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02 亜金の友達

亜金の友達その2

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「そういうことじゃないんだけどね……」
 一が、ため息混じりにそう言った。
「うん?」
 亜金は、首を傾げた。
「なんでもない……
 それより、あそこにいる女の子たちの相手をしてあげて」
 一が、そう言って女子高生の群れの方を見た。
「え……でも……」
「相変わらず嬉しくないモテ方してるね」
 一は、苦笑いを浮かべながら亜金の方を見る。
「全く嬉しくないよ。これって別にモテてる訳じゃないしね……」
「不食の力かぁー僕にもそんな力があればなー正義の味方になれたのに……」
「正義の味方?」
「うん。悪い奴らを倒す力だよ」
「そんな大きな力持ってないよ」
「えっと亜金くんって『自分に触れようとする全てのものを武器に変える』って能力も持っているよね?あれ、かっこいいよ」
「そうかな?ありがとう」
「じゃ、僕はこれで失礼するね」
「うん。また話そう」
「うん。また話を聞いてね」
 一は、そう言い残すと席を立ち喫茶店を出た。
 それと同時に女子高生が小走りに亜金に近づいてくる。
「亜金さんですか……?」
「うん。君はどんな悩みを持ってるんだい?」
「えっと実は――」
 女子高生は、ひとりずつ亜金に悩みを相談しスッキリした顔を浮かべその場を去っていく。
 その日、亜金は34人の話を聞いた。
「ふぅ……少し疲れたな」
 亜金が、そう言うと喫茶店のマスターである萌がテーブルの上にコーラーを置いた。
「はい、これは私の奢り」
 萌がニッコリと笑う。
「あ、萌ちゃんありがとう」
「いえいえ、亜金くんにはいっぱい稼がせてもらってるからね。本当はお金を包みたいくらいだよ」
 萌は、ニッコリと微笑むと迎えのテーブルに座った。
「あはは、そういうの受け取ったら会社クビになっちゃうかも……」
「うん。ってか亜金くんえらいね」
「え?どうして?」
「だって、私だったらその能力悪用しちゃうな」
「悪用って……そんな悪いことに使えれる能力じゃないよ」
「えー。いっぱい使いようがあるんじゃない? その能力を活かして女の子を抱く!とかさ……」
 その言葉を聞いた亜金は、困った様子で言葉を放つ。
「えっと……俺に抱かれた女の子は不幸になるじゃん?」
「でも、不幸は食べてくれるんだよね?」
「うん。だから、僕が不幸を与える側になると与えられた人は幸せと不幸に押しつぶされて死んじゃうらしい」
「え?」
 萌が目を丸くさせて驚く。
「なんかね、ギフトのカウンセリングの時に言われたんだ。不食の能力を持った人はこれまでに何人かいたんだけど、そういう結果になったらしいよ」
「怖いんだね……」
「うん。でも、それは別に亜金くんに惚れる女の子は今までにいなかったの?」
「うーん。今までは好きな人がいること前提で相談しに来てくれるからね。それでもって成功率は高いわけだし……俺が相手になることなんてまずなかったよ」
「そっかーでも、きっと現れるよ亜金くんのことを好きになってくれる人が……」
「そうだといいなー」
「ってか、職場にいないの?同僚とかさー」
「いないよ。好きな人がいる状態で俺の前に現れてるけど……」
「不食って、亜金くんが好きになればなるほど効果が現れるんだよね?」
「うん。俺が惚れれば全ての不幸を食べれてそれどころか幸運がやってくるよー。これは痛いほど経験している」
「『好きになった女の子は別の男の人と幸せになる』というジンクスって、そこからやってきてるの?」
「え?どうしてそのジンクスのこと知ってるの?」
「だって、私も亜金くんの幼なじみのひとりだよー?それくらい知ってるよー。あとこの手の情報は、亜金くんの不食の能力とセットになって知られてるよー」
「そうなんだ……?じゃ、このラブレターも……」
亜金は、一枚のラブレターを手にとって萌に見せた。
「それは、なんともいえないなぁー」
 萌がそういったものの答えは出ていた。
「ああ……俺にも彼女できないかな……」
「一応言っておくけど女子高生に手を出したら犯罪だからね」
「わかってるよ……」
 亜金は、そう言ってストローでコーラーを口に運んだ。
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