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07 ホワイトディ・キッス
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運動部と文科系。
体力の差はあった。
文化系でも体力のある人はいる。
龍一も持久力には自信があった。
でも、脚のスピードには自信がない。
追いかけても追いかけても距離は縮まない。
そして、先程の大学生の姿が見える。
公園を一周したのだ。
「ん?」
大学生が公園のベンチで不思議そうに龍一の姿を見ている。
目が合った。
でも、なにも言えない。
色んな考えが龍一の脳裏をよぎる。
でも、次第に思考は停止する。
蘭もそうだ。
なにから逃げてなにから逃れたいのか。
わからない。
――2時間後
ふたりはまだ走っていた。
しびれをきらせた大学生が走る蘭の腕を掴む。
「え?」
蘭は我に返り驚く。
「いい加減にしろ!死ぬぞ!」
「なんですか?私のことなんか放っておいてください!」
「いや、死ぬのは彼氏だぞ?」
蘭の思考が停止する。
「彼氏?」
蘭は息を切らせて死にそうになっていた龍一の顔を見る。
「あ……龍一くん」
龍一は、その場で倒れた。
息を切らせて息が切れたのだ。
――30分後
龍一は目を覚ます。
そこには見知らぬ白い天井があった。
白いシーツに寝心地が良いとは言えないベッドの上に横になっているのはわかる。
「あ、目を冷ました?」
蘭がそういって安心したような表情を浮かべた。
「あ、ここは?」
「病院だよ」
「病院?」
「うん、チャラい人が龍一くんをオンブして病院に運んでくれたんだ」
「そうなの?」
「うん」
「悪い人じゃなかったんだ……」
龍一は小さく笑う。
「滅茶いいひとだよ。
お父さん、ここの院長なんだって」
「凄いな……」
龍一は小さく笑う。
「うん、すごいね」
蘭も笑う。
「龍一くん、今日はここに泊まりだって」
「そうなの?」
「うん。ご両親や学校の先生にはもう病院の人が連絡してくれたよ」
「そっか」
「私も泊まっていい?」
「え?」
蘭は勇気を出した。
心臓が飛び出るくらい勇気を出した。
ここは病院なので、心臓が飛び出てもなんとかなると思った。
「……うん」
「今日は寝かさないぞ」
蘭はそういって笑った。
「え?」
「変な意味じゃないからね」
「あ、うん」
龍一は少しがっかりした。
でも、嬉しかった。
好きな人と、たくさん話せた。
そんな1日もあってもいいと思った。
ふたりはお互いの知らない話を語った。
でも、どこかで聞いたような話だった。
蘭は龍一の練習姿を。
龍一は蘭の頑張る姿を。
ずっと見ていたから……
お互いずっとずっと好き同士だった。
それを感じたふたりは、どこか切なく。
そして、暖かかった。
目と目が合う。
そして、そっとふたりはキスをした。
ホワイトディ・キッス
ふたりが結ばれた瞬間だった。
そんなふたりの姿を見ることなく諦める少女がいた。
歩だ。
切なく思う。
紙に書いたら伝わるのか。
言葉にしたら伝わったのか。
伝わっても切ない思い。
なにも無くなった。
だけど軽くなった。
ずっと好きだった人がずっと好きだった人と結ばれたのだ。
それが自分じゃないことに腹を立てていばるほど。
子どもになれなかった。
そんな自分に笑うしか出来ない。
もう2度と誰かのことを好きにならない。
そう決めた。
そう思ってもまた誰かのことを好きになるのだろう。
歩みはそう思って月を見上げた。
紅く光る月が綺麗だった。
ただただ綺麗だった。
体力の差はあった。
文化系でも体力のある人はいる。
龍一も持久力には自信があった。
でも、脚のスピードには自信がない。
追いかけても追いかけても距離は縮まない。
そして、先程の大学生の姿が見える。
公園を一周したのだ。
「ん?」
大学生が公園のベンチで不思議そうに龍一の姿を見ている。
目が合った。
でも、なにも言えない。
色んな考えが龍一の脳裏をよぎる。
でも、次第に思考は停止する。
蘭もそうだ。
なにから逃げてなにから逃れたいのか。
わからない。
――2時間後
ふたりはまだ走っていた。
しびれをきらせた大学生が走る蘭の腕を掴む。
「え?」
蘭は我に返り驚く。
「いい加減にしろ!死ぬぞ!」
「なんですか?私のことなんか放っておいてください!」
「いや、死ぬのは彼氏だぞ?」
蘭の思考が停止する。
「彼氏?」
蘭は息を切らせて死にそうになっていた龍一の顔を見る。
「あ……龍一くん」
龍一は、その場で倒れた。
息を切らせて息が切れたのだ。
――30分後
龍一は目を覚ます。
そこには見知らぬ白い天井があった。
白いシーツに寝心地が良いとは言えないベッドの上に横になっているのはわかる。
「あ、目を冷ました?」
蘭がそういって安心したような表情を浮かべた。
「あ、ここは?」
「病院だよ」
「病院?」
「うん、チャラい人が龍一くんをオンブして病院に運んでくれたんだ」
「そうなの?」
「うん」
「悪い人じゃなかったんだ……」
龍一は小さく笑う。
「滅茶いいひとだよ。
お父さん、ここの院長なんだって」
「凄いな……」
龍一は小さく笑う。
「うん、すごいね」
蘭も笑う。
「龍一くん、今日はここに泊まりだって」
「そうなの?」
「うん。ご両親や学校の先生にはもう病院の人が連絡してくれたよ」
「そっか」
「私も泊まっていい?」
「え?」
蘭は勇気を出した。
心臓が飛び出るくらい勇気を出した。
ここは病院なので、心臓が飛び出てもなんとかなると思った。
「……うん」
「今日は寝かさないぞ」
蘭はそういって笑った。
「え?」
「変な意味じゃないからね」
「あ、うん」
龍一は少しがっかりした。
でも、嬉しかった。
好きな人と、たくさん話せた。
そんな1日もあってもいいと思った。
ふたりはお互いの知らない話を語った。
でも、どこかで聞いたような話だった。
蘭は龍一の練習姿を。
龍一は蘭の頑張る姿を。
ずっと見ていたから……
お互いずっとずっと好き同士だった。
それを感じたふたりは、どこか切なく。
そして、暖かかった。
目と目が合う。
そして、そっとふたりはキスをした。
ホワイトディ・キッス
ふたりが結ばれた瞬間だった。
そんなふたりの姿を見ることなく諦める少女がいた。
歩だ。
切なく思う。
紙に書いたら伝わるのか。
言葉にしたら伝わったのか。
伝わっても切ない思い。
なにも無くなった。
だけど軽くなった。
ずっと好きだった人がずっと好きだった人と結ばれたのだ。
それが自分じゃないことに腹を立てていばるほど。
子どもになれなかった。
そんな自分に笑うしか出来ない。
もう2度と誰かのことを好きにならない。
そう決めた。
そう思ってもまた誰かのことを好きになるのだろう。
歩みはそう思って月を見上げた。
紅く光る月が綺麗だった。
ただただ綺麗だった。
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