フォロワーのHaruさんが殺されたそうです。

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
53 / 94
12月

12月27日

12月27日

晴れ時々曇り心は雨。
流れるように俺は歩きました。
気付いたとき、外は暗くなっていました。
時計を見ると22時過ぎ……
見知らぬ場所に来てしまったみたいです。
ここは、どこだろう……
そう思い、明かりを求めて歩いていると、公園を見つけました。
少しここで休憩しようと思い、公園の中に入りました。
すると、そこにツインテールの女の子がベンチに座っていました。
とても悲しそうな顔をしていました。
俺は、黙ってその女の子の隣に座りました。
「そんな顔をしていると幸せが逃げちゃいますよ」
「猫さん……」
女の子は、ゆっくりと笑顔を作りました。
女の子の名前は由香さん。
橘 由香さん、俺はこの女の子の笑顔しか知りません。
さっきみたいな表情なんて初めて見ました。
「どうしたんですか?
 こんな所で……」
「なんにもしてないよ。
 ただ、ぼーっとしていただけ」
「その割には、今にも泣きそうな顔をしていましたよ」
「そんなことないもん!」
由香さんは、そう言って立ち上がりました。
「失恋でもしたんですか?」
俺は、冗談っぽく言いました。
「違うもん!」
由香さんは、大きな声で言いました。
声は大きいけれど元気は、ありませんでした。
「由香さん?」
「私、はるかさんに言われたんだもん!
 ずっと笑顔でいなさいって、笑顔でいたら幸せになれるからって!
 でも、無理だよ、はるかさん!」
由香さんは、肩を震わせます。
「泣きたい時には泣いてもいいんですよ?
 人は誰しも泣いて産まれてくるのだから……」
「猫さん、ずるいよ。
 こんな時、優しくするなんてずるいよ」
由香さんは、顔に手を当てて肩を震わせました。
由香さんの呼吸が乱れていました。
泣いているのでしょうか?
こんな時、どうしたら良いのかわかりません。
でも、丁度雪が降ってきました。
話題を変えましょう。
俺はそう思い、言いました。
「由香さん、雪ですよー」
「そうだね……
 寒いね……」
由香さんは、泣いています。
俺は、座ったまま動けません。
由香さんはこちらを見ようともせず、俺は由香さんの背中をずっと見ていました。
それから30分くらい由香さんは、泣いていました。
そして、大きく深呼吸をした後、俺の隣に座りました。
「えっと、ハンカチどうぞ……」
俺は、ゆっくりとハンカチを出しました。
「ううん。
 大丈夫だよ。
 ありがとう、でも少し遅いかな」
「え?」
「こういう時、泣いている時に渡すモノだよ。
 泣き終わった後に渡しても意味ないじゃん」
由香さんは、そう言って笑いました。
「やっと笑ってくれましたね」
「え?」
「俺は、由香さんの笑顔しか知らないので、由香さんの笑顔を見て安心しました」
由香さんは、優しく笑った後、こう言いました。
「口説いてる?」
「え?いえ、全く意識していませんでした。
 こんなんで口説けるのですか?」
すると由香さんは笑いました。
「猫さんって、はるかさんから聞いた通りの人なんだね」
「え?」
「ううん。
 なんでもない」
由香さんは、そう言って俺に近づきました。
そして、顔を俺の肩に乗せました。
静かに俺の手を握り締めると言いました。
「猫さんの手、温かい……」
「由香さんの手冷たいです。
 どれくらいここにいたんですか?」
「朝からずっといたよ」
「朝から?」
「うん
 ここはね、はるかさんとの思い出の場所なんだー」
「そうなのですか……」
「うん。
 夜の仕事を始めたばかりのころ失敗ばかりで毎日泣いていたんだー。
 その時、はるかさんに言われたの。
 『どんな時でも笑顔でいなさい。
そしたら、周りが幸せになる。
周りが幸せになったら貴方も幸せになるから』って」
「はるかさんらしい、前向きなセリフですね」
「うん!
 私、はるかさん大好き!
 だから、決めたんだ!
 何があっても笑顔でいようって!」
由香さんは、ニッコリと笑うと立ち上がりました。
由香さんは、無邪気に笑っていたのではありませんでした。
はるかさんが亡くなって悲しいのに、無理して笑っていたんですね。
そう思うと、由香さんの事を少し好きになれた気がします。
「じゃ、私帰る!」
「あ、あの……!」
俺は、帰ろうとした由香さんを止めました。
「どうしたの?
 まだ、私と一緒にいたい?」
「えっと、帰り道教えてください」
俺が、そう言うと流石の由香さんも苦笑いを浮かべました。
「え?迷子?」
「はい、迷子です」
「迷子の迷子の子猫ちゃん?」
「はい……
 でも、やめてください。
 昔、そう言ってからかわれていましたので……」
「そうなんだー」
由香さんは、そう言うと俺の手を握り締めました。
「え?」
「こうした方が温かいから」
「そうですか……」
少し緊張しました。
「じゃ、駅までゴーゴー」
そう言って由香さんは、俺を駅まで送ってくれました。
明日は、はるかさんのお通夜です。
これで、本当にさよならなんですね……
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。