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第4話 異能のきざし
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響は全力で路地裏を駆ける。しかし、幅が狭い上に建物のダクトが障害物の様に出っ張っているために思うようにスピードが出ない。そして財布は何不自由なく一定のスピードで飛んでいき、響との距離をなかなか縮ませない。
響は財布を見失わないように一点に見つめながら走る。…それゆえ、足元への注意が足りなくなってしまった。
ベチャ…
「なっ…!?」
突然、響の体が前に進まなくなってしまう。何かに足を取られてしまったようだ。足元に目を向けると、右足の靴にネバネバしたものがべったりと付着していた。
「粘着剤!?なんでこんなところに…!くそっ…!取れない…!」
人間の力にも耐えうる強力な粘着力のせいで、地面から靴を剥がすことができない。そして今度は足元に意識が向いてしまっていた。
「あっ…!財布…!」
気づいて顔を上げた時には遅かった。せっかく目で追っていた財布の姿は…もう無かった。
「猪苗代!」
そこに姫佳が追い付くが、彼女が目にしたのは、粘着剤によって地面に足がくっ付いてしまった上、財布を見失ってがっくりとうな垂れる響の姿だった。
「俺の財布…」
力の無い声が何とも虚しい。響自身、まさか自分が財布を無くすとは思ってもいなかった。…いや、無くしたとは言わないだろう。財布は宙に浮いたり勝手に動いたりしない。さっきの光景はありえないものだ。
「異能の力のしわざじゃ…」
姫佳がその言葉をボソッと口に出した。それを聞いて響は顔を上げる。
「能力者が力を悪用してるってことか…。俺がその餌食になるなんて…」
なんて運が悪いんだろうか…。自分はただ平穏に生活していただけ。異能の力とは無縁の世界を今後も生きていくつもりだった。“運が悪い”――響の頭にその言葉が思い浮かぶのも、この非日常な事態を早く終わらせたいと思っているからだろう。
これ以上の深追いは更なる面倒事を引き起こす。平穏には諦めも必要―――これは響にとっての戒めだ。
「財布は…諦める。この靴も…もう取れないな…」
それが響にとっての最善の選択だった。――しかし、そう思わない者が。
「なんで諦めるの…?こんなにひどいことされたのに。異能の力を悪用しているやつを野放しになんかできない」
姫佳がジッと見つめてくる。彼女の目から強い意志を感じる。能力者に敵うわけがない―――響はそう思ったが、姫佳は違う。彼女は本気だ。
ジュゥ…
その時、何か焦げ臭いにおいがしてきたと同時に、地面に粘着している靴の裏が熱くなり、何事かと思って足を上げようとした。
パリッ…
すると、今まで猛威を振るっていた粘着剤が剥がれたのだ。響は突然の好転に驚きつつ、自由になった右足を除けて粘着剤に目を向けると、いつの間にか黒く焼け焦げていた。
「え…?なんで?何が起きたんだ?」
もちろん火なんて扱っていないし、熱を生じさせるものも何もない。一体全体どうしていきなり粘着剤が焼けたのだろうか。
驚いたのは響だけではない、姫佳もだ。…しかし、彼女の驚きは響のそれとは違った。
『まさか…今のって……私の力…?』
響は財布を見失わないように一点に見つめながら走る。…それゆえ、足元への注意が足りなくなってしまった。
ベチャ…
「なっ…!?」
突然、響の体が前に進まなくなってしまう。何かに足を取られてしまったようだ。足元に目を向けると、右足の靴にネバネバしたものがべったりと付着していた。
「粘着剤!?なんでこんなところに…!くそっ…!取れない…!」
人間の力にも耐えうる強力な粘着力のせいで、地面から靴を剥がすことができない。そして今度は足元に意識が向いてしまっていた。
「あっ…!財布…!」
気づいて顔を上げた時には遅かった。せっかく目で追っていた財布の姿は…もう無かった。
「猪苗代!」
そこに姫佳が追い付くが、彼女が目にしたのは、粘着剤によって地面に足がくっ付いてしまった上、財布を見失ってがっくりとうな垂れる響の姿だった。
「俺の財布…」
力の無い声が何とも虚しい。響自身、まさか自分が財布を無くすとは思ってもいなかった。…いや、無くしたとは言わないだろう。財布は宙に浮いたり勝手に動いたりしない。さっきの光景はありえないものだ。
「異能の力のしわざじゃ…」
姫佳がその言葉をボソッと口に出した。それを聞いて響は顔を上げる。
「能力者が力を悪用してるってことか…。俺がその餌食になるなんて…」
なんて運が悪いんだろうか…。自分はただ平穏に生活していただけ。異能の力とは無縁の世界を今後も生きていくつもりだった。“運が悪い”――響の頭にその言葉が思い浮かぶのも、この非日常な事態を早く終わらせたいと思っているからだろう。
これ以上の深追いは更なる面倒事を引き起こす。平穏には諦めも必要―――これは響にとっての戒めだ。
「財布は…諦める。この靴も…もう取れないな…」
それが響にとっての最善の選択だった。――しかし、そう思わない者が。
「なんで諦めるの…?こんなにひどいことされたのに。異能の力を悪用しているやつを野放しになんかできない」
姫佳がジッと見つめてくる。彼女の目から強い意志を感じる。能力者に敵うわけがない―――響はそう思ったが、姫佳は違う。彼女は本気だ。
ジュゥ…
その時、何か焦げ臭いにおいがしてきたと同時に、地面に粘着している靴の裏が熱くなり、何事かと思って足を上げようとした。
パリッ…
すると、今まで猛威を振るっていた粘着剤が剥がれたのだ。響は突然の好転に驚きつつ、自由になった右足を除けて粘着剤に目を向けると、いつの間にか黒く焼け焦げていた。
「え…?なんで?何が起きたんだ?」
もちろん火なんて扱っていないし、熱を生じさせるものも何もない。一体全体どうしていきなり粘着剤が焼けたのだろうか。
驚いたのは響だけではない、姫佳もだ。…しかし、彼女の驚きは響のそれとは違った。
『まさか…今のって……私の力…?』
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