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03 バケツのお月さまひとつ

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「そっかー」

 万桜がゆっくりとうなずきます。

「僕がもっと早く……
 もっと強くなれていたら……」

 亜金が、嘆きます。
 すると万桜がいいました。

「アナタってプラス思考なのね」

「え?」

 亜金が驚きます。

「だってアナタがもっと早くきていたからと言って玉藻ちゃんが助かっていたという保証はない訳でしょう?」

「そうだけど今より良い結果が出ていたかもしれない」

「そうね、でも。
 もっと悪い結果になっていたかもしれない」

 万桜がそういうと亜金はうつむいた。

「どちらにせよ僕にはなにもできない」

「そうだね。
 アナタにはできない。
 でも、私には出来るかもしれない」

 万桜の言葉に亜金が驚きました。

「時間を戻すことが出来るの?」

「流石に時間を戻すことはできないけど……
 玉藻ちゃんの記憶を操作することは出来るわ」

 万桜の言葉に亜金は戸惑うことなく言いました。

「おねがいします」






「玉藻ちゃん」

 万桜が、玉藻の方を見ます。

「あー」

 玉藻が、ぼーっと万桜の方を見つめます。

「嫌なこと嫌なことぽいぽいぴー」

 万桜がそう言って玉藻の頭をグリグリとなでました。

「あー」

 玉藻の目に光が戻ります。

「はい、これで元通り!」

 万桜がそういうと玉藻が亜金の方を見ます。

「あ、き、ん?」

「うん、亜金だよ」

 玉藻の声に亜金が優しい声で返しました。

「大丈夫か?怪我はしてないか?」

 そして、周りを見て驚きます。

「って、こいつらなんで伸びているんだ?
 って、万桜さんにライセンさん!?
 なんでこんなところに!?」

 玉藻が混乱します。

「全部ライセンさんがやってくれたんだ」

「へ?ライセンさんが?」

「え?あー、うん」

 ライセンは、亜金に合わせて嘘をつきました。

「そっか、ありがとうございます!」

 玉藻が笑顔でお礼を言ったのです。
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