子どもができた

はらぺこおねこ。

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第01章 世界で一番怖い言葉

05

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残された、俺とその父親。
父親は、萎れた風船のような声で言った。

「君の歳は幾つなのだ?」

「25歳です」

俺は、口を押さえながら言った。
口の中に鉄分のの味が広がる。
それでも、港の父親は淡々と言葉を続ける

「そう言えば、自己紹介がまだだったな。
 私の名前は、楠田 徹(くすだ とおる)
 君の名前は?」

「千代田 隆です。」

「仕事は何をしているんだ?」

「エンジニアのアルバイトです」

港の父親は舌打ちをした。

「バイトだと?」

父親の声で顔が、怒りで赤くなっていくのがわかった。

港の父親は、手をワナワナ震わせながら言葉を続けた。

「月に幾ら稼いでいるのだ??」

「だいたい20万くらいです。
 バイトなのでボーナスとかありませんが……」

「それで、家庭がもてると思っているのか??
 将来のこととかキチンと考えているのか?」

「……」

胸が痛かった。
自分でもそれは、わかっている。
でも、どうする事も出来ないんだ。

「貴方には関係ないでしょう?」

「関係無いだと?
 娘を妊娠させておいて関係ないだと!?」

もう、何がなんだかわからなくなった。
その父親は、俺の胸倉を掴み殴ろうとした時、港がそれを静止した。

「やめてください。
 貴方には関係ないでしょ?
 もう、親でも子でもないのだから・・・」

その港の声は冷たく、そして冷静だった。
覚悟を決めた声。
一言で現すのなら、それが妥当だろう。



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