40 / 117
竜ノ39話「ワインレッドハンティングⅠ」
しおりを挟む「ワイバーン狩祭り?」
ジークは聞いたことがある魔獣と聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「危険度が跳ね上がった時期のワイバーンさ、今回は竜種に近い奴らだから専門家に同行してもらおうと思ってな」
スピカは水を飲みながら話を続ける。
「まぁ、本来はギルドの仕事だから、引き受けんでもいいよ」
「それは俺が普段狩っている竜とどっちが上なんだ?」
「そっちが相手にしてる竜が遥か上だ。あんたに比べたらこの仕事は、害獣駆除程度のものだ。ピクニックでも行く気分でも勝てる。なにせ相手はワイバーンのネームドだからな」
「んじゃあ、行こうか、暇だし、アルスマグナはどうする?」
「参りましょう、個人的にワイバーンが闊歩しているのは不愉快ですので」
「準備を頼む」
「必要なものは?」
「任せる、もし必要な物があれば言ってくれりゃこっちでも用意する。」
「日時と場所は?」
「十月二十五日にハイドラの宿に集合」
スピカは簡単に説明する。そのあと一息入れてから、話を続ける。
「言っても今回は祭りみたいなもんだ。年に一度ある祭りで、ワインレッド狩りって言うんだが聞いたことあるか?」
「ああ、それでしたか、もうそんな時期でしたか」
アルスマグナが納得した表情で頷いている。
「ワインレッド?」
「本来、ネームドは特異個体のことを言うんだが、ワインレッドは発情期に入ったワイバーンのことで、体色がワインレッドになることから言われている。発情期に入ったワインレッドは食欲が旺盛で大量の卵を産む。ワイバーンは多産でそれでいて危険度もそこそこの魔獣だから、この時期にまとめて一日で狩りを行う。一番多くのワイバーンを狩ったチームには賞金とかもらえる。出場権利として四人一組のチームを組まなければならない」
「ああ、だから俺たちに声が」
「そういうことだ、去年は緊急事態でワインレッド狩りが中止になってな、今年は例年の三倍以上のワインレッドがいる」
「緊急事態?」
「平穏のビサンティンがハイドラに停滞しちまった」
「ビサンティン!」
ジーク達が追いかけている七種の竜のうちの一種類である。
「今、ビサンティンはどこに?」
アルスマグナは声を少し荒げた。
「ギルドも追いかけていたが、パッツァーナで行方不明。追跡班の目の前で消えたんだとよ」
「そうですか……ビサンティンが関わっているのなら尚更ワインレッド狩りを行いましょう」
「話は以上だ。この後はどうする? いつも通り武術の稽古か?」
「いや、今日はアジサイと用事があるからパスで」
スピカは首を縦に振って了承を示した。
「すまないねジーク」
「いや、いいさ、アルスマグナもいつになくやる気だし」
「そうだね」
アジサイは、簡易的に作成したリローディングマシンを使って弾薬を作成している。
ジークは薬莢に水晶の粉を詰め、底部に雷管をセットする作業を手伝っている。
ワインレッドを狩るための弾薬をベルトと呼ばれる金具に弾薬を帯状につなげる。
「戦争でもするのかな」
ジークは冗談気味に言う。
「十万発は用意させているからね。王城の方にも手配を頼んでいる」
「十万かぁ……」
「今回はトリガーハッピーする予定だからね。起装の銃も寝かせたままだし、そろそろ使ってやろうなと」
「予算、大丈夫?」
「赤字」
「だよなー」
「ただ、アタッカーが俺しかいないから、弾切れは勘弁」
「そうなのか?」
「んああ、一応スピカと話した作戦だと、まず、ワイバーンの住むハイドラはエアーズロックみたいな真っ平らな一枚の大岩で構成されていて、そこに十万以上のワイバーンが群れを成して生息している。群れは典型的なハーレムで数頭のオスのワイバーンが数万頭のメスのワイバーンの構成になっている。厄介なのはこのメスのワイバーンは単為生殖が可能で卵を産めば子供が増える」
「だから狩るのか」
「イエス、それにワイバーンは肉食で人間ぐらいなら平気で襲う。飛行もできる」
「やべえ生き物だな」
「それで、発情期に狩りを行うのは、オスとメスの判別がつきやすいからなんだ。発情期のオスは青色になって判別が簡単になるんだ。オスを狩ると群れの崩壊につながってしまうから、オスは狩らないでメスのみを狩る」
「生態系に配慮しているのか、意外と考えているな」
「それになにより、ワイバーンは食味が良く、卵は珍味、内臓なんかも美味いらしい、スピカが言うには牛肉の風味と油に鶏肉の繊維質に近いとか」
「食うのかよ」
「塩漬けにしたのは割とどこにでもあるらしいな、冬に卵を産むためにこの時期は脂肪を蓄えて最高なんだとさ」
「なるほどな」
「祭りは狩猟したワイバーンの数で競うとかで、損傷があまりにも激しい物や、毒とか使うのは反則。状態良く、それでいて数を競う」
「意外とゲーム性が高いんだな」
「ゲーム性を持たせることで祭りを楽しくさせているんだろうな、本質は害獣駆除だが、ワイバーンはまず領土ハイドラに行くまでが大変なんだ。なにせ一枚岩を自力で登らねえといけないからな」
「俺とかお前なら空飛んで終わりだから楽か」
「そうだな、祭りは登山から始まって、制限時間以内に得物を開場まで持っていくまでで競う」
「なるほどな、じゃあ、大量に狩っても持ち帰れなきゃ意味がねえのか」
「一応、リフトがあって、安全に得物を降ろせるけど、滅茶苦茶込むらしい」
「何か妙案があるのか?」
「まず俺とジークとアルスマグナは登山を行い、崖にリフトを作成する。込み対策だな。リフトと言っても魔術駆動のエレベータみたいな感じのもので運搬できるようにする。俺とジークはワイバーンを狩るんだが、ジークが群れに突っ込んでワイバーンを追い立てて、俺が、銃を構えて待ち伏せして射撃を行い、ジークがワイバーンを回収する。地上ではスピカが、馬車にワイバーンを積み込む。上にいる奴らが地上に降りてから運搬を開始、会場まで運ぶという感じだな」
「流れはわかった」
「あと、ギルドの祭り全般に言えることだけど、かなりラフプレーがあるから、気を付けろとのこと。ワインレッド狩りも毎年死者が出ているからな。去年は途中で中止になったけど竜のビサンティンにやられた人間が結構いたらしい」
ビサンティン、アルスマグナの分魂のひとつで竜である。
ジークは今まで戦った竜を思い出し、納得する。
「そうだったのか」
「名声欲しさにビサンティンに喧嘩売ったら、母親でも顔が判別できないくらいグチャグチャにされたらしい」
「それといつか戦うのかぁ」
「ジークも化け物だから大丈夫だ」
「人間なんだよなぁ」
「鎖骨が切断されて十分くらいで回復する奴が何を言うか」
「うっぐ……それ言ったら、お前は昔から見えてる人間じゃねえか」
「霊感くらいあったって人間やろ」
「ふぁー、クソかよぉ」
アジサイとジーク、二人だけの時は会話の口調が適当になり、ついこの間までただの一般人だったことを思い出させられる。
「それに今は、あまり見えないしな」
「見えないのか」
「いないからね守護霊」
「ああ、そっか、守護霊の力を使って能力にバフをかけて今までは見えるようにしていたから、今はその守護霊がいないから無理なのか」
「そういう事、と言ってもあいつらの思いはこっちに持ってこれているみたい」
そう言いながらアジサイは装具の玉を取り出す。
「装具……ああ、そういう事だったのか」
「おそらくは、そういう事、なんだろうな、装具が出現するタイミングも一致するし」
「そうか……」
「まぁ、でも、いつか集まるよ」
「そうだといいな」
「さてと、一応、これで千発くらいは出来たな」
アジサイは背伸びをしながら椅子にもたれ掛かる。
「お、二時間くらいずっとこの作業してたからな」
「付き合わせて悪いな」
「いいさ別に」
「んじゃあ、早速これをぶっ放すぞい」
「じゃあ行くか」
「はいと言うわけで、無人島にやってきたが、うーん、釣りしたい立地」
アジサイたちは空中を渡って、人影のない無人島へとやってきた。大きさは直径五十メートル程度で、人目を気にせずに射撃ができる。
「んじゃあ早速、撃ってみるか」
アジサイは砂浜にあった流木を地面に突き刺すと、五十メートルほど離れた場所に布を敷き、アジサイはバイポットを立ててから銃を布の上に置く。
弾薬が詰め込まれたボックスからベルト状の弾薬を取り出して機関銃にセッティングする。
アジサイもうつ伏せになり、機関銃のストックを左肩にあてがう。左手でトリガーを持ち、人差し指で引き金を触る。
「撃つよ」
「あいよ」
アジサイは引き絞る様に引き金に力を入れる。
カチンと撃鉄が落ちるとこまで引くと引き金のテンションが解放されて、引き味が軽くなる。
ズドンと方に反動が伝わると弾薬は突き刺した流木を掠める。
「少しガク引きになってたな、ストックの場所をちょっと良くなかったな、修正っと……」
「もう少し、銃口を左に向ければ当たりそうだな」
「オッケー、やってみるよ」
アジサイは銃口の角度をわずかに左に付けると、再び発砲する。
放たれた弾丸は、流木に命中する。
「ナイス」
「思った以上に素直に飛んでくれる。今はセミオートだから精度が出ているけど本番はフルオートなんだよね」
「いけそうか?」
「やってみよう」
アジサイはフルオートにセレクター切り替えると、先ほどと同じ狙い方で引き金を引く。
連続した炸裂音と共に弾丸が流木を穿っていく。ほんの数秒で十発以上の弾丸が放たれていることが流木の損傷から見て取れた。
「うわ、これすげえ、気持ちいいわ、ジークもやってみる?」
「お、いいのか」
「いいよ、これは楽しい」
ジークとアジサイはポジションをチェンジする。
今度はジークが機関銃を発砲する。
「そうそう、そうやって、ストックを肩に当てて、それで引き金は軽く握る。安全装置は外してるから撃てるよ」
「おっし、じゃあ撃つぞ」
ジークは引き金を引くが、弾薬が発射されない。
「あれ? 何でだ?」
「ごめんジーク、ちょっといい?」
アジサイが機関銃を構えて、引き金を引く。
ズドンと弾丸が発射される。
「あれ、出るな……なんでだろう?」
再度ジークに銃を渡し、発砲を行う。
「よし、撃つぞ」
「オッケー」
ジークが引き金を引くと、やはり銃からは弾丸が発射されることはなかった。
「……これ、アジサイしか撃てないんじゃ」
「たぶん……」
「そりゃ、アジサイにしか発動できない武具なんだから、武器もアジサイしか使えねえわな」
「すまん、糠喜びさせてしまったな」
「しょうがねえよ、むしろ、この状況でこの事実を知れたことが重要かもな」
ジークは前向きなことをアジサイに言う。
「そうだな、ありがとう」
「んじゃあ、射撃訓練するか」
ジークとアジサイはワインレッド狩りに向けての訓練を開始した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる