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第12話 欲を満たす異能
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2日前の土曜。金髪の男―――田子倉は1人街中を歩いていた。何か目的があるわけではなく、ただフラフラと出歩いているだけだった。そして、田子倉は道から逸れて路地裏の中へと入っていった。
少し進むと足を止め、上着のポケットから煙草のケースを取り出し、そこから1本取りだして口に咥えた。そして火を付けようともう一度手をポケットに入れてライターを探る。…しかし、いくら探ってもライターが見つからない。
「ちっ…、なんだよくそ」
自分のミスとは言え、田子倉は苛立って舌打ちをする。咥えていたタバコを口から離してケースに戻そうとすると――
「火つけましょうか?」
不意に見知らぬ男から声をかけられた。田子倉が目を向けると、目の前にライターを掲げている白髪の男が立っていた。見た目20代前半くらいで、中性的な顔立ちに肩までかかる程度の綺麗と思える白い髪を携えていた。それにしても今まで人の気配なんて全く感じなかったのに、いつの間に現れたのだろうか。
「火、いります?」
田子倉が男をまじまじと見ていると、男が再度声をかけてきた。
「あ、あぁ…わりぃな」
田子倉は我に返ったようにハッとし、言葉に甘えて火を貰うことにした。
カチッ…
男はライターを田子倉が咥えているタバコに近付けて火をつける。そしてライターを戻した後もじっと田子倉を見つめた。
「あなた…自分の生活に不満を持っていますね」
「…何だよいきなり。おまえには関係ねぇだろ。ほら、さっさと失せろ」
突然おかしなことを言いだした白髪の男を煩わしく思い、一転して邪険に扱う。しかし、白髪の男は対照的にフッと妖艶な笑みを見せた。そして、懐からあるものを取りだした。
――それは手のひらサイズの小さなポリ袋に入った白い粉だった。
「なんだよそれ…。まさかヤクじゃねえだろうな…?」
不良である田子倉もさすがに取り乱して一歩後ずさる。男が手に持っているものは麻薬ではないだろうか。
「いえいえ、これは麻薬ではありませんよ。もっと面白いモノです。…あなた、異能の力は欲しくありませんか?これを飲めば誰でも異能の力を手にすることができるのです」
「なっ…!ほんとかよ!?」
白髪の男の口から出た言葉はまさかのことだった。そんなとんでもない代物欲しくないわけがない。田子倉は当然のように食いついた。
後ずさっていた体を今度は前に進めて白髪の男に迫る。白髪の男はそれを迎え入れるように笑みを浮かべる。
「えぇ。本当ですよ。異能の力を手に入れれば、あなたは“満足”も得ることができるはずです」
田子倉はもう既に白い粉に釘付けになっていた。
「くれっ!今すぐにそれを!!」
田子倉は勢いよく手を伸ばして白髪の男に催促する。しかし、白髪の男は一転して引き離すように白い粉を遠ざけた。
「満足はタダではありません。それなりの代価を支払っていただきます」
「構わねぇ!だが今は金がねぇ!明日までに用意する!それでいいだろ!?」
「えぇ、もちろん。予約は成立しました」
田子倉は少しも渋ることなく購入を決定する。交渉はスムーズに成立し、白髪の男は満足そうに笑みを浮かべた。
―――そして翌日、田子倉は高額な金と引き換えに、己の欲望を満たす異能の力を手に入れたのだ。
田子倉はだんだんと近づいてくる響に対して余裕の笑みを浮かべていた。歯向かう奴らに上位の力でねじ伏せてやればこの心は満たされる。
田子倉は悠長に懐からタバコを取り出して口に咥え、ライターで火をつける。―――次の瞬間
バァァン!!
ライターが勢いよく爆発した。
「うげっ!!」
瞬間的に大きくなった炎に圧倒され、田子倉は思わず尻込みしてしまう。だが、すぐに顔を上に向けて姫佳を睨み付ける。彼女は右手をかざしていた。
「てめぇのしわざか…!」
今の爆発が姫佳の能力によるものだとわかり、今までの優越感は苛立ちへと変わる。姫佳の方もキッと睨み返し、彼女の右手が橙色に輝きだす。
ゴオォォォ!!
直後に掌の先から灼熱の炎が放たれ、田子倉に向かって一直線に空気を裂いていく。
「ばかが!!もうてめぇの命は終わりだ!!」
向かってくる炎に物怖じせず、田子倉は気迫に満ちた表情で叫ぶ。――すると、姫佳を掴み上げていた煙がスゥーと彼女から離れて上昇し出した。
途端、姫佳の体が重力に引き寄せられ始める。
ゴオォォォ!!
姫佳の放った炎は田子倉にかわされて地面に着火した。姫佳はその光景を見ながら数十メートルの高さから落下し始める。彼女の表情には少し諦めがあった。
「倉十!!ブレザーをパラシュートにしろ!!」
だが、落下していく中で彼女の耳に響の叫び声が入ってきた。瞬間、姫佳はハッとしたように諦めを捨て、即座にブレザーを脱いでパラシュートのように両手で持った。ブレザーによって大きな空気抵抗がかかり、姫佳の落下スピードが大きく減少する。
『そのままだ…!あとは俺がうまく受け止めれば…!』
スピードが落ちたからといって油断できない。下手をすれば姫佳は大けがを負ってしまう。それだけは避けなくてはならない。響は彼女の動きに全集中を向けた。
――しかし、それのせいで響は自分の背後に迫る煙に気付くことができなかった。
「終わりだ…。首を絞め潰してやる…!」
後方で田子倉が容赦のない殺意を向けていた。
少し進むと足を止め、上着のポケットから煙草のケースを取り出し、そこから1本取りだして口に咥えた。そして火を付けようともう一度手をポケットに入れてライターを探る。…しかし、いくら探ってもライターが見つからない。
「ちっ…、なんだよくそ」
自分のミスとは言え、田子倉は苛立って舌打ちをする。咥えていたタバコを口から離してケースに戻そうとすると――
「火つけましょうか?」
不意に見知らぬ男から声をかけられた。田子倉が目を向けると、目の前にライターを掲げている白髪の男が立っていた。見た目20代前半くらいで、中性的な顔立ちに肩までかかる程度の綺麗と思える白い髪を携えていた。それにしても今まで人の気配なんて全く感じなかったのに、いつの間に現れたのだろうか。
「火、いります?」
田子倉が男をまじまじと見ていると、男が再度声をかけてきた。
「あ、あぁ…わりぃな」
田子倉は我に返ったようにハッとし、言葉に甘えて火を貰うことにした。
カチッ…
男はライターを田子倉が咥えているタバコに近付けて火をつける。そしてライターを戻した後もじっと田子倉を見つめた。
「あなた…自分の生活に不満を持っていますね」
「…何だよいきなり。おまえには関係ねぇだろ。ほら、さっさと失せろ」
突然おかしなことを言いだした白髪の男を煩わしく思い、一転して邪険に扱う。しかし、白髪の男は対照的にフッと妖艶な笑みを見せた。そして、懐からあるものを取りだした。
――それは手のひらサイズの小さなポリ袋に入った白い粉だった。
「なんだよそれ…。まさかヤクじゃねえだろうな…?」
不良である田子倉もさすがに取り乱して一歩後ずさる。男が手に持っているものは麻薬ではないだろうか。
「いえいえ、これは麻薬ではありませんよ。もっと面白いモノです。…あなた、異能の力は欲しくありませんか?これを飲めば誰でも異能の力を手にすることができるのです」
「なっ…!ほんとかよ!?」
白髪の男の口から出た言葉はまさかのことだった。そんなとんでもない代物欲しくないわけがない。田子倉は当然のように食いついた。
後ずさっていた体を今度は前に進めて白髪の男に迫る。白髪の男はそれを迎え入れるように笑みを浮かべる。
「えぇ。本当ですよ。異能の力を手に入れれば、あなたは“満足”も得ることができるはずです」
田子倉はもう既に白い粉に釘付けになっていた。
「くれっ!今すぐにそれを!!」
田子倉は勢いよく手を伸ばして白髪の男に催促する。しかし、白髪の男は一転して引き離すように白い粉を遠ざけた。
「満足はタダではありません。それなりの代価を支払っていただきます」
「構わねぇ!だが今は金がねぇ!明日までに用意する!それでいいだろ!?」
「えぇ、もちろん。予約は成立しました」
田子倉は少しも渋ることなく購入を決定する。交渉はスムーズに成立し、白髪の男は満足そうに笑みを浮かべた。
―――そして翌日、田子倉は高額な金と引き換えに、己の欲望を満たす異能の力を手に入れたのだ。
田子倉はだんだんと近づいてくる響に対して余裕の笑みを浮かべていた。歯向かう奴らに上位の力でねじ伏せてやればこの心は満たされる。
田子倉は悠長に懐からタバコを取り出して口に咥え、ライターで火をつける。―――次の瞬間
バァァン!!
ライターが勢いよく爆発した。
「うげっ!!」
瞬間的に大きくなった炎に圧倒され、田子倉は思わず尻込みしてしまう。だが、すぐに顔を上に向けて姫佳を睨み付ける。彼女は右手をかざしていた。
「てめぇのしわざか…!」
今の爆発が姫佳の能力によるものだとわかり、今までの優越感は苛立ちへと変わる。姫佳の方もキッと睨み返し、彼女の右手が橙色に輝きだす。
ゴオォォォ!!
直後に掌の先から灼熱の炎が放たれ、田子倉に向かって一直線に空気を裂いていく。
「ばかが!!もうてめぇの命は終わりだ!!」
向かってくる炎に物怖じせず、田子倉は気迫に満ちた表情で叫ぶ。――すると、姫佳を掴み上げていた煙がスゥーと彼女から離れて上昇し出した。
途端、姫佳の体が重力に引き寄せられ始める。
ゴオォォォ!!
姫佳の放った炎は田子倉にかわされて地面に着火した。姫佳はその光景を見ながら数十メートルの高さから落下し始める。彼女の表情には少し諦めがあった。
「倉十!!ブレザーをパラシュートにしろ!!」
だが、落下していく中で彼女の耳に響の叫び声が入ってきた。瞬間、姫佳はハッとしたように諦めを捨て、即座にブレザーを脱いでパラシュートのように両手で持った。ブレザーによって大きな空気抵抗がかかり、姫佳の落下スピードが大きく減少する。
『そのままだ…!あとは俺がうまく受け止めれば…!』
スピードが落ちたからといって油断できない。下手をすれば姫佳は大けがを負ってしまう。それだけは避けなくてはならない。響は彼女の動きに全集中を向けた。
――しかし、それのせいで響は自分の背後に迫る煙に気付くことができなかった。
「終わりだ…。首を絞め潰してやる…!」
後方で田子倉が容赦のない殺意を向けていた。
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