「期間限定バンドでは、普段の俺でやる。そろそろイメージを脱却したい。無理をすると病むから。今回で勝負をかける。それでだめなら考える。カッコいいことを言ってるだろ?……グダグダだ、実際は……」
「ふむふむ……」
嬉しいな。こうして吐き出してくれることが。あれほど活躍しているミュージシャンが愚痴を聞かせてくれている。すると、チキン南蛮を食べようとして、ソースがテーブルに垂れてしまった。そしたら、佐久弥が布巾でふき取ってくれた。まるで夏樹のようだ。
「佐久弥は夏樹と気が合うよー。コンテストで審査員をやるんだよね?会ってみない?バンドの誘いをするなら……」
「もちろん喜んで。めずらしい子だ。爆発させてみたい、ステージで。……おい。キスマークがついているぞ?……見えててもいいのか?もう諦めたのかーー?」
「げええええっ」
どうしよう?ニットの襟元を、佐久弥が平然として覗き込んでいる。
「数字でも眺めとけよー」
「やっぱり裕理はヤルんだなー?性欲があるのか」
「はあー?」
「俺たち、ヤッたことがないからさ」
「へえー?」
「恋人同士でもヤルとは限らないぞ。俺たちがそうだった」
「うひぇー?」
どうしよう?それだけ佐久弥のことを大事にしていたのか。俺にはグイグイきているし、抱きまくりなのに。しかし、佐久弥が“違う違う”と言って笑っている。
「キスもしなかった。お互いにそこまでしたくなかった。……クラとはヤリまくっているぞー?」
「ひいいいいっ」
「カップルで考え方がちがう。上手くいっているならいいだろう。どれぐらいのペースだ?」
「なんのペースだよ?」
「『ヤッてる』ペースだよ。週に何回?友達の性生活を参考にしたい」
「人の性生活に興味を持つな!」
「注目されているぞーー、ぎゃはははは!」
「あああ……」
どうしよう?みんなが見ている。佐久弥だとビックリしている子もいる。しかし誰もが目を逸らした。周りが見ているのは俺たちの後ろだ。そこに居たのは、桜木さんと並川さんだった。それで納得できた。
桜木さんを見てのことだろう。中山伊吹さんという恋人がいて、この大学の出身者でもある。なぜか先輩たちが伊吹さんのことを恐れている。久しぶりにここで会った。バンド練習で毎日のように会っているから、余計に不思議だ。
「IRON ANGELのメンバーだね? こんにちはー」
「こんにちは」
「こんにちは!」
佐久弥がすっと手を伸ばして、2人と握手をしていた。スマートな動作がカッコいい。ここに来た理由は、研究発表を見るためだと説明している。卒業生であることも。ごく自然な流れで3人が話し始めて、これから予定がないからと、桜木さんと並川さんも一緒に研究発表を観に行くことが決まった。安心して佐久弥のことを預けることができた。
すると、ラインを入れ忘れていることに気づいた後、早瀬から電話が掛かってきた。しかし、怒っていなくてホッとした。そろそろ3時限目が始まる。彼らと別れて教室へ向かった。
学食の『薄味』でご飯を食べている。佐久弥は薄味派だから丁度いい。2時限目の心理学の授業には間に合いようがなかった。同じ授業を取っている森本にノートを頼んだ。
これから理学部1号館のホールで研究発表が開かれる。佐久弥が見ていく。ここに着いた時に申し込みを済ませておいた。佐久弥は卒業生だから勝手が分かっている。今日の発表会は、物理学科と環境学科の二つだ。どっちを選ぶか?と聞いたところ、物理学科が良いと返事が返ってきた。そして、その答えの理由に、ビックリしてズッコケそうになった。物理学科は佐久弥が行っていた学科だと分かったからだ。人気のある狭き門の学科だ。
「さくやー、なんで物理学科なんだよ?狭き門をくぐるなよー!」
「向いていただけだ。悠人はなー、環境学科がいいだろう。裕理と同じ意見だ」
「なんで?」
「野外巡検のファッションがだ。安全帽にリュックが可愛いぞ」
「もう……」
「からかっていない。俺には似合わないから羨ましい。……雑誌の取材を受けたとすると、こういうことがあった。ディアドロップのイメージに合わないから嘘を載せたことがある」
「どんな嘘だよー?」
「ディアドロップの俺の趣味は『ドライブ』だ。……本当は、お菓子づくりと、ミシンだ。好きなんだよ。でも、公表していなかった」
「げええええっ。……弟のお稽古バッグを作ったのかー!」
「だろーー?」
「なるほど……」
イメージづくりと維持が必要なのか。ディアドロップの佐久弥と、実際の本人はかけ離れている。新しいプロジェクトでも、イメージを固定するのかな?その答えは『NO』だった。
「期間限定バンドでは、普段の俺でやる。そろそろイメージを脱却したい。無理をすると病むから。今回で勝負をかける。それでだめなら考える。カッコいいことを言ってるだろ?……グダグダだ、実際は……」
「ふむふむ……」
嬉しいな。こうして吐き出してくれることが。あれほど活躍しているミュージシャンが愚痴を聞かせてくれている。すると、チキン南蛮を食べようとして、ソースがテーブルに垂れてしまった。そしたら、佐久弥が布巾でふき取ってくれた。まるで夏樹のようだ。
「佐久弥は夏樹と気が合うよー。コンテストで審査員をやるんだよね?会ってみない?バンドの誘いをするなら……」
「もちろん喜んで。めずらしい子だ。爆発させてみたい、ステージで。……おい。キスマークがついているぞ?……見えててもいいのか?もう諦めたのかーー?」
「げええええっ」
どうしよう?ニットの襟元を、佐久弥が平然として覗き込んでいる。
「数字でも眺めとけよー」
「やっぱり裕理はヤルんだなー?性欲があるのか」
「はあー?」
「俺たち、ヤッたことがないからさ」
「へえー?」
「恋人同士でもヤルとは限らないぞ。俺たちがそうだった」
「うひぇー?」
どうしよう?それだけ佐久弥のことを大事にしていたのか。俺にはグイグイきているし、抱きまくりなのに。しかし、佐久弥が“違う違う”と言って笑っている。
「キスもしなかった。お互いにそこまでしたくなかった。……クラとはヤリまくっているぞー?」
「ひいいいいっ」
「カップルで考え方がちがう。上手くいっているならいいだろう。どれぐらいのペースだ?」
「なんのペースだよ?」
「『ヤッてる』ペースだよ。週に何回?友達の性生活を参考にしたい」
「人の性生活に興味を持つな!」
「注目されているぞーー、ぎゃはははは!」
「あああ……」
どうしよう?みんなが見ている。佐久弥だとビックリしている子もいる。しかし誰もが目を逸らした。周りが見ているのは俺たちの後ろだ。そこに居たのは、桜木さんと並川さんだった。それで納得できた。
桜木さんを見てのことだろう。中山伊吹さんという恋人がいて、この大学の出身者でもある。なぜか先輩たちが伊吹さんのことを恐れている。久しぶりにここで会った。バンド練習で毎日のように会っているから、余計に不思議だ。
「IRON ANGELのメンバーだね? こんにちはー」
「こんにちは」
「こんにちは!」
佐久弥がすっと手を伸ばして、2人と握手をしていた。スマートな動作がカッコいい。ここに来た理由は、研究発表を見るためだと説明している。卒業生であることも。ごく自然な流れで3人が話し始めて、これから予定がないからと、桜木さんと並川さんも一緒に研究発表を観に行くことが決まった。安心して佐久弥のことを預けることができた。
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