マーメイド

はらぺこおねこ。

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 壱は、ジャージを着たピノと共に駅に向かった。
 するとメガネのショートカットの女性が壱の方を見ていた。

「あ、美知子さん。
 おはようございます」

 壱は、その女性に挨拶をした。
 するとその女性は小さく言葉を放つ。

「……35分」

「え?」

 壱は、その言葉に首を傾げる。

「35分早いですね。
 デートは、30分前に行動ですよ」

「あ……えっと」

 壱は、戸惑う。

「そう戸惑わないでください。
 お兄ちゃんと呼びますよ?」

「えー。
 それは、困るなー」

 壱が、苦笑いを浮かべながら小さく笑う。

「壱、この人だれ?」

 ピノが、少し警戒しながらそう言った。

「あ、この人は――」

「海道 美知子です」

 美知子が、そう言ってメガネの縁に手を当てる。

「美知子……さん?」

「そう美知子さんです。
 貴方がピノさんですね?」

 美知子の問にピノは元気よく答える。

「うん!
 ピノがピノだよ!」

「元気がいいですね。
 ピノさんにはなまるをあげましょう!」

 美知子は、そう言って笑うと指先でマルを描いた。

「わーい。
 はなまるだー」

 ピノは、無邪気に笑う。

「でも、壱さんにはバツです!」

「え?どうして?」

 壱が首を傾げると美知子は、ため息をつく。

「わかりませんか?
 こんな可愛い女の子にジャージで歩かせるなんて!
 ダメですよ!レッツドレスアップです!」

 美知子は、そう言ってピノの手を引っ張った。

「どれすあっぷ?」

 ピノが戸惑いながらそのまま美知子に引っ張られた。
 壱は、そのふたりのあとを静かについて歩いた。
 そして着いた場所は、ゴスロリショップ。

「ここは……?」

 壱が入りにくそうな表情を浮かべる。

「ゴスロリショップです。
 この店は、アリスをモチーフとしたゴシック・ロリータショップなのでピノさんが着ると……
 あらまぁ不思議!本物のゴスロリになれます!」

「えっと……?」

「ゴシック・ロリータよ!
 永遠なれー!」

 美知子が、そういうとピノも真似して言った。

「なれー」

 そして、ふたりはそのままお店の中へと消えた。

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