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02 歌うこと

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 暫く歌を歌いながら歩いていると僕らの制服とは違う制服を着た男が数人、僕たちの前に現れる。

「よう……」

 僕らは気付かなかったことにしてそのまま通りすぎようとする。
 するとその男のひとりは、僕の肩を掴みひっぱると僕の顔を一撃殴った。
 痛い……

「なにするんですか?」

 川名さんが少し怒っている。
 僕も怒っている。
 だけど、僕は喧嘩が弱い。

「ここ誰の道だと思っている?
 通りたければ通行料払え!」

 僕を殴った男、自信満々にそう言った。

「多分、市道か国道……」

 僕が、そう答えると再び男は拳を上げる。
 僕は目を閉じる。
 喧嘩でやってはいけないことの一つ。
 殴られるときに目を閉じてはいけない。
 僕は、それをやってしまっていた。

「ここは、俺の道だ!」

 そして、その拳が僕にあたろうとしたとき。
 その拳は、僕には当たらなかった。
 痛くない?
 僕は、目を開けたときそこには護がそこにいた。
 護が、その男の拳を掴みそして睨む。

「おい!お前……
 俺の友だちに何しているんだ?」

 護が、そう言うとその男たちの仲間が護を囲む。

「おい、お前……
 誰に手を出したかわかっているのか?
 俺は、議員の息子だぞ!
 こんなことしてただで済むとは思わないよな?」

「どうなるんだ?」

「決まっているだろう?
 俺に逆らう奴は絶対に許さない!」

 男たちがケラケラ笑いながら川名さんとの距離を近づける。

「か、川名さんから離れろ!」

 僕は勇気を振り絞って言った。
 すると他の男がバッドで僕の頭を殴る。

「一!」

 護が、僕の名前を呼ぶ。
 しかし、僕の意識はそこで途切れる。
 あぁ、僕ってなんでこんなに無力なんだろう。
 情けないや。
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