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パチパチパチパチ!
ステージサイドに立ち、夏樹が楽団と共演する様子を見守った。まずはジャズの楽曲を歌い、その後で俺達のライブを始める。みんなが拍手を贈ってくれている。賑やかに準備をしていたことが功を奏したようだ。さらに、佐久弥の存在も理由に入るだろう。
プライベートの姿であっても目立つ人だ。気軽に声をかけられて話して、握手をしている。今回のステージを楽しんでいますと話している。口元の動きで聞き取れた。
不思議な感覚がある。ここまで自分の耳が良かったとは知らなかった。人の顔色を気にする癖があり、読唇術のようなことまで出来ていたとは。
高校時代のバンドメンバーとは、これが原因で喧嘩が起きていた。耳が良いのはみんな同じだったが、それぞれが指摘するから喧嘩が起きて、面白くなくなった。いつもそういう言葉をぶつけられていた。
IRON ANGELは同じようにミスを指摘しあっているが、誰も嫌な顔をしない。コンテストが控えているから必死だったし、上手くなりたいという気持ちが強いメンバーの集まりだ。
(藤沢の指が傷だらけだったなあ。モデルなのに。練習量が半端ないからだよね……)
バンドに参加してよかった。並川さんから誘われなかったら、襲われた記憶だけが大きくなって逃げだしたままだった。バンドという船に戻ってきてよかった。救いの天使は鉄のように強い子で、夏椿のようにすぐに落ちても、来年も花を咲かせる。それが再開だ。俺にも当てはまる。こうなりたいと思った。
(佐久弥も同じだったのか。俺がつないだ縁なら結びたい!)
夏樹の歌が始まった。楽団のピアノの旋律が流れ出して、バイオリンの音色が絡んだ。そこへ夏樹の高音域の歌声が乗せられて、一つの音楽に変わった。この楽曲は祖母から教わったものの一つだ。昔を懐かしんでいるストーリーだ。
「わたしが失ったもの……たいせつなあなたーー……」
夏樹が会場内に歌声を響かせている。苦手だったと言っていた箇所も綺麗に歌っていると思う。自分も演奏力がついたと自信がついた。今日のステージを楽しみたい。
「いまになって……うしなったものが……どんなに……」
楽団からの旋律と声とが、溶け合っている。天井へ向けて織り上げられては消えて、高音を奏でていたピアノの音色と合流した。
「なつかしいあなたーーー……」
このラストのフレーズを聴くと、祖母のことを思い出す。もっと優しくすればよかった。失ったという言い方は避けたいが、後悔する時間があるのは事実だ。ふとした時に祖母の思い出すようになった。しかし、回数が減っている。大学へ入る前は、毎晩のように思い出していたのに。それを早瀬に相談すると、毎日が充実している証だという、アドバイスを貰った。
(……悠人君。大切な人が突然亡くなることがある。圭一さんは兄貴を亡くした)
(うん。俺の場合はおばあちゃんの看病ができたし、覚悟もできていたよ。一緒にいられたんだ。亡くなったのは春休みだったから、学校が休みだったし。おばあちゃんが頑張ってくれたんだよ)
(後悔しないように歩いて行こう。藍生ちゃんが大きくなった時、どんな人だったか話してあげなさい。その時には笑っていないと心配するぞ?藍生ちゃんの名前の由来は、悠人君にある。ブルーが好きな君が助けたから、生まれてこられた。そういう意味だと聞いた……)
この話を、父からされたことがない。早瀬には教えたのか。俺には遠慮があるのは知っている。こっちの方こそ距離感を保っていることも。いつかまた離れていくのなら、最初から近づかない方がいい。なんてネガティブな考え方だろう?どうしてここで思うのだろうか?懐かしい旋律に身を任せた。
ステージサイドに立ち、夏樹が楽団と共演する様子を見守った。まずはジャズの楽曲を歌い、その後で俺達のライブを始める。みんなが拍手を贈ってくれている。賑やかに準備をしていたことが功を奏したようだ。さらに、佐久弥の存在も理由に入るだろう。
プライベートの姿であっても目立つ人だ。気軽に声をかけられて話して、握手をしている。今回のステージを楽しんでいますと話している。口元の動きで聞き取れた。
不思議な感覚がある。ここまで自分の耳が良かったとは知らなかった。人の顔色を気にする癖があり、読唇術のようなことまで出来ていたとは。
高校時代のバンドメンバーとは、これが原因で喧嘩が起きていた。耳が良いのはみんな同じだったが、それぞれが指摘するから喧嘩が起きて、面白くなくなった。いつもそういう言葉をぶつけられていた。
IRON ANGELは同じようにミスを指摘しあっているが、誰も嫌な顔をしない。コンテストが控えているから必死だったし、上手くなりたいという気持ちが強いメンバーの集まりだ。
(藤沢の指が傷だらけだったなあ。モデルなのに。練習量が半端ないからだよね……)
バンドに参加してよかった。並川さんから誘われなかったら、襲われた記憶だけが大きくなって逃げだしたままだった。バンドという船に戻ってきてよかった。救いの天使は鉄のように強い子で、夏椿のようにすぐに落ちても、来年も花を咲かせる。それが再開だ。俺にも当てはまる。こうなりたいと思った。
(佐久弥も同じだったのか。俺がつないだ縁なら結びたい!)
夏樹の歌が始まった。楽団のピアノの旋律が流れ出して、バイオリンの音色が絡んだ。そこへ夏樹の高音域の歌声が乗せられて、一つの音楽に変わった。この楽曲は祖母から教わったものの一つだ。昔を懐かしんでいるストーリーだ。
「わたしが失ったもの……たいせつなあなたーー……」
夏樹が会場内に歌声を響かせている。苦手だったと言っていた箇所も綺麗に歌っていると思う。自分も演奏力がついたと自信がついた。今日のステージを楽しみたい。
「いまになって……うしなったものが……どんなに……」
楽団からの旋律と声とが、溶け合っている。天井へ向けて織り上げられては消えて、高音を奏でていたピアノの音色と合流した。
「なつかしいあなたーーー……」
このラストのフレーズを聴くと、祖母のことを思い出す。もっと優しくすればよかった。失ったという言い方は避けたいが、後悔する時間があるのは事実だ。ふとした時に祖母の思い出すようになった。しかし、回数が減っている。大学へ入る前は、毎晩のように思い出していたのに。それを早瀬に相談すると、毎日が充実している証だという、アドバイスを貰った。
(……悠人君。大切な人が突然亡くなることがある。圭一さんは兄貴を亡くした)
(うん。俺の場合はおばあちゃんの看病ができたし、覚悟もできていたよ。一緒にいられたんだ。亡くなったのは春休みだったから、学校が休みだったし。おばあちゃんが頑張ってくれたんだよ)
(後悔しないように歩いて行こう。藍生ちゃんが大きくなった時、どんな人だったか話してあげなさい。その時には笑っていないと心配するぞ?藍生ちゃんの名前の由来は、悠人君にある。ブルーが好きな君が助けたから、生まれてこられた。そういう意味だと聞いた……)
この話を、父からされたことがない。早瀬には教えたのか。俺には遠慮があるのは知っている。こっちの方こそ距離感を保っていることも。いつかまた離れていくのなら、最初から近づかない方がいい。なんてネガティブな考え方だろう?どうしてここで思うのだろうか?懐かしい旋律に身を任せた。
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