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07 漁猫

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 そうそれでいい。
 みさきさんがしあわせなら、それでいいんだ。

「私は、一くんにもしあわせになって欲しいです」

「だって私は、一さんのことが……」

 みさきさんのその言葉だけで僕はしあわせになった。
 そうそれでいいんだ。

 みさきさんもすぐに良い人が現れて……
 しあわせになる。

 好きな人がしあわせになるのなら……
 僕は、それでいい。

 それでいいんだ。
 なんか気まずい空気になる。
 すると葉月先輩が、手を叩く。

「キース、キース、キース」

「は?」

 葉月先輩が顔を赤らめてそういっている。
 すると蜜柑ちゃんも手を叩く。

「キース、キース、キース」

 宮崎さんは小さな声でこう言った。

「キスが挨拶の世界もあるから別にいいんじゃないかしら?」

「……そっか」

 僕は、みさきさんの顔を見る。
 顔が近い、みさきさんの方から近づいてくれていた。
 みさきさんの吐息が僕の顔に当たる。
 そして、僕は……
 生まれて初めてのキスをした。
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