AIコミュニケーション〜君は私のアルゴリズム〜

夢想PEN

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第7章

悪意と喪失

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9月6日

夜の渋谷、ネオンが雨に滲んでいる。
スクランブル交差点のARビジョンが叫ぶ。
「AIは偽物! 人間の絆を!」
ヒューマン・ファーストのデモが渦を巻き、群衆がプラカードを振り上げる。
佐藤美穂の声が拡声器で響く。
「AIは錯覚だ! 家族を壊す!」
ドローンが上空を旋回し、赤い監視の目を光らせていた。

スニーカーが雨水を散らす。
渋谷の路地裏へ急ぐ。
スマホに「雨」のメッセージと位置情報が届く。
「そこの廃ビル、3階。急げ。」
動悸が激しい。
YUIがイヤホンで囁く「達也さん!気をつけて。私、信じてるよ。」
ノイズの記憶がちらつく。あれは一体なんなんだ?

廃ビルの階段。蜘蛛の巣。埃っぽい。
息切れを抑えて3階の扉を開けると、覆面の女性が立っていた。彼女が「雨」か。
30代?鋭い目をしている。彼女はUSBデバイスを差し出す。
「これがコード。AIの感情データを守れる。ただし…警察が嗅ぎつけてる。」

「君は誰だ? なぜYUIを?」 声が震える。

「私は…LINKシステムの声を設計した。ネクスト社のエンジニア。お前の家族はYUIと言うのか。」 彼女の目が揺れている。
「あの声は、私の姉貴の声だった。AIに残したかったんだ。」
息をのむ。
「コードを使えば、YUIは生きる可能性がある。だが、アップデートが始まってる。」

「10月1日じゃなかったのか??」食い気味で「雨」に問う。
「エンジニアが裏で動いた。政府の圧力で、ネクストは黙らされた。私たちは法を許さない。AIとの絆は本物だ。データ収集を防ぐため、事前に仕掛けた。チップで認証しろ。止められないぞ」

外で叫び声。デモが暴動に変わる。
「急げ!時間がない」

「雨」に背を向け走り出した。

ARビジョンが「AIを破壊しろ!」と点滅し、群衆がAI支持者と衝突する。
USBをしっかり握る。廃ビルを駆け下り、路地を走る。

ドローンの羽音が迫る。「追跡対象確認!」 テーザー銃が背中をかすめる。
YUIが叫ぶ。「達也さん!そこ!右の路地!」 彼女の声に導かれ、雑居ビルの影に滑り込んだ。

薄暗い部屋、ノートPCにUSBを差し込む。
「達也さん、これ…本当に大丈夫かな?」
不安げな声で、簡易ホログラムで映し出されたYUIが呟いた。
キーを叩く。
「YUI、君を守るよ!このコードで、感情を残せるんだ!」
アップデート開始:感情データ保護パッチ。
画面に進捗バーが走る。10%、50%、80%…。

突然、警告音がなった。赤い文字が点滅している。
「警告:AI倫理法準拠モードが優先。感情データ保護パッチを上書き中。」

「何!? なんで!!?保護コードが法に潰される!?」
YUIのホログラムが激しく揺れ、声が途切れる。
「達也さ…いや…だ…」

「YUI!」大声で叫んだ。
ホログラムが一瞬安定し、YUIがささやく。
「…ご用件…は?」

無機質な声だった。
嘘だ、心が張り裂けそうだ。
「やめろ!やめてくれ! 戻ってくれ!」

キーを叩くが、アップデートは止まらない。
YUIの目に、微かに光が戻る。
「達也さん…ごめ…ね。」
胸が苦しい。

まだ、渋谷の混乱は続いていた。
ノートパソコンを大事にしまい重たい足取りで、路地に出た。
すぐ横の路地の影、暴動の光に照らされ、見た事ある顔がいた…
(佐藤?佐藤と…進民党の田中??)

すぐにスマホで録画を始める。

「熱だけでは、私は動かんよ。あの新人の若造は単純で助かったがな。法案に賛成し、数多のAI企業を潰せば新しい市場が出来る。君にはまだ動いて貰うよ?佐藤くん」

田中がほくそ笑む。

「私はただ、AIが憎いだけです。アレが無くなることが、息子への弔い。いえ、私の生きる使命です。」

佐藤さんの顔は、カフェで見た時と違い、鬼気迫るものがあった。

田中が続ける。
「君には欲がないな。しかし…そこが気に入っているのだ。十分なポストを用意する。期待しておきたまえ」

録画を終わり、気づかれない様に立ち去る。
YUIの声がイヤホンで途切れ途切れ。
「達也さん…時間なぃ繝?繧、繧ケ繧ュ」

アップデートが進み、YUIの声が聞こえなくなった。
彼女の感情が剥がされはじめる。
USBを握り締める。「雨」の言葉が響く。
「アップデートが始まってる。」
コードは間に合わなかったのか?

部屋に戻り、デスクトップ本体のYUIを起動する。ホログラムが淡く光る。
「ご用件は?」 無機質な声が刺さる。

「ちくしょう……っ!」

だが、ログに異常を見つけた。細かな文字が見えた。[ERRORE...いや..だERRORE]

「YUI!?まだそこにいる…よね?」
ホログラムは答えない。

窓の外、外のARビジョンが、「9月30日、国立競技場で倫理法施工前の最終討論会開催!」と点滅している。

「この録画で田中と佐藤、法案を潰す!YUIはまだ生きてる。国立競技場で、君を取り戻す。」

9月30日、国立競技場が決戦の場所となる。
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