喫茶★失恋

はらぺこおねこ。

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05 にょ

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 部屋には、眠っているママと私が二人。
 看護婦さんの足跡は聞こえるけど、入ってはこない。
 私は、そっとママに触れてみた。

 冷たい。

 ひんやりとした部屋に私と二人。

「君のママは、死んだんだよ」

 誰も居ないはずの部屋の中でその声が響いた。
 私は、振り返る。

 そこには、知らない男の子が立っていた。

「君のママは死んだんだよ」

 男の子はもう一度繰り返した。

「にょにょ?」

 男の子は、苦笑いを浮かべながらこう言った。

「『にょにょ』って何語だよ。」

 男の子は、部屋に入りママの顔にハンカチを乗せると手を合わせた。

「にょ!?」

 何をするの?と私は言いたかった。
 でも伝わるはずも無い。

「もしかして、お前は『にょ』しか言えない
 にょにょにょ星人か!?」

 男の子は、そう言うと体を構え、私の頭にチョップをした。
 痛い。
 痛いときに痛いって言えたら幸せだろうな。
 私は、「にょー」
 と叫んだ。

 私の言葉を理解してくれる存在は、もう居ない。
 パパは、私の言葉を理解してくれなかったけど。
 ママは、私が何を言っても理解してくれた。

 もう、ママはいない。
 そう思うと、涙が流れた。

「なんだよ、何泣いているんだよ・・・」

 男の子は、そう言うと、頭を撫でてくれた。
 男の子の姿をもう一度確認すると、パジャマを着ていた。
 男の子は入院しているのだろうか?

「ごめん、泣くなってコレをあげるから……」

 男の子は、そう言うとクマのキーホルダーをくれた。

「にょー」

 私は、ありがとうって意味で言ったけど伝わったのか伝わってないのか、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。

「俺の名前は、斉藤 博。
 お前の名前は?」

「にょにょにょ」

 男の子は、困った顔で答えた。

「うーん。何が言いたいのかわかんない。
 もう、『にょにょにょ星人』で良いかな?」

「にょにょにょ!にょにょにょにょにょ!」

 私は、抗議した。
 そんな、あだ名は、嫌だ。

「やっぱ、ダメか?
 じゃ、なんて呼べば良い?」

 私は、考えた考えて考えて考えた結果。
 指で文字を書いた。

 ひ

 と

 み

「わかんない、もう一度」

 ひ

「ひ?」

 と

「と?」

 み

「み?」


「ひとみ!」

 私は、コクリと頷いた。
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