マーメイド

はらぺこおねこ。

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06 不幸の手紙

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「妻も子どももいないおっさんさ。
 バット武器を持たないおっさんは。
 マントを持たないおっさんさ。
 空は飛べないおっさんさ。
 なのにクビはすぐとぶのよ。
 おっさんは。
 かなしみのおっさん」

男が小さく歌う。

【お金】という文化が発達した世界で産まれた存在。

かつて男には家族がいた。
しかし、エルフが全てを奪った。

男には、妻も子もいない。
ベルゼブブに殺された。

復讐を誓った。
敵討ちを誓った。
しかし、誓うだけではなにも産まれない。
復讐をしたところで家族は戻ってこない。
なぜならそれが、死なのだから。
そしてなにより……
そしてなにより……
男には凶悪と戦う力がない。
だから歌うしかない。

「妻も子どももいらいおっさんさ。
 バット武器も持てないおっさんが。
 マントを持たないおっさんは。
 空は飛べないおっさんよ。
 なのにクビはすぐとぶ。
 おっさんじゃ。
 ぜつぼうのおっさん」

「よう」

そういって近づいてきたモノがいた。
それは社長だ。

「社長?」

「24時間働く力は欲しくないか?」

「24時間ですか?」

「ああ、永久に働ける力だ。
 私にはそれをお前に授ける力がある」

「社畜ですか?」

「そうだなある意味社畜だな。
 会社のために働くのではない。
 社会のために働くんだ」

「社会?なんのために……でしょうか?」

「ベルゼブブを倒すためにだ」

「え?」

「秘薬がひとつできたんだ」

社長は、そういってカプセルを1錠手のひらに乗せた。

「これは?」

「これは、最強の剣を作ろうとしてできたものさ。
 この秘薬を飲めば、最強の力とまでは言えないが。
 目の前の悪を倒すくらいの力は得れる。
 だが、失敗すると死ぬ」

男は小さく笑う。

「いいですよ。
 死ぬのもいい。
 死んでもいい。
 失ったものはたくさんある。
 これから失うものがないのなら……
 僕は!!」

男は、社長から秘薬を受け取るとそれを口の中に入れた。
そして、ゴクリと音を立てて飲み込んだ。

男の胸から溢れる感情。
憎しみでもない、苦しみでもない。
優しさでもない、愛でもない。
それは、まさに太陽。
天が平等に照らす温もり……

「おお、これは……」

社長の胸が熱くなり涙があふれる。

「この暖かい感情これは」

「まさに太陽、まさに炎」

歌が溢れる。
歌が溢れる。

「妻も子どももいないサラリーマン。
 バットを持たないサラリーマン。
 マントを持たないサラリーマン。
 空を飛べないサラリーマン」

男の心があふれる。
涙があふれる。

「お前の名前は、サラリーマンだ!
 サラりとやってきて人々を救う男!
 それがサラリーマンだ!」

社長は、そう言って叫ぶ。
サラリーマンが誕生した瞬間だった。
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