上 下
20 / 61
03 増えない友達

増えない友達その1

しおりを挟む
――翌日・大阪府平仮名警察署刑事課強行犯係


「亜金ちゃん、亜金ちゃん、亜金ちゃん!」
 心が亜金に嬉しそうに近づく。
「お金なら無いですよ?」
 亜金が、即答する。
「そんなの聞いてないわよ。
 で、玉藻ちゃんといいコトしたの?」
「いいコト?」
 亜金が首を傾げる。
「あんなことやそんなことよ!」
 心がじれったそうにそう言うと亜金はニッコリと笑う。
「あ、懐かしいですね。
 思い出のアルバムですか?」
「亜金ちゃん、1回思いっきり殴ってもいい?」
 心が、ニッコリと笑う。
 すると和久が、心の頭をポンポンと叩く。
「それ以上はセクハラになるんじゃないのか?」
「えー。痴話話じゃないの?」
「亜金が困っているじゃないか」
「私は、私なりに亜金ちゃんの緊張をほどこうと……」
「なんの緊張だ……?」
 和久がため息混じりに尋ねた。
「だって単独行動で犯人を襲うって処罰者じゃない」
 心がそう言うと王次が、答える。
「あ、その件だけど亜金君、昼休み明けに署長室に来て欲しいそうだよ」
「え?まさかクビ?そんなことしたら私、署長を呪うわよ」
 心の目が殺気に満ちる。
「クビじゃないと思うよ?」
 王次が、のほほんとした口調で答える。
「え?そうなの?」
 心は目を丸くさせて驚く。
「だって、犯人の逮捕に協力してくれたんだもん」
「でも、単独行動は……」
 心がそう言うと王次が笑う。
「それは、刑事の心得、亜金くんは刑事じゃないもんね。
 どちらかと言うと民間人、派遣会社から無断欠勤で怒られることはあっても署長直々に処罰というのはないよ」
「言われてみればそうね」
 心が、そう言って安心した口調で頷いた。
「ってか、そろそろ昼休み終わるぞ?」
 和久が、そう言うと亜金が慌てる。
「あ、じゃ……今すぐ署長室に行ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
 心がニッコリと笑って手を振った。


 それから30分後亜金は賞状を持って帰ってきた。
「お?なんだそれは?」
 和久が、亜金に尋ねる。
「感謝状だそうです」
「ほう……
 ということは……」
「はい、金一封も出ました」
「ほう……いくらだ?」
 和久が、ニヤリと笑う。
「わかりません。
 今から封筒を開けます」
 亜金は、そう言って封筒を開けると1枚のお札を取り出した。
 強行犯係のみんながじっと亜金の方を見る。
 亜金が、残念そうに答える。
「5000円……」
 すると強行犯係のメンバーたちが爆笑する。
「良かったじゃねぇか!
 大金だぞ!」
 和久が、そう言って亜金の肩をポンポンと叩く。
「私たちは、犯人捕まえても500円とかよ?」
「あれ?でも、この間焼き肉を食べに行ったんじゃ……?」
 亜金が、そう言うと王次が答える。
「あれは、署長の粋な計らいだよ。
 言ってしまえば署長の自腹だね」
「そ、そうだったんですか」
「まぁ、なんだ……
 それで玉藻ちゃんとなんか美味いものでも食べてこい」
 和久が、そう言って自分の席に戻った。
「マクドにでも誘おうかな……」
 亜金がボソリと答えた。
 心がため息をつく。
「せめて居酒屋にしなさいな」
 心のアドバイスを受け亜金は、玉藻にメールを送った。
しおりを挟む

処理中です...