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03 魔法使いと秘密な彼女

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 俺は、あえて橘さんの名前は出さなかった。
 そう、俺の中ではもう橘さんは『誰か』なんだ……

 心の底では認めたくなかったのかも知れない。
 初めてデートして、初めてキスをして腕を組んだ。
 女々しいって言われるかも知れないけど……
 それが、俺なんだ……

 そして、数日後。

 俺は再び病院に呼ばれた。
 そこで橘さんと会った。

「ごめんなさい」

 橘さんは、小さな声で謝った。
 俺は、なにも答えなかった。
 何を言えばいいのかわからない。
 どうしたらいいのかもわからない。
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