勇者のジョブチェンジ!!

そんそん

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第一章

ナンパから始まる非日常

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    時刻はもうすぐ19時を迎えようという時、龍一、シノ、京一郎、あと飯星の4人は噂の像の近くで待機していた。

「もうすぐ7時か。ってかなんでお前までいるんだよ、部長。」

「いいじゃないですか。幽霊が撮れるかもしれないとなれば、私も行くしかないです。」

「まぁいいや。で、あのバレー部の子… 名前なんだっけか。」

「佐藤 優子さんだね。でも、龍一も加藤君も忘れるなんてかわいそうだよ。ありがちな名前だけどさ…」

「そうそう、その佐藤は来ないのか?」

「部活だから送れるって言ってましたよ。私も勧誘されたんですけど断ってきました。」



    約20分後、佐藤は走ってやって来た。

「はぁ、はぁ… 遅れてごめんなさい。」

「別にそんなに急がなくても良かったのに。」

「今何分ですか?」

「あと10分で半になるな。作戦はどうする?」

「じゃあ私があの辺で囮になります。出てきたら龍一くんと京一郎くんは押さえつけてください。危なそうだったら斬ります。」

「え?斬るってどういう…」

「あー!それはまだ気にしなくていいからさ!佐藤さんはシノのそばに居てやってよ!」

「龍一君、何を隠してるんです?」

「うるせぇ!お前も一緒に行け!3人いればそう危なくもないだろ。」

    ということでシノ、佐藤、飯星の3人は像の前に立って喋っていて、龍一と京一郎は像の裏側で待機している。
    デジタル時計が19:30を示す。

「んー、何も起こりませんねぇ。」

「私一人しかいなかったから出てきたのかも…」

「カメラの準備はバッチリです!」

    1人だけ明らかにテンションが違うが、誰もそれを気にしていなかった。
    そのまま10分ほど待ってみるが特段変わった事は起こらない。

「やっぱそう簡単にはいきませんね。」

「そろそろ帰らないと心配かけちゃうなぁ。」

「うーん… この暗さならこっちのカメラにした方が…」

    その時だった。像の裏で待機している2人の脇を風が通り抜ける。春の陽気には似合わない冷たい風だ。

(何か来た…!)

    2人がそう確信するのと同時に佐藤がヒッ… と声を漏らす。
    肩に手を置かれてる本人以外には何が起こっているのかはっきり目視できた。胸から4、5本の矢を生やした、外国の兵士のような男が佐藤の肩に手をかけている。

「君たち暇そうじゃん?俺と遊ぼうぜ。」

    状況に甚だ似つかわしくないセリフが幽霊の男の口から発せられる。

「今だ!行くぞ!」

    龍一の掛け声で待機組が男に掴みかかる。

「え!?ちょっ、誰君たち!男に興味はないかなー、あはは。」

    あっさりと組み伏せられてしまった幽霊は情けない声を上げている。

「あなた、この前も私のことナンパしようとしましたよね?」

    佐藤の声にははっきりと怒気が含まれている。

「えー?そんなことあったかなー?いろんな子に声かけすぎて覚えてないやー。」

「こいつとは話し合える気がしないのでさっさと成仏してもらいましょう。」

    シノはいつの間にか剣を手にしており、それを構えて振り上げる。

「やれよ。もう1回経験してるんだ。今更怖いことなんかねぇよ。」

「…戦争ですか?」

「あぁ。女遊びのしすぎで国境の警備に回されちまってな。そのまま攻めてきた敵国の兵にやられちまった。」

「一応聞いときますけど、イグノリアのことは知ってますね?あと女神のことも。」

「もちろん知ってるさ。しかもあの女神、女癖が悪いってだけでこんなところに飛ばしやがったんだぞ!?ひどくね!?」

「前のハゲは圧政、今度のチャラ男は女絡みかよ。流刑の幅が広すぎないか…」

    幽霊の話があまりにもしょぼかったせいでシノも斬る気が失せたのか、剣を収める。

「斬らないのか?」

「斬られるよりもっと辛いことを思いつきました。あなたにはそれをやってもらいます。」

    シノは邪悪な笑みを浮かべている。

「な、なんだよ…」

「私の下僕として働いて貰います。あ、拒否権はないのでそのつもりで。」

    幽霊にとっては想像を絶する要求だったのか、ただでさえ青白い顔が真っ白だ。

「あのハゲのおじさんにいちいち聞きに行くのはめんどくさいので、あなたに調査してもらいます。」

「…何の調査だ?」

「悪さする幽霊がいないかを調べてもらいます。」

「そんだけで許してくれるのか!?」

「"私"は別にどうでもいいです。でもこちらの彼女が許してくれるかはわかりませんよ?」

    シノが指さす先には佐藤がいる。もちろん未だ怒ったままの。

「少しお話しましょうか…」



    佐藤の気が済んだ頃には幽霊はボロボロになっていた。完全に気を失っていて、これ以上情報は聞き出せそうにないので、帰ることになった。

「ありがとうシノちゃん!前ナンパされた時からずっと仕返ししたかったけど、幽霊っていうのが怖くてできなかったの!」

    佐藤はシノの手を握って嬉しそうにそう語る。

「私にできる範囲でお礼がしたいんだ!」

「あーじゃあ…」

    そう言ってシノが切り出したのは加藤の時と一緒、

「私の宗教に入信してくれませんか?あ、お金取ったりしませんよ?ある神様を信仰してくれるだけで充分です。」

「そんなことでいいならもちろんするよ!」

「シノは宗教なんかやってるんです?」

    ここに来てなぜか興味深々な飯星である。

「まぁとある事情で…」

「この子が入るなら私も入るです。なんだが楽しそうですし。」

「え!本当ですか!?」

    ナンパに対する女性の恨みというのは龍一と京一郎には到底理解しがたいものだった。



ーーーーー現在のイグニル教徒:3人
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2016.09.14 ユーザー名の登録がありません

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