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01 その男係長!

その男係長その4

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 王次たちは、会議室に入る。
 会議室には数人の警察官たちが座っていた。
 そして、一番後ろの席に座る。
 するとひとりの男が、亜金の前に立つ。
「アンタが亜金か?」
 男は、そう言うと亜金が頷く。
「はい……そうですが……」
 亜金に緊張感が走る。
「俺んとこもうすぐ子供が産まれるんだ。いっちょ拝ませて貰ってもいいか?」
「えっと……」
 亜金が、少し困った顔をする。
「お祈りをする時は、お賽銭を渡さなきゃダメよ。一回5円から……」
 心がぼそりと呟く。
「あ、了解」
 男は、そう言うと財布から5円玉を取り出すと亜金の前に置いた。
「子供が元気に生まれますように……」
 男は、そう言って手を合わせた。
 すると他の警察官も亜金の前に群がる。
 そして、それぞれの願いごとを言ったあと自分の席へと戻った。
「これがあるから会議室に来るの嫌なんですよー」
 亜金が、泣きそうな顔で言った。
「亜金ちゃんガンバ!」
 心が、ぼそりと言うと亜金がため息をつく。
「どうするんですかー?この5円玉……」
「亜金ちゃんお金持ち!いち、にー、さん――えっと、全部で24枚あるね!」
「120円……缶ジュースすら買えない」
「消費税万歳ね」
心が、笑う。
「お前ら、署長が来たぞ」
和久が、そう言うと平仮名署の署長が前に立つ。
「えー。今回は、極秘の調査で進めてもらっているのには訳がある。今回の一連の事件の容疑者である橘勤……
 知っているとは思うが彼は、衆議院の橘議員の息子である。橘議員は、息子の犯行を揉み消しているが川名みゆきへの犯行は許されない。DNA鑑定でも橘勤が犯人である可能性は非常に高い。だが、このまま捜査を進めても橘勤を逮捕することは出来ないだろう。圧力をかけられる可能性の方が高い!よって先ほども述べたように今回の件は、極秘に進めて頂きたい」
 署長は熱く語るとゆっくりと椅子に座った。
「では、今までで調べた情報を発表して頂きたい」
 副署長が、そう言ってその場にいる刑事たちの顔を見る。
 刑事たちの顔は、橘勤への怒りの表情に満ちていた。
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