ありがとうまぁ兄…また逢おうね

REN

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第七章 再出発

まぁやん危篤…

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舞華の七回忌法要が終わり数ヶ月が経ったある日。
まぁやんから恋に電話が入った。
☎︎「もしもし!まぁ兄」
☎︎「あぁ…恋か?今話せるか?」
☎︎「いいけど…どうしたの?声小さいよ」
☎︎「そっか?まぁ…色々あってな…」
☎︎「どしたの?仕事の件?」
☎︎「俺、恋の近くに転勤になるわ」
恋は正直嬉しかったが、それ以上にまぁやんの元気の無さにとても心配になった。
☎︎「そっか…うん!帰っておいで?」
するとまぁやんは泣いているようだった。
☎︎「まぁ兄?」
☎︎「グス…あ…あぁごめんな?アレルギーでな」
まぁやんは必死に誤魔化した。
おそらく、恋の「帰っておいで」という言葉が響いたのであろう。
☎︎「まぁ兄?あのね?わたし達は家族なんだから、何の遠慮もいらないんだよ。だから…ね?」
☎︎「あ…ありがとうな…」
☎︎「うん…いつ頃戻ってくるの?引っ越し手伝うから」
☎︎「9月の中くらいかな」
☎︎「わかった。また連絡ちょうだい?」
☎︎「うん…じゃあな…」
まぁやんの仕事は過酷であった。
仕事時間中は部下の仕事のフォロー、お客様へのクレーム対応に追われ、みんなが帰った後に夜遅くまで自分の仕事を行う。そんな日々が毎日続き、とうとう精神を病んでしまった。
当時のまぁやんの唯一の救いは、まぁやんが好きなグラビアアイドルの推しの活躍を応援すること、同じファンの人たちとの交流で、それだけがまぁやんの心を繋ぎ止めていたものであった。
もし、何もなかったら、まぁやんはもしかすると、自ら命を絶っていたかもしれない。それほど追い込まれていた。会社もそれに気づき、今回部署異動となった。

そして9月…
まぁやんは転勤して、恋が住むM市へ引っ越してきた。
「まぁ兄!お疲れ様!」
恋は出来るだけ明るく接していこうと思った。
「おう。今日は悪いな」
「いいの!もう少ししたら、お兄ちゃんも来るから」
「康二もか?」
「それとね、夜には龍兄たちも来るよ!今日はパーチーだね」
「パーチーって。ふふふ…恋にはほんと…」
「ん?なに?」
「いや…なんでもない…」
まぁやんは気づいていた。恋はきっと、自分を元気づけようと、そして家族がついているんだという事を自分に解らすために、みんなに声を掛けたのだと。
「あいつ…俺のことをよく見てるな…」
引っ越しが一通り終わり、康二と恋で家の中の片付けをしていた。
まぁやんは車でみりんのお世話をしていた。
「なぁ、恋。まぁやんのやつ、精神病んでるってほんとか?」
「みたいだよ。ここだけの話ね。相当やばかったみたい。何度か首吊ろうかと思ったみたいだよ」
「やばいな…本当良かったよ。こっちにきてくれて」
「うん…何かね、大好きなグラビアアイドルさんがいるんだって。その女の子が頑張ってるのと、その…何だっけ…何か交流もできるみたいで、それが支えだったみたい」
「お前…詳しいな…」
「まぁ兄からね。聞いたの。結構電話で話したから」
「お前のおかげでもあるぞ。まぁやんが無事なのは」
「そっかな…そうだといいんだけど…」
「れーん!ちょっときてくれー!」
まぁやんが外から恋を呼んだ。
「はーい!待ってねー」
恋が外に出ていった。
「恋の結婚相手…まぁやんだったらいいのにな…」
康二はぼそっとつぶやいた。

夜には龍弥ファミリーが到着した。
生まれたばかりの次女「神楽」(かぐら)も一緒だ。
「まぁやん、久しぶり!」
「龍!お前もしっかりパパだな」
「お前も早く結婚しちゃえよ」
「ばーか!相手がいないよ」
「相手なら…れ…」
龍弥が恋と言おうとしたら、美紀が龍弥の頭をパーンと叩いた!
「って!なんだよ」
「バカはあんたよ!」
龍弥はチラッと恋のほうを見ると、物凄い形相で龍弥を睨んでいた。
「あ…悪りい」
ただ、やはりまぁやんは以前の元気がなかった。
すると康二は
「恋、お前しばらくまぁやんの家に住み込め」
『はぁ?なんで?』
恋とまぁやんは同時に反応した。
「恋の仕事はリモートだからどこでも出来るし、俺もまぁやんが心配だし。それなら信頼できる恋の方がいいだろ?まぁやんのサポートしてやれよ」
「おいおい!康二!お前、年頃の自分の妹によ、男の家に住み込めって!何言ってんだよ!」
「なんだ?お前。恋に手を出そうとか、そうなるのか?」
「ばっばか!あるわけないだろ」
「じゃあ安心だ!恋もいいな!兄命令だ」
「わ…わたしは…別に…やってあげてもいいけど…」
美紀は恋の態度に
「ツンデレかよ!」
っとツッコんだ。
「はぁ…わかったよ…恋!頼めるか?」
まぁやんがそういうと、恋は満面の笑みで
「うん!いいよ」
「じゃあ頼むな」
そのやりとりを見ていた龍弥と美紀は、康二にグッドのサインを出した!
その夜はみんなでまぁやん宅に泊まった。
みんな寝静まったこと、まぁやんはみんなの寝顔を見ながら、
「寝顔って歳重ねても変わらないんだな」
特に翔央の寝顔が可愛く、いつまでも見ていた。

その日から、まぁやんと恋の同居生活が始まった。
恋はグラフィックデザイナーとしてまだ駆け出しだが、リモートで仕事をこなし、月に1~2回東京の本社へ行っていた。
まぁやんは異動のため、降格となったが営業に戻り伸び伸びと仕事ができた。
異動先の人間関係もよく、新しい上司は以前と違い、しっかりフォローしてくれる人物であった。
生活は二人で楽しく生活していた。
「ちょっとまぁ兄!耳汚れてる」
「あっ!そっか?」
「ちょっと、こっちきて?」
恋はまぁやんの耳掃除をした。
「気持ちいいけど…恥ずいな」
「そぉ?わたしは平気よ」
「お前はやってる方だからだよ」
「ちょっと動かないの」
「へーい」
徐々に昔のまぁやんに戻りつつあった。
恋はそれが嬉しくてたまらなかった。

ところがある日…
恋の元に一本の電話が入った。
登録されていなく、知らない番号だったので警戒した恋は電話に出なかった。
しばらくすると、また同じ番号からの電話が。
警戒しながらも、恋は電話に出た。
☎︎「はい…」
☎︎「あっ出た!突然申し訳ありません。上田様の携帯でよろしいでしょうか?」
☎︎「はい…そうですが…」
☎︎「お世話になっております。私、高崎雅志さんの職場のもので、新山と申します。今よろしいでしょうか?」
☎︎「あっまぁ兄の…はい…大丈夫です」
☎︎「実は、高崎さんが先程営業先で倒れたとの連絡を受けまして…」
☎︎「えぇ!どういうことですか!?」
☎︎「私も詳しいことはまだ解りませんが、先程救急車で病院に搬送されたとの事です。上田様の連絡先が緊急連絡先になっておりましたので…」
恋は呆然としてしまった。
というよりも、なんでそうなったのかわからず、頭の中が真っ白になっていた。
☎︎「……し…もしもし…」
☎︎「あっ!すみません!病院はどこですか?」
☎︎「市立病院になります」
☎︎「わかりました!すぐ向かいます!」
恋は電話を切ると、大慌てで財布と携帯だけを持ち、家を飛び出した。
タクシーを捕まえると、すぐに病院に向かった。
タクシーの中で、龍弥と康二電話をするも、出なかったので、LINEですぐに折り返すように送った。
病院に着いて、受付に向かい
「すみません!救急車で運ばれた人はどこですか!?」
「患者様のお名前は?」
「高崎雅志です」
「お待ちください…今救命救急センターにいらっしゃいます。こちらの通路を…」
「わかりました!」
恋は走って救命救急センターに向かった。
ナースステーションで
「あの!高崎雅志の家族です!まぁ兄…雅志はどこですか?」
「あっ高崎さんのご家族の方ですね!こちらです」
恋はICUに案内された。
ICUで、チューブに繋がれたまぁやんが横たわっていた。
「まぁ兄!」
「今まだ意識が戻っておりません。ご説明致しますので、こちらのカンファレンスルームへ」
恋はひとり、カンファレンスを受けることになった。
すごく不安で心細かった。
「えー高崎さんですが、急性心筋梗塞を起こしました」
「心筋梗塞…」
「はい…まずは患者様の生命に危険が御座いましたので、緊急オペになりました事、ご了承ください」
「はい…」
「とりあえずは一命は取り留めました。大変危険な状態でしたが。ただまだ意識は回復しておりませんので、予断を許さない状況です」
「え…それはどういう…」
「はい…」
医師はまぁやんの病状を詳しく説明した。
「兄は…助かるんですよね?」
すがる様な想いで医師に問うた。
「後はご本人次第でしょう」
「そんな…いやだ…お願いします!助けてください!」
恋は狼狽した。
「落ち着いてください!」
看護師に制止された。

恋はまぁやんの病室のガラスを挟んで見ていた。
そして連絡の取れた龍弥が駆けつけた。
「恋!どういう…」
恋は龍弥にしがみついた。
「龍兄!どうして連絡取れないのさ!どうしてもっと早く来てくれないのさ!」
「ごめんな!恋!不安だったろ?ほんとごめんな!」
恋はその場で号泣してしまった。
……落ち着いた恋から龍弥は状況を聞いた…
「…心筋梗塞…か…」
「わたし、どうしたら…」
「恋…信じよう…まぁやんの…あいつの生命力を…」
そして美紀が慌てて走ってきた。
「美紀ぃー」
恋は美紀に抱きついた。
「恋…ごめんね…龍ちんを責めないで?これでも大事な会議、途中で抜けてきたんだから…」
「龍兄…ごめん…」
「俺のことはどうでもいいんだ」
そして康二も後から到着した。
「なんでだよ…あいつが…」
皆…突然のことで、状況を受け入れられなかった。

「申し訳ありません。本日は付き添いが出来かねます。お帰り頂けますか?何かございましたら、こちらからご連絡致します」
「すみません…わたしだけでも…だめですか?」
「申し訳ございません。規則ですので…」
恋たちは看護師より帰るように促された。
「どうしたの?」
救命救急センターの医師が来た。
「あっ!佐々木先生。ご家族の方に退館してもらうようにお願いを…」
佐々木医師が恋達を見て。
「代表者1名だけならいいですよ」
「せ…先生!」
「いいから!」
「本当ですか?」
「ただし!静かにすること、患者さん?にしっかり寄り添うこと!守れる?」
「はい!」
「じゃあ!恋!頼むな」
「うん!わかった」
そして恋以外は病院をあとにした。
「いい…ご家族ですね?」
「家族なら当然です…」
「そうでしょうね。でも、今の時代はその当然のことも出来ない方が多いですよ。残念ながら」
「そうなんですか?」
「えぇ…大変申し訳御座いませんが、高崎さんとのご関係、存じております。血の繋がりがないことも」
「はい。わたし達は孤児院で育ったもの同士です」
「それゆえでしょうかね。血の繋がった家族よりも結束が強く思います。おっと!すみません。話長くなっちゃいましたね。高崎さんの近くで見守っていてください。
「ありがとうございます!」
恋はまぁやんの手を握り、回復を祈った。
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