マーメイド

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
2 / 117
01 出逢い

02

しおりを挟む
 数日後……
 壱の家に、宅配便が届く。
 その大きな箱には、アーマン株式会社のロゴが目立つようにあった。
 壱は少し恥ずかしいと思ったが、世間にはマーメイドが浸透しているため宅配の人も普通の表情だった。
 よくよく考えてみれば、マーマンと一緒に街を散歩する人もいるくらいなので購入者を差別する風潮はもうなかった。

「はい、ご利用ありがとうございます!」

 宅配のお兄さんが、笑顔で頭を軽く下げる。

「あ、はい。
 おつかれさまです」

「ありがとうございます。
 受取のサインをお願いしてもいいですか?」

「あ、はい」

 壱は、用紙にサインをする。

「あと、マーマンを利用するにあたって同意書も必要なんですけど」

「同意書?」

「はい。
 まずこの用紙を見てください」

 宅配のお兄さんは、真面目な表情で言葉を続ける。

「第一条、マーマンを大事にすること。
 第二条、マーマンの臓器摘出などに利用しないこと。
 第三条、転売などはしないことまた不要になった場合はアーマン株式会社に連絡し速やかに処分すること。
 第四条、マーマンにも心や感情があるため、それを無闇に傷つけないこと。
 第五条、マーマンを好きになった場合、マーマン株式会社に連絡し速やかにマーマンの国籍を作ること。
 第六条、マーマンで恋愛の練習相手にをすることは可とする。
 以上、これらを守れなかった場合、国際法により厳罰な処分を検討する。
 とあります。
 ちなみにクーリングオフは14日以内でお願いします。
 以上のことを守れますか?」

「えっと、そんなのあったんだ?」

「はい、昨日マーマン法というのが出来て設立されました」

「そっか……」

 壱は、迷った。
 マーマン法など知らなかった。
 昨日出来た法律。
 それは、マーメイドを購入することで責任を背負うということだ。

「守れそうもないですか?」

「うーん。
 受取を拒否した場合、このマーメイドはどうなるのですか?」

「おまかせコースで、販売されるか……
 廃棄処分の場合もありますね」

 宅配のお兄さんが低い声でそう言った。

「それは、可哀想だな。
 わかった、受け取るよ」

 壱は、軽い気持ちで受取にサインした。
 誰かと一緒に同居することになった。
 そう思えばいい。
 だけど、壱はこのときなにも知らなかった。
 命の重さと大事さについて考えていなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...