ジンクス∞漁猫∞~君と僕の物語

はらぺこおねこ。

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02 歌うこと

06

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「そんなのずっこいです。
 私も歌ったのですから、斉藤くんも歌うべきです」

 川名さんが、力を込めてそういった。
 仕方がない、歌うか……
 そして、僕の歌を聞いて絶望と後悔の果てに苦しむがいい。

 僕は、ゆっくりとギターを奏でそして歌う。

「五月雨は――」

 僕が歌ったのは、村下孝蔵さんの【初恋】だ。
 知らないだろう?
 知らないだろう?
 知らない歌のほうが音痴と感じられる可能性が低いしね。
 父親が昔の歌とか好きだったから僕は知っているんだ。
 はは!音痴なのがばれないように……
 僕は、下手にうたった。

「村下孝蔵さんの歌ですか?」

 なのに川名さんは知っていた。

「川名さんどうして知ってるの?」

 この歌は、今の若い子には知名度が低いはずなのに……
 おじさんの青春ソングなのに……
 どうして知っているんだ?

「私が好きだった人が、この手の歌が好きだったんです。
 よく聞かせてくれていました」

「そ、そう……」

 僕はショックだ。
 この歌を知られていたことが……
 これだと僕の音痴がバレてしまう。

「斎藤さん」

「うん」

「声の質はいいと思います。
 なので、あとは練習しましょう!」

 川名さんは僕の歌をバカにしなかった。
 もしかしたら、そんなに悪い人じゃないのかもしれない。
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