21 / 94
11月
11月25日
しおりを挟む11月25日
自分の部屋でまったりしていると家のインターフォンが鳴りました。
また警察の人でしょうか?
暫く任意同行が無かったのでもしかしてと、思って玄関のドアを開けると、はるかさんが家の前に立っていました。
「猫さん、遊びにきたよー」
「え?」
「冗談だよ。
今日は、お見舞い。迷惑だったかな?」
そう言って苦笑いを浮かべていました。
「いえ、そんな事はないです」
「なら、よかった」
一瞬、間が空きました。
はるかさんの顔が少し暗くなる。
「えっと、立ち話もなんなんで、家に入りませんか?」
俺がそう言うと暗くなった、はるかさんの顔が一瞬で明るくなりました。
「いいの?
ありがとう」
こうして俺は、はるかさんを自分の家に入ってもらうことになりました。
女の子を部屋にあげるなんて、初めてかも知れません。
急な訪問だったので、俺の部屋は散らかっていました。
そして、その部屋を見てはるかさんが言った一言。
「この部屋、猫さんの匂いがする」
臭くてごめんなさい。
寒いから窓も暫く開けてませんでしたしね……
凹む俺をよそに、はるかさんは本棚を見ていいました。
「猫さんの部屋、本がいっぱいあるね」
ごめんなさい、ほとんどがマンガの本です。
「ベットの下にエッチな本とかあるのかな?」
「いや、それはないです」
「ふーん。
まぁ別に良いけど」
俺は、親と同居しています。
なので、初めての女の子の訪問に母親は少し興奮気味。
「お邪魔しまーす」
そう言って、おやつとジュースを用意してくれました。
そして一言……
「明日、お母さん朝から映画を見に行くから留守番よろしくね」
今、言わなくてもいいじゃないですか……?
「はーい」
そして何故か、はるかさんが返事をする。
どうして、はるかさんが返事をしたのでしょうか?
母親が、部屋から出るとはるかさんが寂しそうに窓の外を見ながら言いました。
「ねぇ、気付いている?
私達、ずっと警察の人にマークされてるね」
「そうですね。
俺この間、事情聴取されたんです。
どうやら俺は容疑者の1人らしいです」
「私も警察の人に犯人扱いでの事情聴取されたよ」
「そうなんですか?」
「うん、私達容疑者仲間だね」
はるかさんは、クスリと笑いました。
「そうですね……」
ほんの少しだけ、はるかさんと親近感が沸いた気がする。
「良い人だね。
猫さんのお母さん」
「そうですか?」
「うん。
私さ、親と仲が悪くてさー
高校卒業と同時に家を飛び出たんだー」
「そうなんですか……」
「住む場所もない、学歴も職歴も経験も何も出来ない女の子が、手軽に稼げる仕事っていったらさ、風俗しか思い浮かばなかったんだ」
なんて、言えばいいかわかりませんでした。
はるかさんの過去。
それは、俺なんかが知っていいか悪いのか解らない。
でも、はるかさんは静かに、それでいて優しく語ってくれました。
少し、胸が切なくなりました。
3時間ほどはるかさんと雑談をした後、はるかさんは仕事があるらしいので、はるかさんを家まで送って別れました。
人って色々事情があるんだなぁーって思いました。
俺は、自分の中にある闇をまだ誰にも語ったことがありません。
でも、はるかさんは自分の中の秘密を俺に話してくれました。
俺は、はるかさんに何をしてあげれるのでしょうか?
どうすれば、喜んでもらえるのでしょうか?
答えは、俺にはわかりません。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる