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02 亜金の友達

亜金の友達その6

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 亜金は、玉藻を訪ね地域安全課に向かった。
「あらー?亜金くんじゃない?」
地域安全課の女子警察官が亜金の方に近づく。
「あ、ユキさんこんばんは。玉藻いますか?」
「もしかして玉藻ちゃん狙い?」
 ユキは、残念そうに肩を落とす。
「えっと……」
 亜金は、どう対処していいかわからない。
「私がお相手しようか?
 たまにはお姉さんの相手もいいものよ?」
 ユキが、楽しそうに笑う。
「ユキさんごめんなさい。今日は玉藻に特別な用があって……」
「あら?お姉さんもしかして失恋?」
「え?」
 亜金、一瞬固まる。失恋という言葉に反応してしまった。
「冗談よ。お姉さんは亜金くんの幸せを祈るわ」
「幸せ?」
「愛した男の幸せを祈るのが女って生き物よ」
「愛……ですか」
 聞きなれないことばに亜金は戸惑う。
「亜金……?どうしてこんなところに来ているんだ?」
 玉藻が現れ亜金の方を見る。
「えっと……ご飯にでも誘おうかなと思って……」
 亜金が照れながらそう言うと玉藻が顔を赤らめて答える。
「いいのか?私なんかで……」
「あら、亜金くんよく言えました!
 ご褒美にお姉さんがキスしてあげようか?」
 ユキが照れながらそう言うと亜金が目を丸くさせる。
「え?キス?」
「そうキス、唇と唇が重なり互いに粘液を絡ませ合う。
 そんな濃厚なキスをお姉さんが教えて、ア・ゲ・ル」
「えっと玉藻、仕事はいつ終わる?」
「いや、まだ書類整理が残っていて時間がかかる」
「そっか……
 じゃ、待たせてもらうよ」
 亜金が、そう言うとユキが優しく微笑む。
「またなくて良いわ。
 その仕事、私がやっとくわ」
「え?ユキさんでも……」
 玉藻が、少し困った顔をしている。
「困った後輩を助けるのもお姉さんの仕事よ」
 ユキがそう言って腕まくりをすると後ろにいた生活安全課の警察官がニッコリと笑う。
「そうだぜ?亜金!たまにはいい思いしてこいよ!
 玉藻ちゃんの仕事は俺らも手伝う!」
「そうだぜ?俺らいつも亜金の能力に助けてもらってるからな!」
「行って来い!亜金!」
 生活安全課のメンバーは、そう言って亜金にエールを送った。
「ってことで玉藻ちゃんは亜金くんと楽しんできてね」
 ユキが、そう言って玉藻にカバンを渡した。
「あ、ありがとうございます!」
 玉藻は、嬉しそうに笑った。
「あ、ラブホテルの割引券いる?」
 ユキの一言に周りは爆笑した。
「い、いりません!」
 亜金と玉藻は、声を合わせて言った。
 するとユキは口を尖らせながら言った。
「もう、ウブなんだから……」
 そして、ふたりは警察署を出た。

――同時刻

 一は、震えながらとあるビルの上に立っていた。
 そして、もうひとりそこに男がいた。
 拝司だった。
 拝司は、一につめよる。
「警察にチクりやがったな?」
「貴方、詐欺師だったんですね!
 お金はもう払いません!」
「ああ、いいぜ?金はいらねぇ!」
「だったら、なんのようなんですか?」
「お前を殺しに来たんだよ!お前を殺せば多額の保険料が入るんだろう?」
「え……?」
「自分になんかあった時、婆さんに保険金が行くようにしてるんだろう?
 俺がその保険金を根こそぎ貰うってわけだ!全て計算済ですべて見えるんだよ!」
 拝司は、そう言ってナイフを取り出す。
 一は、恐怖した。
 殺される……そう実感した。
 一が逃げようとするがそこは屋上の上、逃げる場所などなかった。
 薄暗いビルの屋上、拝司の笑い声だけが響いた。

次の日、ビルの下で横たわる青年の遺体が発見される。
青年の名前は、斉藤 一。
亜金の幼なじみだった。
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