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21時半。
マンションの前に遊歩道に到着した。早瀬が楽しそうに笑って、遊覧船の明かりを眺めている。俺としては、可愛くないトラのユーリと並んで歩いている。さっき、少しだけ言い合いになってしまった。早瀬の顔ではなく、身体を見た。着やせするタイプというものだ。気持ちのいい腹回りは存在せず、割れた腹筋が存在する。鍛えているから維持されている。それを口にすると笑われた。
「ゆうとー。だから抱きついてくれないのか?」
「知らないよー」
「遠藤さんのボディーに嫉妬したい。ユサユサ揺れる腹の持ち主だ」
「10年物だってさー。50歳まではスリムだったそうだよ?」
「代表取締役になったあたりか……」
「佳代子さんが言っていたよ。ストレスが溜まって、ビールを飲み過ぎてたんだって。なかなか痩せないって……」
「……佐久弥の健康法を試したそうだぞ?」
「げええええっ。アヤシイことだろー?健康を損ないそうだよー」
「はははー。その通りだ」
よかった。食べられそうな空気だったのが消えた。散歩しながら帰ろうと持ち掛ら時は、警戒心100%だった。この場所で2回も襲われたが、ここに来たい気持ちの方が大きくて躊躇していた。今夜は何もしない。久しぶりに歩きたい。そう言われたからOKした。約束を破る人ではないが、性欲が勝ったケースは別だ。変なことをされる。
「裕理さん。仕事の方はどう?変わったことはあった?」
「特にはない。圭一さんとは、いいコンビでやっている。隠していないぞ」
「ふむふむ……」
何もないわけがない。白澤さんの他にもあるはずだ。黒崎さんと上手くやっていることは嫉妬の材料だろう。平坦な道でないから面白いのだと教えてくれた。それでも話は聞きたい。
「社会勉強したいから話してよ。足の引っ張り合いとかあるんだろ?愚痴ってよー」
「社会勉強か。上手い口実を使ったな」
「へへへ……」
「勉強をさせてあげる。癒やしてくれ……」
「あああ……」
強引に頭を引き寄せられた。とっさに胸を押そうとした右手を掴まれた。優しい力だから抵抗すればいい。しかし、そうしたくないからじっとしている。至近距離まで近づいた顔が、少しだけ傾いた。
「悠人。少しだけ」
「ん……」
「捕まえた……」
うまく策略に乗せられたようだ。触れるだけのキスが濃厚になった。濡れた音が聞こえる度にブルッと震えた。
「ん……」
「苦しいか?」
「平気……」
「上手になったね」
「もう……」
唇が触れあったままで文句を言うと、ペロッと唇を舐められたから、また身体が震えた。すっかり翻弄されている。目を開けると、早瀬の熱っぽい目に見つめられていた。彼の熱い息が首筋に掛かり、吸い付かれた。何度も往復するうちに堪らなくなって、身体が熱くなり、力も抜けてきた。
「悠人。大丈夫か?」
「うん……」
「嬉しいよ。感じてくれている」
「変なことを言うなって……」
ブルーキックをしようかと思ったけれど、やめておいた。早瀬がすごく優しいからだ。身体を支えるようにして抱きしめられた。
この辺りは水辺があるから涼しい。湾からの風が吹き込んできて、水の匂いがした。光に反射して、水面がキラキラ光って、とても綺麗だ。ぼんやりと見つめた。
「どうしたんだ?」
「水面が綺麗だなって思ったんだ」
「夜の散歩も良いね」
「うん」
早瀬の手を引き、水辺の近くへ移動した。昼間とは違う景色だ。すると、早瀬からもう一度抱きしめられて、唇が合わさった。ベッドまで我慢できないと言っている。
「だめだってば……」
「分かっている。本音を言った」
角度を変えて何度もキスをした。堪らなくなって身じろぎした時、視界が揺れた。両足が宙に浮いている。早瀬の肩に抱え上げられてしまったからだ。
「降ろしてよーー」
「ダーメ。さあ、本格的に食べさせてもらうぞ」
「あああ……」
ちっとも嫌じゃない。これもユーリの呪いだ。肩にすがりついて顔を伏せていると、耳元でエロいことを囁かれた。ブーブー文句を言いながらも、降りようとは思わなかった。少しは気分転換になったか?と、今度は優しい声で聴かれたからだ。このために冗談を言って怒らせたのか?きっとそうだろう。
このまま夜空を見上げると、夏の大三角の星座が浮かんでいた。冬になる前に星を眺めに行こうと話しながら、遊歩道を歩きだした。
マンションの前に遊歩道に到着した。早瀬が楽しそうに笑って、遊覧船の明かりを眺めている。俺としては、可愛くないトラのユーリと並んで歩いている。さっき、少しだけ言い合いになってしまった。早瀬の顔ではなく、身体を見た。着やせするタイプというものだ。気持ちのいい腹回りは存在せず、割れた腹筋が存在する。鍛えているから維持されている。それを口にすると笑われた。
「ゆうとー。だから抱きついてくれないのか?」
「知らないよー」
「遠藤さんのボディーに嫉妬したい。ユサユサ揺れる腹の持ち主だ」
「10年物だってさー。50歳まではスリムだったそうだよ?」
「代表取締役になったあたりか……」
「佳代子さんが言っていたよ。ストレスが溜まって、ビールを飲み過ぎてたんだって。なかなか痩せないって……」
「……佐久弥の健康法を試したそうだぞ?」
「げええええっ。アヤシイことだろー?健康を損ないそうだよー」
「はははー。その通りだ」
よかった。食べられそうな空気だったのが消えた。散歩しながら帰ろうと持ち掛ら時は、警戒心100%だった。この場所で2回も襲われたが、ここに来たい気持ちの方が大きくて躊躇していた。今夜は何もしない。久しぶりに歩きたい。そう言われたからOKした。約束を破る人ではないが、性欲が勝ったケースは別だ。変なことをされる。
「裕理さん。仕事の方はどう?変わったことはあった?」
「特にはない。圭一さんとは、いいコンビでやっている。隠していないぞ」
「ふむふむ……」
何もないわけがない。白澤さんの他にもあるはずだ。黒崎さんと上手くやっていることは嫉妬の材料だろう。平坦な道でないから面白いのだと教えてくれた。それでも話は聞きたい。
「社会勉強したいから話してよ。足の引っ張り合いとかあるんだろ?愚痴ってよー」
「社会勉強か。上手い口実を使ったな」
「へへへ……」
「勉強をさせてあげる。癒やしてくれ……」
「あああ……」
強引に頭を引き寄せられた。とっさに胸を押そうとした右手を掴まれた。優しい力だから抵抗すればいい。しかし、そうしたくないからじっとしている。至近距離まで近づいた顔が、少しだけ傾いた。
「悠人。少しだけ」
「ん……」
「捕まえた……」
うまく策略に乗せられたようだ。触れるだけのキスが濃厚になった。濡れた音が聞こえる度にブルッと震えた。
「ん……」
「苦しいか?」
「平気……」
「上手になったね」
「もう……」
唇が触れあったままで文句を言うと、ペロッと唇を舐められたから、また身体が震えた。すっかり翻弄されている。目を開けると、早瀬の熱っぽい目に見つめられていた。彼の熱い息が首筋に掛かり、吸い付かれた。何度も往復するうちに堪らなくなって、身体が熱くなり、力も抜けてきた。
「悠人。大丈夫か?」
「うん……」
「嬉しいよ。感じてくれている」
「変なことを言うなって……」
ブルーキックをしようかと思ったけれど、やめておいた。早瀬がすごく優しいからだ。身体を支えるようにして抱きしめられた。
この辺りは水辺があるから涼しい。湾からの風が吹き込んできて、水の匂いがした。光に反射して、水面がキラキラ光って、とても綺麗だ。ぼんやりと見つめた。
「どうしたんだ?」
「水面が綺麗だなって思ったんだ」
「夜の散歩も良いね」
「うん」
早瀬の手を引き、水辺の近くへ移動した。昼間とは違う景色だ。すると、早瀬からもう一度抱きしめられて、唇が合わさった。ベッドまで我慢できないと言っている。
「だめだってば……」
「分かっている。本音を言った」
角度を変えて何度もキスをした。堪らなくなって身じろぎした時、視界が揺れた。両足が宙に浮いている。早瀬の肩に抱え上げられてしまったからだ。
「降ろしてよーー」
「ダーメ。さあ、本格的に食べさせてもらうぞ」
「あああ……」
ちっとも嫌じゃない。これもユーリの呪いだ。肩にすがりついて顔を伏せていると、耳元でエロいことを囁かれた。ブーブー文句を言いながらも、降りようとは思わなかった。少しは気分転換になったか?と、今度は優しい声で聴かれたからだ。このために冗談を言って怒らせたのか?きっとそうだろう。
このまま夜空を見上げると、夏の大三角の星座が浮かんでいた。冬になる前に星を眺めに行こうと話しながら、遊歩道を歩きだした。
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