~マーメイド~

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
55 / 130
Scene05 夢はでっかい宝島

55 明るく元気に生きただけ

しおりを挟む
カンカンカンと電車の音が鳴り響く。
その音色はどこまでも切なかった。

真っ赤な世界。
赤くなる夕日。

苦しい世界。
青くなる空。

赤と青が重なる。
紫は濃くなり夜となる。

今ここに生まれるものは孤独だ。

十三はひとり空を見上げる。
なにもない。

「出ておいでよ」

「気づいていましたか」

十三は現れるお笑い芸人を醒めた目で見る。

「ヒロキです。
 青い空を赤く染めたくないですか?」

「生憎様。
 僕は赤い空を青く照らしたい派なんだ」

十三の言葉にヒロキはいう。

「性格の不一致ですね。
 残念です」

そういってウクレレを奏でる。
その音とともに十三の周りが赤くなる。

「無駄です。
 僕は糸では切れません」

「……なんと?気づいたのですが?」

「薬で幻覚を見せるのも効かないよ。
 中和剤も撒いてる」

「そこまでも!!」

ヒロキは驚きます。

「まぁこの糸で首は斬れない。
 でも軽い痛みがある。
 だから斬られた感覚になる。
 首を斬られた経験なんて誰にもない。
 だから幻覚で軽い目眩が起きる。
 酷い目眩と震えで地面に倒れる。
 それはそれは怖いだろうね。
 それはまるで自分の首が落ちるような感覚になる。
 貴方はこの間これを高校生に試したよね?
 もちろん斬られる前にいろんな小細工をしているんだろうけど……」

「全てお見通しなのですね」

「ウクレレ芸人ヒロキさん。
 僕が貴方を倒します」

「出来るのですか?
 高校教師で科学者。
 知ってますか?二兎追う者は一兎も得ずって言葉を」

「知らない?一挙両得一石二鳥。
 僕は欲張りなんだ。
 何でも欲しい」

「……強欲とは愚かですね」

――ストン

何かが斬れる。

十三には何が起きたかわからない。
世界が赤くなる。
右手の感覚がない。

「愚かな。愚かな。愚かな」

「あ。手が……」

「愚かで強欲で救いはありません」

左手の感覚がなくなる。

「なんで?これはなんで?」

十三の慌てふためく様子が見える。
足の感覚がなくなる。
ストン、ストン、ストン。
少しずつ。じわりと……

そしてその初めて知った。
斬られているのは自分なのだと。

「えー、死ぬの?嫌だな」

十三の演技が下手だった。
下手なのにヒロキに恐怖が襲ってくる。

「いつの間にです?」

「あ、気づいちゃいました?」

「この薬の開発にいくらかけたの思っています?」

「この薬を作るだけなら3分かな」

「愚かな、私は七道に復習するために何年掛けたと思っています?
 それを3分ですか?なめられたものだ」

ヒロキは落ち込む。

「まぁ僕の人生と3分だからね」

ヒロキはもうなにもいいません。

「意識を失ったようだね。
 警察に連絡っと……」

十三はそのままヒロキを警察に引き渡した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

同期に恋して

美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務  高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部 同期入社の2人。 千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。 平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。 千夏は同期の関係を壊せるの? 「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。

処理中です...