167 / 184
06 泣かない彼と泣き虫な彼女
2012年11月13日
しおりを挟む
2012年11月13日
何か気まずい空気のままゲームをする気にもなれず、俺は病院内を彷徨う。
いつもと変わらぬ光景、いつもと変わらぬ風景に俺は心が少し痛む。
いつも俺が能天気にゲームをしていた時も、誰かが亡くなっている。
俺が、死にたかった一生は、誰かが生きたかった一生なんだ。
でも、そういうのを何も考えず俺は自殺した。
未遂に終わったけれど……
死のうとしたことには、変わらない。
ただ、この人たちと違うことはひとつある。
あの時、俺が死んで悲しむ人は誰もいなかった。
今、俺が死ねば、偽物の美穂は、悲しんでくれるだろう。
久しぶりに再会した友人、太郎と小太郎も悲しむだろう。
千春ちゃんや千代田さん、あとゆかりさんの耳まで届けば悲しんでくれるかもしれない。
だから、なんとしてでも生きなくちゃいけない。
死ねば悲しむ人が少なからずいるのだから……
俺は、ため息をつく。
たどり着いた先は、待合室。
山本さんとよくだべった場所だ。
色んな相談を聞いてもらったし、たこ焼きも教えてもらった。
正直、何かに自信をつけることなんてなかったけれど……
たこ焼きに関しては、美味しいと自信を持って言える。
初めて自信を持った瞬間だった。
「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」
そう言って俺の隣に隼人君が座る。
「授業はどうした?」
「授業なんて受ける気分になれないよ」
「そうか……」
まぁ、愛ちゃんがあんな調子だしね。
「隼人君と愛ちゃんは、仲が良かったけど前からの知り合いだったのかい?」
「この病院に来て初めてできた友達だよ」
「そっか……」
「うん。
家族が死んだとき、泣いている僕をずっと励ましてくれたのが愛なんだ。
かっこわるいよね。女の子の前で涙を流すなんだ……」
「そんなことはないぞ。
男の涙も武器だ!」
「でも、僕は決めたんだ。
愛を守るために涙を流さないって……
僕が泣けば愛も悲しむ。
愛の悲しむ顔を見たくないから……」
「そうだな……
隼人君は偉いな」
「偉くはないよ。
ただのカッコつけたがりだよ」
「まぁ、いい……
何か飲むか?ジュースを奢ってあげるよ」
「じゃ、僕は、午後の紅茶がいいな」
「わかった」
俺は、自販機でジュースを買った。
うん。
やっぱりコーラは、美味い。
何か気まずい空気のままゲームをする気にもなれず、俺は病院内を彷徨う。
いつもと変わらぬ光景、いつもと変わらぬ風景に俺は心が少し痛む。
いつも俺が能天気にゲームをしていた時も、誰かが亡くなっている。
俺が、死にたかった一生は、誰かが生きたかった一生なんだ。
でも、そういうのを何も考えず俺は自殺した。
未遂に終わったけれど……
死のうとしたことには、変わらない。
ただ、この人たちと違うことはひとつある。
あの時、俺が死んで悲しむ人は誰もいなかった。
今、俺が死ねば、偽物の美穂は、悲しんでくれるだろう。
久しぶりに再会した友人、太郎と小太郎も悲しむだろう。
千春ちゃんや千代田さん、あとゆかりさんの耳まで届けば悲しんでくれるかもしれない。
だから、なんとしてでも生きなくちゃいけない。
死ねば悲しむ人が少なからずいるのだから……
俺は、ため息をつく。
たどり着いた先は、待合室。
山本さんとよくだべった場所だ。
色んな相談を聞いてもらったし、たこ焼きも教えてもらった。
正直、何かに自信をつけることなんてなかったけれど……
たこ焼きに関しては、美味しいと自信を持って言える。
初めて自信を持った瞬間だった。
「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」
そう言って俺の隣に隼人君が座る。
「授業はどうした?」
「授業なんて受ける気分になれないよ」
「そうか……」
まぁ、愛ちゃんがあんな調子だしね。
「隼人君と愛ちゃんは、仲が良かったけど前からの知り合いだったのかい?」
「この病院に来て初めてできた友達だよ」
「そっか……」
「うん。
家族が死んだとき、泣いている僕をずっと励ましてくれたのが愛なんだ。
かっこわるいよね。女の子の前で涙を流すなんだ……」
「そんなことはないぞ。
男の涙も武器だ!」
「でも、僕は決めたんだ。
愛を守るために涙を流さないって……
僕が泣けば愛も悲しむ。
愛の悲しむ顔を見たくないから……」
「そうだな……
隼人君は偉いな」
「偉くはないよ。
ただのカッコつけたがりだよ」
「まぁ、いい……
何か飲むか?ジュースを奢ってあげるよ」
「じゃ、僕は、午後の紅茶がいいな」
「わかった」
俺は、自販機でジュースを買った。
うん。
やっぱりコーラは、美味い。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる