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第三章 戦争への動き
衛星模型
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高靂三年2月、おれと舜助は宇宙に行く前に堯助の家に行った。
今日は他に誰もいないとのことで堯助と舜助が壮行会、といっても三人だけで催した。
二人はむりやり冗談を捻り出してなんとか笑いを作ろうとしたがどうしてもお通夜のようになる。
そこで昔のようにSF談議に変えた。
終る頃堯助が言った。
「戦争はいつまで続くかわからない。君の出番になるミサイル攻撃はいつ起こるか判らない。君が宇宙にいる期間の大部分は戦いの任務が殆どない。それは苦痛だろうから申し出れば暇つぶしになる物を持ち込むことが許されている。平時は運動を含む規則的な日課をこなさなければならない。それは君の健康のためだ。宇宙に滞在すると人体は弱る」
そんなに暇な任務だとは予想していなかった。
ところが実際に日課を聞くと、どこかの会社の委託業務のようなアルバイト作業が色々あって全然暇になりそうもなかった。
「こんなにスポンサーが付いていても極秘任務なのか」
「全部このシステムの制作に関わった企業だ。彼等は秘密を守る」
のちにいざ戦争が始まると地上の様子を監視しているだけでも全く退屈しなかった。
「戦争は狂気を呼び起こす。技術者として責任の有るおれたちはいつまでも合理的な理性を保っていたいものだ」
とおれが言えば二人も静かに同意した。
トイレに行くためにドアを開けようとした時、ドア裏から誰かがすっと去っていった。
誰なのか確認できなかったがまぼろしではなかった。
知る限り3月になっても情勢に大きな動きはなかった。
正月の脅しのあと何か裏で交渉をしていたのかどうかは伝えられていない。
実は我が国は前年の秋から盛んに大型ロケットを打ち上げていた。
頻繁になるとニュースにもならなくなった。
和歌山と千葉に臨時の打ち上げ基地二か所が作られた。
もう一つ完全非公開の打ち上げ基地があった。
表向きは宇宙発電システムの構築である。
総予算は二千億円以下と言われた。
いずれ民間企業のものになるのに莫大な予算を使いやがって、しかもこんな時に何をのんきな、採算も取れない、と新聞から攻撃された。
しかしある映画に比べればしょぼい。
セリフの中で、妖星ゴラスがやってきた千九百六十二年の我が国の有人宇宙船隼の開発費は十三兆円だと言っていた。
国家予算比で現在に換算すれば隼予算は六百五十兆円だ。
打ち上げた衛星の一つに大型の有人衛星があった。
それは五回にわたって打ち上げられたモジュールが結合されたものだ。
おれとミヤコは往還機でそこへ行くことになった。
久しぶりに会ったのにミヤコは相変わらず無表情で、その服はよくSF宇宙ドラマなどで見るかっこいいものになっていた。
おれがほめてやるとミヤコは意味が解らなかった。
それを気にして質問をくり返した。
舜助が何とか収めた。
不必要なことを言わない方がよかった。
おれにもミヤコとお揃いの宇宙用ユニフォームを渡された。
遮蔽の役も果たすので常に着ていなければならない。
懐かしい宇宙もののTVドラマに似ている。
しかし部下のミヤコの方がずっとデカいという凸凹コンビだ。
しかもミヤコはくびれのない寸胴女だ。
この違和感は消えなかった。
堯助からあらためて説明された。
「宇宙発電システムとして動くとき、小型の発電衛星を準静止軌道に載せる。七十個の衛星で発電した電力を宇宙空間で十個のメインガン衛星に無線送電し、それぞれからまとめられたエネルギーになってマイクロ波空間伝送方式で地上に送る。だから地上受電器も十基ある。動いている衛星からの距離は常に変化しているので各衛星からバラバラに同じ受電器に送電すると位相ずれで打ち消し合ってロスが起こる。他に、地上には自分の位置確認や照準確認用の設備も当然ある」
メインガン衛星の模型を見ると大きさと言い形と言い、背びれのような宇宙冷却装置が夥しく付いていて、出来損ないのステゴザウルス模型に見えた。
堯助は言った。
「だからステゴちゃん何号とか呼ぶ。口から光線を吐くのだ」
「ここからか?」
「そこはお尻」
「頭と尻尾が同じじゃないか。ステゴちゃんなんて、何か可哀そうな響きだ。ところでおれが乗る衛星の名前はなんだ?」
「名前は無い」
マスターガン衛星は有人衛星で、名前もないほど極秘だ。
堯助はマスターガンについて
「人の乗るこの衛星は安全のためと探知されにくくするため通常の戦闘ではマスターガンを使うことはない。発電衛星の合計出力は三メガワットだから百四十八秒分を溜め込んで四百四十四メガジュールのエネルギーを、もし一気に発射出来ればその衝撃は戦艦大和の主砲弾の初速エネルギーと同等だ。弾頭に炸薬は無いが宇宙なら減衰しないで当り、どんな敵の武装衛星でも破壊できる。だが核爆発に比べれば何桁も小さいエネルギーだから環境への影響は心配いらない」
「それは、誰が使う?」
堯助は君だといって笑った。
マスターガン衛星には受電パネルが十個ある。
ステゴちゃん達からエネルギーを同時に受電するためだ。
ここであることに気づいた。
「おい、窓は無いのか」
「地球大気と地球磁場に守られていない高軌道は銀河宇宙線と太陽風が直撃する。被曝量は地上の数万倍以上になるかもしれない。エネルギーが高いので普通の放射線遮蔽方法など簡単に貫通し、人体や電子機器を破壊する」
おれの声は小さくなった。
「それじゃだめじゃ……ないか」
「メインガン衛星のうち常に最低一基は有人衛星の近くにいて、強烈な太陽風が突発した場合に有人往還船とともにシールドとなる。一方高軌道に降り注ぐ銀河宇宙線は回転磁場による加速などで超高速になった荷電粒子が多く、水での遮蔽が考えられた。しかし必要量を計算すると百トン以上にもなる。これではだめだ、と頭を抱えていた時、救世主がいた。昔君の神社に保管されていて後でおれが預かった石だ。それを分析すると元素の周期律表のページを遥かはみ出た所にある安定の島と呼ばれる領域の未発見の超重元素だった。しかも安定核だった。詳細に性質が調べられた。それで元素合成方法にもめどがついた。その原子と炭素繊維とプラスチックを複合材料にすることによって従来の宇宙船構造に比べて大幅に遮蔽できるようになった。そもそもあの石はどこからどうやって君が手に入れたのだ?」
「神社に持ってきたのは有嶺と名乗る紺作務衣の仙人みたいな老人だ。未来にいる前世の自分から渡された、などと言うので明らかに頭のおかしいジジイだった。〝今人生の始末をしている。自分が持っていてもしょうがないから神様に奉納したいが、何かの役に立つなら使っていい〟と言って置いていった。大きさの割に重いので文鎮にしようと思ったが敷くほどの小説も書かなかったので邪魔になって君に譲ったのだ。しかしそんな不思議な石なら、あの有嶺とかいうジジイはひょっとすると神だったのかも」
「潤沢に生産することは難しい。それで遮蔽は完全ではない。窓をつけるどころではないのだ。しかも、もし窓から肉眼で地球を見たらあまりに遠くて寂しさ、怖さを感じてしまう。モニターがあれば自在に拡大して見ることができる」
「潜水艦みたいなものか」
「ただし潜望鏡ではないが一カ所だけ小さな出窓を付けている。たまにはそこから肉眼で直接地球を見るのもいい」
「遠心力で疑似重力を発生するなんてことはしないのか」
「普通の大きさの宇宙船でそれをやると経験したことのないような船酔いを起す。上質な重力を生み出すには直径一キロメートル以上の円運動による遠心力を使わなければならない。それが実現できない理由はいっぱいある。SFでは宇宙船の床に普通に立っているが、どうやっているのか教えてくれ」
「平面的な重力源があるとか言うが、それの説明はない。ところで宇宙遊泳はできるのか」
「往還船乗り換え用のエアロックはあるが船外活動用の出口はない。宇宙服も無い。船外活動が無いから君の地上での訓練はすぐ終わったのだ」
打ち上げられると宇宙物体として国際登録されるがデータの一部は嘘だった。
そして打ち上がってからもしばしば軌道を変更する。
静止軌道のような国際ルールも準天頂軌道にはない。
おれが直接操作していいのは古めかしい四つの電光ボタンと地上との交信装置だけだった。
漫画っぽいが
〇ノーマル発電モード
〇ミサイル防衛モード
〇艦隊決戦モード
〇お助け
おれだけがモードを切り替えできる。
使い込んだようにメッキにわざとらしい剥げまである。
堯助は
「本当に困ったときはお助けボタンを押すのだ。衛星の主コンピュータがアバターとなってモニターに登場し、話し合うことが出来る」
レーザー砲の波長は赤外領域からX線領域まで可変だ。
破壊兵器として使う場合、主にX線である。
波長が短いほど高エネルギーになり衝撃力・破壊力が強いので表面を破壊できる。
波長が長いほど透過力が強いので内部を破壊できる。
「それは、どうやって切り替えればいい?」
「ミヤコに『X線の波長に切り替えろ』というだけだ。矛盾した命令を出せばちゃんと聞き返してくる。たぶん」
X線は大気圏上層で速やかに消滅するので間違っても地上の人を傷つけないが、宇宙空間を弾道飛行する再突入体には減衰なしで当たり、機能を削ぐことができる。
実際の照射位置は大抵海の上になるのでさらに安全だ。
衛星の主コンピュータは高性能だがミヤコとの役割分担が判らない。
どちらの方が賢いかとミヤコに聞いたら
「アタイは頭が悪くて……勉強が全然できなくて。だから早くいい人のお嫁さんになりたくて一生懸命おめかし習って……」
ミヤコは何か物語を作っていた。
舜助に聞くと
「ミヤコは疑似人格的だが主コンピュータはプロセス的であり、違う性格の組み合わせに重要な意味がある」
といった。
もちろん何のことかわからない。
ターゲットの変更、波長の変更などミヤコに日常言語で言えば適切に解釈され、臨機応変に細かい変更が出来るようになっていた。
各種情報は命令すればディスプレイパネルに判りやすく表示される。
後に情報表示方法に自分なりの工夫を凝らした。
日課の中には地理の勉強もあった。
宇宙から見える光景と比べるのが楽しみだった。
今日は他に誰もいないとのことで堯助と舜助が壮行会、といっても三人だけで催した。
二人はむりやり冗談を捻り出してなんとか笑いを作ろうとしたがどうしてもお通夜のようになる。
そこで昔のようにSF談議に変えた。
終る頃堯助が言った。
「戦争はいつまで続くかわからない。君の出番になるミサイル攻撃はいつ起こるか判らない。君が宇宙にいる期間の大部分は戦いの任務が殆どない。それは苦痛だろうから申し出れば暇つぶしになる物を持ち込むことが許されている。平時は運動を含む規則的な日課をこなさなければならない。それは君の健康のためだ。宇宙に滞在すると人体は弱る」
そんなに暇な任務だとは予想していなかった。
ところが実際に日課を聞くと、どこかの会社の委託業務のようなアルバイト作業が色々あって全然暇になりそうもなかった。
「こんなにスポンサーが付いていても極秘任務なのか」
「全部このシステムの制作に関わった企業だ。彼等は秘密を守る」
のちにいざ戦争が始まると地上の様子を監視しているだけでも全く退屈しなかった。
「戦争は狂気を呼び起こす。技術者として責任の有るおれたちはいつまでも合理的な理性を保っていたいものだ」
とおれが言えば二人も静かに同意した。
トイレに行くためにドアを開けようとした時、ドア裏から誰かがすっと去っていった。
誰なのか確認できなかったがまぼろしではなかった。
知る限り3月になっても情勢に大きな動きはなかった。
正月の脅しのあと何か裏で交渉をしていたのかどうかは伝えられていない。
実は我が国は前年の秋から盛んに大型ロケットを打ち上げていた。
頻繁になるとニュースにもならなくなった。
和歌山と千葉に臨時の打ち上げ基地二か所が作られた。
もう一つ完全非公開の打ち上げ基地があった。
表向きは宇宙発電システムの構築である。
総予算は二千億円以下と言われた。
いずれ民間企業のものになるのに莫大な予算を使いやがって、しかもこんな時に何をのんきな、採算も取れない、と新聞から攻撃された。
しかしある映画に比べればしょぼい。
セリフの中で、妖星ゴラスがやってきた千九百六十二年の我が国の有人宇宙船隼の開発費は十三兆円だと言っていた。
国家予算比で現在に換算すれば隼予算は六百五十兆円だ。
打ち上げた衛星の一つに大型の有人衛星があった。
それは五回にわたって打ち上げられたモジュールが結合されたものだ。
おれとミヤコは往還機でそこへ行くことになった。
久しぶりに会ったのにミヤコは相変わらず無表情で、その服はよくSF宇宙ドラマなどで見るかっこいいものになっていた。
おれがほめてやるとミヤコは意味が解らなかった。
それを気にして質問をくり返した。
舜助が何とか収めた。
不必要なことを言わない方がよかった。
おれにもミヤコとお揃いの宇宙用ユニフォームを渡された。
遮蔽の役も果たすので常に着ていなければならない。
懐かしい宇宙もののTVドラマに似ている。
しかし部下のミヤコの方がずっとデカいという凸凹コンビだ。
しかもミヤコはくびれのない寸胴女だ。
この違和感は消えなかった。
堯助からあらためて説明された。
「宇宙発電システムとして動くとき、小型の発電衛星を準静止軌道に載せる。七十個の衛星で発電した電力を宇宙空間で十個のメインガン衛星に無線送電し、それぞれからまとめられたエネルギーになってマイクロ波空間伝送方式で地上に送る。だから地上受電器も十基ある。動いている衛星からの距離は常に変化しているので各衛星からバラバラに同じ受電器に送電すると位相ずれで打ち消し合ってロスが起こる。他に、地上には自分の位置確認や照準確認用の設備も当然ある」
メインガン衛星の模型を見ると大きさと言い形と言い、背びれのような宇宙冷却装置が夥しく付いていて、出来損ないのステゴザウルス模型に見えた。
堯助は言った。
「だからステゴちゃん何号とか呼ぶ。口から光線を吐くのだ」
「ここからか?」
「そこはお尻」
「頭と尻尾が同じじゃないか。ステゴちゃんなんて、何か可哀そうな響きだ。ところでおれが乗る衛星の名前はなんだ?」
「名前は無い」
マスターガン衛星は有人衛星で、名前もないほど極秘だ。
堯助はマスターガンについて
「人の乗るこの衛星は安全のためと探知されにくくするため通常の戦闘ではマスターガンを使うことはない。発電衛星の合計出力は三メガワットだから百四十八秒分を溜め込んで四百四十四メガジュールのエネルギーを、もし一気に発射出来ればその衝撃は戦艦大和の主砲弾の初速エネルギーと同等だ。弾頭に炸薬は無いが宇宙なら減衰しないで当り、どんな敵の武装衛星でも破壊できる。だが核爆発に比べれば何桁も小さいエネルギーだから環境への影響は心配いらない」
「それは、誰が使う?」
堯助は君だといって笑った。
マスターガン衛星には受電パネルが十個ある。
ステゴちゃん達からエネルギーを同時に受電するためだ。
ここであることに気づいた。
「おい、窓は無いのか」
「地球大気と地球磁場に守られていない高軌道は銀河宇宙線と太陽風が直撃する。被曝量は地上の数万倍以上になるかもしれない。エネルギーが高いので普通の放射線遮蔽方法など簡単に貫通し、人体や電子機器を破壊する」
おれの声は小さくなった。
「それじゃだめじゃ……ないか」
「メインガン衛星のうち常に最低一基は有人衛星の近くにいて、強烈な太陽風が突発した場合に有人往還船とともにシールドとなる。一方高軌道に降り注ぐ銀河宇宙線は回転磁場による加速などで超高速になった荷電粒子が多く、水での遮蔽が考えられた。しかし必要量を計算すると百トン以上にもなる。これではだめだ、と頭を抱えていた時、救世主がいた。昔君の神社に保管されていて後でおれが預かった石だ。それを分析すると元素の周期律表のページを遥かはみ出た所にある安定の島と呼ばれる領域の未発見の超重元素だった。しかも安定核だった。詳細に性質が調べられた。それで元素合成方法にもめどがついた。その原子と炭素繊維とプラスチックを複合材料にすることによって従来の宇宙船構造に比べて大幅に遮蔽できるようになった。そもそもあの石はどこからどうやって君が手に入れたのだ?」
「神社に持ってきたのは有嶺と名乗る紺作務衣の仙人みたいな老人だ。未来にいる前世の自分から渡された、などと言うので明らかに頭のおかしいジジイだった。〝今人生の始末をしている。自分が持っていてもしょうがないから神様に奉納したいが、何かの役に立つなら使っていい〟と言って置いていった。大きさの割に重いので文鎮にしようと思ったが敷くほどの小説も書かなかったので邪魔になって君に譲ったのだ。しかしそんな不思議な石なら、あの有嶺とかいうジジイはひょっとすると神だったのかも」
「潤沢に生産することは難しい。それで遮蔽は完全ではない。窓をつけるどころではないのだ。しかも、もし窓から肉眼で地球を見たらあまりに遠くて寂しさ、怖さを感じてしまう。モニターがあれば自在に拡大して見ることができる」
「潜水艦みたいなものか」
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「遠心力で疑似重力を発生するなんてことはしないのか」
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「平面的な重力源があるとか言うが、それの説明はない。ところで宇宙遊泳はできるのか」
「往還船乗り換え用のエアロックはあるが船外活動用の出口はない。宇宙服も無い。船外活動が無いから君の地上での訓練はすぐ終わったのだ」
打ち上げられると宇宙物体として国際登録されるがデータの一部は嘘だった。
そして打ち上がってからもしばしば軌道を変更する。
静止軌道のような国際ルールも準天頂軌道にはない。
おれが直接操作していいのは古めかしい四つの電光ボタンと地上との交信装置だけだった。
漫画っぽいが
〇ノーマル発電モード
〇ミサイル防衛モード
〇艦隊決戦モード
〇お助け
おれだけがモードを切り替えできる。
使い込んだようにメッキにわざとらしい剥げまである。
堯助は
「本当に困ったときはお助けボタンを押すのだ。衛星の主コンピュータがアバターとなってモニターに登場し、話し合うことが出来る」
レーザー砲の波長は赤外領域からX線領域まで可変だ。
破壊兵器として使う場合、主にX線である。
波長が短いほど高エネルギーになり衝撃力・破壊力が強いので表面を破壊できる。
波長が長いほど透過力が強いので内部を破壊できる。
「それは、どうやって切り替えればいい?」
「ミヤコに『X線の波長に切り替えろ』というだけだ。矛盾した命令を出せばちゃんと聞き返してくる。たぶん」
X線は大気圏上層で速やかに消滅するので間違っても地上の人を傷つけないが、宇宙空間を弾道飛行する再突入体には減衰なしで当たり、機能を削ぐことができる。
実際の照射位置は大抵海の上になるのでさらに安全だ。
衛星の主コンピュータは高性能だがミヤコとの役割分担が判らない。
どちらの方が賢いかとミヤコに聞いたら
「アタイは頭が悪くて……勉強が全然できなくて。だから早くいい人のお嫁さんになりたくて一生懸命おめかし習って……」
ミヤコは何か物語を作っていた。
舜助に聞くと
「ミヤコは疑似人格的だが主コンピュータはプロセス的であり、違う性格の組み合わせに重要な意味がある」
といった。
もちろん何のことかわからない。
ターゲットの変更、波長の変更などミヤコに日常言語で言えば適切に解釈され、臨機応変に細かい変更が出来るようになっていた。
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