恋のおまじない ~好奇心で自分に淫紋つけたら合法ショタになってた~

なきいち

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続・終章 日常へ

3 二人の日常へ

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来客用に出した茶器や菓子類、それに店内の清掃などを始めながら、ふと、ルーは気になったことを口にした。
「ねえ、ウォル」
「ん?」
「さっきバルト君、俺のこと『いい匂い』って言ったよね?」
「そういえば、そうだな」
「先生、バルト君は人の目を見て話すのをすごく怖がるって言ってたんだけど、俺が捕まってた時は全然そんなことなくて、普通に話してくれたんだよね。
ローブも脱いで俺に着せてくれたし。
大人じゃなければ大丈夫ってことかもしれないけど」
一緒に片づけをしていたウォルの手が止まる。
嗅いだだけで無条件に心を許してしまいそうな、〈いい匂い〉。
それには、ウォルも覚えがある。
淫紋によってルーが発する、フェロモン。
肉体的、魔力的、全てにおいてルーと極めて相性がいい者だけが感じ取れる、特殊な匂い。
(まさか……)
あの子供も、『つがい』の条件を満たす体質……?
「ま、まさかね。あははは」
「そ、そうだな。ははは」
二人は、感じた疑念を笑って誤魔化し、止まっていた片づけを再開する。
こんな話題の後に無言になるのは気まずいので、ルーは何とか適当な話題を探した。
「それより、レイも変なこと言ってたよね。防音に気をつけろって」
「窓は全部防音処理してるんだろ?」
その返答には『建物の外に声が漏れることはないはずだ』という意味が含まれている。
「ああうん。そうだけどさ、先生、ギルドのエージェントが護衛に来るかもって言ってたよね」
「言ってたな」
「レイとガリュオンさんのことだと思う?」
再び、手が止まる。
言われてみれば、条件は満たしている。
ギルドに就職していて、何故かこの街に引っ越してきて、どこまで知っているかはわからないがこの一件でルーが特殊な呪印を持っていることを知った『共犯者』たち。
「あれに"さん"付けは必要ないぞ」
答えがわからないというより、あれに護衛される自分というのを想像したくなくて、ウォルは話をそらした。
「ああうん……いやさ、護衛なら、近くで見張ってたりするのかな、って思って」
再び片づけを再開しようとしたウォルの手が完全に止まる。
ある。ありえる。
いやな汗が噴き出してきた。
もしそうだとしたら、あの日や夜の"お楽しみ"を聞かれて……?
「聞かれてたと、思う?」
「お……」
片づけを放り出し、ウォルはルーの手を取った。
「オレはあいつらよりずっと、ルーのことを大切に思ってる! 両親にだって会いに行くし、もうこの街にいられないって言うなら夜逃げだって」
「ちょ、ちょっと飛躍しすぎ!
俺だってまだ両親に打ち明ける心の準備はできてないし、夜逃げなんてするつもりもないよ」
「そ、そうか。すまん」
「もう」
握られた手が緩むのを、ルーが引き留める。
大きな手の上からそっと手を重ねて、ウォルの目を見上げて言った。
「ウォル、ありがとう。大好き」
まだ少しもじもじしてしまうが、あの日以来、いくらか素直に言えるようになったその言葉を。
「ルー!」
「うわぁっ!ちょっと、急に持ち上げないで!」
ウォルは愛しい人の小さな体を持ち上げて、ぎゅっと胸の内に抱きしめる。
「もう、バカ」
「へへへ、オレも大好き。ルー」
(ガリュオン君といい勝負じゃないか)
ルーは心の中で苦笑して、ゴロゴロと頬を寄せてくる大きな猫の頭を撫で返した。

この先、いろんな事があるだろう。
同じ日なんて二度と来ない。
だとしても、この人の隣で続いていく時間こそが自分の日常なのだと、二人は同じことを思っていた。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

アライグマ
2021.11.14 アライグマ
ネタバレ含む
2021.11.14 なきいち

ありがとうございます。
どうにか書き上げることができました。

今は燃え尽きていて続きや番外編の構想は皆無ですが、また何かのきっかけで二人の日常を描くことがあるかもしれません。
その時はまた、彼らのいちゃつきを見守ってくださいませ。

解除
アライグマ
2021.11.02 アライグマ

ん〜合法ショタ最高です!
ルーの少しツンツンした所やヒートの時に甘えたりする所がとても刺さりました
これから2人の関係がどんなふうに深まって行くのかがとても楽しみです

そして今回の第9回小説BL大賞でこの小説に投票させて頂きました
これからも更新楽しみにしています

2021.11.02 なきいち

感想ありがとうございます。

書いてる途中で不安になったりすることもあるので、刺さって貰えて大変うれしく思います!
ご期待に沿えるよう、精一杯書き上げていこうと思います。

投票もありがとうございました!

解除

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