まじかるブリキュア

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
18 / 62
Scene.02 影のない男

18

 虫の鳴き声が聞こえそうな梅雨の河川敷。
 早良とブリ男はゆっくりと歩く。
 早良は、男とこういう風に歩くのははじめてだった。
 なので、早良は何を話したらいいのかわからない。
 暫くの沈黙のあと……
 ブリ男が、楽しそうに口を開ける。

「手巻き寿司って楽しいですね」

「え?」

「大勢で会話しながら食べる食事は美味しいです」

「そうだね。
 ブリ男さんは、家族と食事したりしないの?」

「家族ですか……」

 ブリ男の表情はどこかさみしげだった。

「家族いないの?」

「いますがいないようなものです。
 兄弟は僕を含め3人います……ですが仲は良い方ではありませんね」

「そっか……」

「はい。
 ましてや家族揃って食事をするなんて滅多にありませんでした」

「ごめん……なさい……」

「ん?なにがですか?」

「嫌な過去を思いださせたみたいで……」

「気にしなくて大丈夫ですよ。
 過去は過去、今は今。
 さっきの手巻き寿司非常に楽しかったです。
 楽しい思い出は僕を強くする。
 僕は、その貴重な思い出を大事に――」

 ブリ男がそこまで言いかけると足を止める。

「あ……」

 早良も足を止める。

「伊藤……ここが、早良さんの家じゃないんですか?
 大きいですね」

「あ……はい」

 早良が、うなずくとすぐに早良の父親が玄関を開けた。

「早良。
 おかえり」

「あ、お父さん。
 ただいま」

「そちらの男性は?」

「これはこれはお初にお目にかかります。
 私、鰤谷 ブリ男と申します。
 今日から早良さんのクラスメイトになりました――」

「早良のお友だちかい?」

「友だち?」

 ブリ男が首を傾げる。

「クラスメイトなんだろう?」

「そうですね。
 友だち、いい響きですね」

 ブリ男が小さく笑う。

「家にあがっていくかい?」

 早良の父親がブリ男にそう言うとブリ男は首を横に振った。

「いえ、夜も遅いことですし僕はこれで失礼します」

「そうかい、それは残念だ」

「では、早良さんお父上殿、おやすみなさい。
 僕はこれにて失礼します」

 ブリ男は深くお辞儀をするとその場を去った。

「なかなかの好青年じゃないか。
 早良、結婚するのならああいう人にするんだな」

 早良の父親がそう言うと優しく笑った。

「結婚て、お父さん気が早いよー」

「そうでもないさ……
 と言うか、清空ちゃん以外にも友だちが出来てお父さん嬉しいよ」

「……うん」

 早良は、小さく笑った。

「さぁ、家に入りなさい。
 早良の友だちのこともっとお父さんに話してくれ」

「うん」

 早良は、家に入ると手巻き寿司パーティの出来事を話した。
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。