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05 奇跡を奏でるもの

40 ヒーローだから

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 キサラギの表情が和らぐ。
 ただそれだけでセロは救われた気がした。

「邪魔するよー」

 その声とともに現れたのは秋夫だった。

 セロが構えることすらできず驚いてしまった。

「コード893!?」

 セロが、思わず口走る。

「そうだけど俺の名前は南秋夫っていうんだ。
 そっちの名前で呼んでもらえるかな?」

 秋夫がため息混じりにそういった。

「で、その秋夫さんが何のようですかね?」

 キサラギが尋ねた。

「俺ぁは、なかなかの情報通でね。
 取引きをしないか?」

「取引き?」

 キサラギがそういうと秋夫が指を鳴らす。
 すると怪我だらけの赤服たちが現れる。
 意識を失っているもの。
 血を流しているもの。
 沢山、沢山いた。

「こいつらの治療とまでは望まないが一時的に保護してやってくれないか?」

「で、保護をしたら君はなにをしてくれるんだい?」

「オトネちゃんだっけ?
 嬢ちゃんの居場所を教えてやる。
 なんなら連れて行ってやってもいいぞ?」

「……え?」

 セロがさらに驚く。

「秋夫さんは、どうやってその情報を?」

「言っただろう?俺ぁは、情報通なのさ」

 秋夫が、そう言ってキサラギの目を見る。

「ってか、この赤服たちは誰にやられたんだ?」

 セロの言葉に秋夫が空に指をさす。

「テオスですか……
 デオスがオトネさんを誘拐したことはわかっているんですよ」

 キサラギがそういうと秋夫が床に頭をつける。

「このとおりだ。
 こいつらを保護してやってくれ」

 するとキラサギが言葉を返す。

「なにをいっているんですか?
 そんなの当たり前じゃないですか」

「え?」

 セロはキサラギの方を見る。

「セロくんは、どうしますか?」

「俺はオトネを助けたい。
 でも、キサラギさんはどうしてこいつらを保護するんですか?
 そんな義理はないですよね?」

 するとキサラギが笑う。

「私はヒーローですからね」

 セロには理解できない言葉だった。
 ヒーローは最後には裏切る。
 それがセロの中のヒーローだったからだ。
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