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角を曲がると、日本風家屋が見えてきた。松の枝の匂いが風で広がっている。昔から変わらない風景だ。懐かしい光景を思い出した。あれは小学生の頃だった。門のそばには久弥が立っており、蔵之介がいじめっ子を撃退していた。俺も追い払った。
その後、顔を真っ赤にした久弥から礼を言われた。可愛らしい少年だから苛められていた。気を引きたくてだ。男同士なら遊びに誘えばいい。相手は中学生だ。みっともない奴らだった。当時の久弥と蔵之介の会話を思い出した。
(……ゆうちゃん。クラー。ありがとう!)
(……何かあったら言え!お前が可愛いから追いかけている。いつもコンビニの横で座っているだろう?やっつけて来ようか?)
(……お母さんがやめなさいって。2人が助けてくれるなら大丈夫。悪いことをする子たちじゃないしって。挨拶をしたら、ペコって頭を下げてくるのよーって……。お母さんのお腹に、赤ちゃんがいるからだよ)
(……だったら、お前のことも苛めたらだめだ!……裕理、お前もそう思うだろう?喧嘩をしないだと?強い子はしないのか?俺は弱いのか?)
(……クラー。そういう意味じゃないよ。クラも強いよ)
(……ふうん。俺には俺のやり方がある。どういう意味かって?お兄ちゃんから教わった。なんだよー。真似したら駄目なのか?)
(……クラー。そうじゃないよ。大好きだよ)
(……裕理のことばっかりじゃないか。優しいからか?俺は乱暴なのか?苛められる前に言えよ?裕理よりも前に助けるから)
懐かしい。あの当時から、蔵之介にはライバル視されていた。久弥を取り合った。それが変わったのは、大学生になった直後だ。久弥が大学で出会って連れて来た男がきっかけになった。それがアンディープのベースの静久だ。蔵之介と俺のことを見て呆れて、久弥に提案をしてきた。
(……へえ?久弥君のことを取り合っているのか。俺が解決してやる)
(……いいよ。冗談でやっているんだ)
(……静かにしてもらいたいだろう?おーーい、裕理君、クラ!久弥君は俺と付き合うことになった。諦めろ。……どうだ?)
(……いやだ)
(……オーケーだろう?)
(……分かったよ。はっきり言うよ。ゆうちゃんもクラも嫌いだ!以上!)
あのことがきっかけで、久弥が間髪入れずに意思表示できるようになった。悠人にはまだ打ち明けていない話だ。俺と久弥の2人がプロの道に誘われたのではなく、静久も一緒に誘われたことを。静久はプロの道に進むことを選んだ一ヶ月後に事故で亡くなった。
静久の49日の法要の日、寺の木に朝露が残っていた。雫だ。それを見て、親愛なる雫で、Dear Dropsというバンド名を使ったらどうかと、植本と話した。俺と久弥は別れた後だった。それが久弥に伝わり、カタカナ表記にしてバンド名を使ってもらえた。それがディアドロップだ。
(懐かしい……)
佐伯家の門の前に立った。不思議な気分になりながら、インターフォンを鳴らした。去年の夏に再会するまでは、思い出の中にある門だった。今は現実として存在している。久弥に会いたがられないだろうと避けていた。
世話になった久弥達の母が住んでいる。顔を見せるぐらいのことをすればよかった。こういう不義理をしてしまった。
(俺にとってはお姉さんのような存在だった。元ヤンキーだったのか。どうりで気合いが入っているわけだ……)
……ポーン、ポーン。
……ふぁーーい。
インターフォンを鳴らすと、ハスキーな声が聞こえてきた。ここでも悠人への弁解のフレーズが浮かんできた。何度もうちに泊まりに来ている相手なのに。二人きりで会うことがないからか?すると、玄関から長年の友人が出てきた。
「おー、浮気しに来たのかー?」
「違うに決まっているだろう。蔵之介のマンションかと思ったぞ」
「まだ帰ってきていない。上がっていけよ。……実家に顔を出していたのか?」
「ああ。実は……」
久弥の横顔を見た。弱々しさはかけらもない。平たんではない道を歩いてきた男のものだと感じた。逞しい先輩として胸を張っている姿を見ると、胸が熱くなった。
莉奈のことを話すと、何も聞き返されることなく、さっと肩を抱くようにして外に促された。散歩をしながら続きを聞かせてくれと言われた。目の前には夕焼け空が広がり、幼なじみとして歩き始めた。
その後、顔を真っ赤にした久弥から礼を言われた。可愛らしい少年だから苛められていた。気を引きたくてだ。男同士なら遊びに誘えばいい。相手は中学生だ。みっともない奴らだった。当時の久弥と蔵之介の会話を思い出した。
(……ゆうちゃん。クラー。ありがとう!)
(……何かあったら言え!お前が可愛いから追いかけている。いつもコンビニの横で座っているだろう?やっつけて来ようか?)
(……お母さんがやめなさいって。2人が助けてくれるなら大丈夫。悪いことをする子たちじゃないしって。挨拶をしたら、ペコって頭を下げてくるのよーって……。お母さんのお腹に、赤ちゃんがいるからだよ)
(……だったら、お前のことも苛めたらだめだ!……裕理、お前もそう思うだろう?喧嘩をしないだと?強い子はしないのか?俺は弱いのか?)
(……クラー。そういう意味じゃないよ。クラも強いよ)
(……ふうん。俺には俺のやり方がある。どういう意味かって?お兄ちゃんから教わった。なんだよー。真似したら駄目なのか?)
(……クラー。そうじゃないよ。大好きだよ)
(……裕理のことばっかりじゃないか。優しいからか?俺は乱暴なのか?苛められる前に言えよ?裕理よりも前に助けるから)
懐かしい。あの当時から、蔵之介にはライバル視されていた。久弥を取り合った。それが変わったのは、大学生になった直後だ。久弥が大学で出会って連れて来た男がきっかけになった。それがアンディープのベースの静久だ。蔵之介と俺のことを見て呆れて、久弥に提案をしてきた。
(……へえ?久弥君のことを取り合っているのか。俺が解決してやる)
(……いいよ。冗談でやっているんだ)
(……静かにしてもらいたいだろう?おーーい、裕理君、クラ!久弥君は俺と付き合うことになった。諦めろ。……どうだ?)
(……いやだ)
(……オーケーだろう?)
(……分かったよ。はっきり言うよ。ゆうちゃんもクラも嫌いだ!以上!)
あのことがきっかけで、久弥が間髪入れずに意思表示できるようになった。悠人にはまだ打ち明けていない話だ。俺と久弥の2人がプロの道に誘われたのではなく、静久も一緒に誘われたことを。静久はプロの道に進むことを選んだ一ヶ月後に事故で亡くなった。
静久の49日の法要の日、寺の木に朝露が残っていた。雫だ。それを見て、親愛なる雫で、Dear Dropsというバンド名を使ったらどうかと、植本と話した。俺と久弥は別れた後だった。それが久弥に伝わり、カタカナ表記にしてバンド名を使ってもらえた。それがディアドロップだ。
(懐かしい……)
佐伯家の門の前に立った。不思議な気分になりながら、インターフォンを鳴らした。去年の夏に再会するまでは、思い出の中にある門だった。今は現実として存在している。久弥に会いたがられないだろうと避けていた。
世話になった久弥達の母が住んでいる。顔を見せるぐらいのことをすればよかった。こういう不義理をしてしまった。
(俺にとってはお姉さんのような存在だった。元ヤンキーだったのか。どうりで気合いが入っているわけだ……)
……ポーン、ポーン。
……ふぁーーい。
インターフォンを鳴らすと、ハスキーな声が聞こえてきた。ここでも悠人への弁解のフレーズが浮かんできた。何度もうちに泊まりに来ている相手なのに。二人きりで会うことがないからか?すると、玄関から長年の友人が出てきた。
「おー、浮気しに来たのかー?」
「違うに決まっているだろう。蔵之介のマンションかと思ったぞ」
「まだ帰ってきていない。上がっていけよ。……実家に顔を出していたのか?」
「ああ。実は……」
久弥の横顔を見た。弱々しさはかけらもない。平たんではない道を歩いてきた男のものだと感じた。逞しい先輩として胸を張っている姿を見ると、胸が熱くなった。
莉奈のことを話すと、何も聞き返されることなく、さっと肩を抱くようにして外に促された。散歩をしながら続きを聞かせてくれと言われた。目の前には夕焼け空が広がり、幼なじみとして歩き始めた。
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