喫茶★失恋

はらぺこおねこ。

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05 にょ

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 ママは、小さな小さな箱に閉じ込められました。
 蓋を開けようとしたら、お坊さんに叱られました。

 どうして?私、悪い事をしていないのに……

 ママは、小さな小さな箱の中。
 出してあげることも姿を確認することも出来ません。

 ママは何処に行ったの?
 博くんに聞いたけど「わかんない」と答えました。

 少し悲しかった。
 博君の言った「わかんない」は、【ママが何処に行ったのか】が、分からないのではなく。

「私の言葉がわかんない」

 なのだから。
 それでも、博君は一生懸命、私の話を聞いてくれたので嬉しかった。

 ありがとう。

 先生が、私の体を抱き上げると私にこう言いました。

「今日から、先生が貴方のお母さんよ」

 私には、ママがいる。
 ママがママではなくなって先生が【お母さん?】
 意味がわかんない。

 私は、詳しく聞きたかったけど言葉は、通じませんでした。
 私は、言われるがままに手を引かれ。
 言われるがままについて行った。

 そこは、孤児院。
 そこは、ひなた院。

 ついた頃には日が暮れていた。

 夕日に照らされた院は、眩しかった。

「お前誰だ?」

 知らない男の子に声を掛けられた。

「にょにょにょ……」

 言葉が出ない。

「にょにょさん?」

 続いて、知らない女の子が、その男の子の影からひょこりと顔を出す。

「この子は、有得 瞳ちゃんよ。
 みんな、仲良くね」

 先生が、そう言うとみんなは、「はーい」と返事をした。

「こいつは、病気で、『にょ』しか話せないんだ…
 だからって、苛めたらダメだからな!」

 博くんは、私の体を持ち上げてそういった。

 みんなは、しーんと、静まりかえった。

「にょにょにょ?にょにょにょにょ…
 にょにょにょ!」

 言葉が出ない。
 私は一生懸命、挨拶をした。
 だけど、誰一人、私の言葉を理解できる人はいなかった。
 子供たちは、少しずつ散り散りになり、各自仲の言い子達と遊び始めた。

「大丈夫、少しずつ慣れて行くさ……」

 博くんは、そう言うと、私の頭をくしゃりと撫でてくれた。
 博くんは、「じゃ、俺用事があるから」
 そう言うと、博君は部屋を出て行った。
 私は、奇妙な目で見られていたが、気にしないことにした。

「あいつ、絶対おかしいって……」

 私は、その声の方を見た。

「うわ、こっち見た。
 にょにょにょが移るぞ、逃げろー」

 男の子たちは、そう言うと走って部屋を出て行った。

「……にょ」

 すると、女の子が話しかけてきた。

「貴方、本当に『にょ』しか話せないの?」

「にょにょにょにょにょ!にょにょ!
 にょにょにょ!」

 私は、一生懸命身振り手振りで伝えようとした。

【よろしくお願いします】

 って言いたかった。

 だけど、伝わらなかった。
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