回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 今も同じだ。悠人にとっても大事な友人だ。こういう未来が待っていたのか。あの別れは、生まれ変わるための大量出血だ。痛みを伴う。

「……ゆうちゃん。俺もお前も生まれ変わった。莉奈ちゃんもそうだろう。……悠人から聞いたけど。ヒーローとクランが棲んでいるのか?」
「そのとおり。子供のユーリを育てている。莉奈は ”人形” だ。溺愛されているけど、自分の意思を受け入れてもらえない」
「夏樹もそうだったか?黒崎さんの……」
「そうだと思う。その人形に振り回されていた。外見が人形だったけど」
「今は男らしい外見をしているぞ。……俺もあれか?今のお母さんが来るまでは、良い子だったのか?」
「そうかもしれないな」

 プロになる直前の久弥は、俺にとっては”問題児”だった。蔵之介が呪いを解いたことで、今の本人がいる。濁流が一つの川に行きついた。お互いに別の船に乗っている。たまに飛びこんで遊びに行っている。

(懐かしい。夏のことを思い出す……)

 夏の日の暮れは遅い。空は明るいままだ。蔵之介と途中で別れた後、こうして2人で帰っていた。あの学校からの帰り道を思い出す。今日は追憶と再会の日だ。

「ゆうちゃん……。高校生の時、わざと遠回りをして帰らなかったか?」
「バレていたのか。お前もそうだったろう?」
「ああー、そうだったよー」
「他にもバレていることがあるぞ」
「何のことだよ?」
「悠人に教えたことだ。優しい嘘のことだ」
「あれかー、それでいいだろ。未遂だったからな。割り切れているようでそうでない。友達でいたい。俺にとっては、悠人も夏樹も大事な子だ。守りたい子たちだ」
「ありがとう。指輪をつけてくれているんだな。再会した時は驚いた」
「捨てられるわけがない。お前のお母さんの形見だ。……メンズサイズだ。お父さんの指輪じゃないのか?小学生の時の永遠の誓いだ。黙っておきたい。最愛の思い出だ。悠人には不義理だけど、少しぐらい、いいだろう?」

 久弥が付けている指輪は、俺が小学生の時に久弥に贈った物だ。おそらく、実の父の持ち物だ。母の形見を見て気に入り、久弥に渡したいと思った。それを久弥が大事にしてくれている。

 ゆっくり歩いているのは散歩だからだ。そばには石の階段がある。黄色の手すりだったのに、新しいタイプに変わっている。アルミのような色をしている。グレー色だ。

 白か黒か?俺たちはグレーだった。恋人と親友との間に立っていた。まるで合わせ鏡のような関係だ。別れて独立し、新しい分岐点を歩み始めた。そして、いくつも枝分かれした先に同じ道があり、親友としての関係を再開させた。

「悠人のことを苛めたくせにか?」
「本人には謝り倒した!許すから謝るなって叱られた……」
「いい子だろー?」
「ああ。いい子だ。去年、引きずってた思いを解消したよな、俺たち……」
「そうだったね。思い出していたよ」
「ゆうちゃんに伝えておくことがある」

 久弥が立ち止まった。背後の空には夕焼けが始まっている。5年前は黒い髪の毛をしていたが、今は赤味のあるカラーに染めている。風がなびいたことで揺れ動いた。その両目も揺れ動いた。涙か?どうしてだ?久弥が涙を流している。

「久弥として伝えることがある。いい子のユーリ、いつまでも愛している」
「久弥……。ありがとう」

 俺の目からも涙が落ちた。これで5年前の別れの完了だ。そう思った。

「……おい、泣くな!ぽたぽた落ちているぞ?」
「泣いているのはお前の方だ」
「ゆうちゃん、お前も泣いているじゃないか。俺は拭いてやれない。お前もそうだ。もう触れないだろう?俺が出て行ったんだ」
「親友としてなら拭いてもいいか?」
「そうしてくれ。なんだよー、また泣けてきたじゃないかー」

 お互いに涙を落としていた。久弥からの思いやりを受け取った。揺れる視界の向こうでは、しっかりした顔つきの男が笑っている。

「ここからは親友の久弥になるぞ。悠人が心の傷跡の中に居続けるのが嫌だ」
「ああ。守って見せる」
「よーし!ここからは佐久弥だ。佐伯久弥としての宣言だ。……悠人のことは守る。お前のことを守れなかった分まで。夏樹のこともだ。……絶対に成功させて見せる。そのために俺は踏ん張る。だからお前も気合いを入れろ。根性見せろよ!」
「ありがとう……」
「明日の打ち上げでステージを披露する。よく見ておけ!凄いことになるぞ。デビューした時はもっとだ。夏樹の呪いも解いてやる。いくつもあるうちの一つだ」
「しっかり見ておく」
「ここで誓ってやる。よく聞いておけ。そのままの裕理が大好きだ!」
「……ぷっ」

 これはユートの呪いだ。二人で腹を抱えて笑いながら、リスペクトし合う親友としての道を歩き始めた。
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