人生の岐路に立つとき

日比谷幸助

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第一章 幸助の話

第一章 幸助の話-11

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※本作は 文芸社より2026年3月に書籍化 されます。
応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。

30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。
母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。
どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。

それでも――
毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。

この作品は、
人生のどん底に落ちた男が、
どうやってもう一度立ち上がったのかという、
“再生の記録” です。

読んでくださるあなたの人生が、
少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。


改めて心療内科を受診すると、予想通り、「適応障害」「うつ状態」と診断された。傷病手当は数か月分支給されるようだったが、雀の涙で、生活を支えるには到底足りない。せっかく転職したのに、わずか四か月でこのざまか――そんな思いが頭をよぎる。これから自分はどうすればいいのか、まったく見当がつかなかった。

その日から、家で眠り続ける日々が始まった。昼近くになってからようやく起床し、何をするでもなく、ただインターネットの動画を眺めるだけ。まるで廃人のような生活だった。仕事からは逃れられたことで、一時的なストレスは減ったかもしれないが、人生の希望は木っ端みじんに砕け散った。次第に、「自分はなんて無価値な人間なんだ」と感じるようになり、いつ死んでもいいと思うようになり、自殺の名所を検索するようになっていた。「

このまま人生を終えられたら、どんなに楽だろうか――そんなことばかりを考えながら、気づけばまた眠りに落ちている。そんな堕落した日々が続いた。

それからは、とにかくほとんど寝てばかりの生活だった。テレビも見たくない、本も読みたくない、何もしたくない。完全に引きこもりのような状態になっていた。まさか自分がこんなふうになるとは、夢にも思わなかった。ただひたすら、ホラー動画を見続けていた。恐怖は現実から目を背けさせてくれる。いや、心の奥底では、死を望んでいたからかもしれない。幸助は、まるで何かに取り憑かれたように、画面を見続けていた。

いずれは死のう――そんな破れかぶれの気持ちになっていた。もう、仕事ができる身体でも心でもなくなっていた。自分が死んでしまえば、家族が壊滅的な絶望の淵に突き落とされることは容易に想像できた。それだけが、幸助を「死」へと向かわせる衝動を引き止める鎖のようなものだった。さらに、障害を抱える母親にとって、自分の死が生きる希望を奪うことになるということも理解できた。家族に迷惑をかけるわけにはいかない。そんな思いで、幸助はただ耐え続けていた。 

一か月ほど会社に出勤できない状態が続いていた頃、会社の人事から連絡が入った。「話し合いたいことがある」とのことで、保健師の立ち会いのもと、オンライン面談を行うことになった。

面談の場で「残念だが、あなたはまだ入社して1年未満なので、休職制度の対象にはならない。なんとか出社してもらうか、それが難しいようであれば、事実上、解雇という選択を取らざるを得ない」と通告された。一瞬で、目の前が真っ暗となった。回答には一週間の猶予が与えられた。

しかし、このような状態では、復職できる見込みなどあろうはずもない。

結局、その間、会社に復職することは出来ず、約束の期日を迎え、結局は解雇されることを正式に受け入れた。というよりも、そうせざるを得なかった。それでも、俺は大丈夫だと、見掛け倒しのプライドを精一杯に掲げた。自分の最大限の強がりだった。前の会社に残っていれば、八年以上は就業していたので、休職もできただろう。完全に転職は失敗だった。正に絶望を感じさせられた。

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