197 / 436
第一章 アーウェン幼少期
伯爵は知己と再会する ③
しおりを挟む
ラウドは目の前でほとほとと涙を流し、アーウェンを抱き締めて孫を可愛がる手つきでその頭を、細い身体を撫でて愛で、そしてまた愚息の愚痴を零し続ける知己を、いささかうんざりする思いで眺める。
「うっ…うっ…うっ……くそぅ……カヤジャは王都に行ったままで、ウラルは臨月までは動きたいと今もきっと可愛いスフィーナを連れて『子ども連れお茶会』とかいうので楽しくやっているというのに……コウジャは女よりも仕事の方が楽しいとまだ誰にも心を預けず、一番阿呆なクージャが息子だけでももうけてくれればと思っていたのに、一番やらかしおって……くっ……可愛い坊や、この爺の頭をなでなでして慰めておくれ……グスッ……」
「タークジャ小父殿……いいかげん、その子を放してくださいよ……」
「嫌じゃ!この町にいる間は、私が祖父代わりに可愛がるのじゃ!お前には可愛いエレノア嬢がおろう!リグレも……おや?あの小生意気な坊主はどうした?」
「アレは今王都の貴族学院所属ですよ。あと二年で中等部に上がります」
「おお、もうそんなになるか……では、今度の休暇には我が家との見合いの都合をつけてくれ!」
「どうしてそんな話になるんですか?!この町のおかしさ具合をどうにかしてくれという話だったのでは?!」
「おぉ!そう……そうだった。そんなわけで、可愛いラウドや、この小父さんの代わりにとっとと役所に行って余所者を叩き出して、クージャの根性も叩き直してくれ。その間お前さんも暇じゃろうから、義父上の代わりにこの爺が遊んでやるからな~?馬に乗るか?玉蹴りが良いか?こんなに細くては、エレノアと駆けっこしても負けてしまうぞ?まずは爺と鬼ごっこでもするかのぅ?」
「……そんな元気な祖父がいてたまりますか。良いですよ。うちの執事も思うところがあったようですし、ある程度は力をお貸しします。しかし……」
「クージャは生涯我が領地から出さん。嫁もいらんじゃろう。どこぞで種を捲いているかわからんような愚か者なぞ埋めて畑の肥やしにしてやってもよいが、毒芽が生えかねんから止めておくが」
なかなかに不穏なことを話すが、言い回しを理解できないアーウェンは、老人というにはまだ逞しいその男性の膝の上でキョトンとしている。
なぜ自分が義父に呼ばれたのかと思ったが、『養子とした…』と義父が言った次の瞬間には抱き上げられ、今まで会ったどの大人よりも素早く熱烈に抱き締められて頭を撫でられ、そのうちに泣き出されてしまったのだ。
脳みそが状況を理解することすら放棄し、ただ頭や身体を優しく撫でられるに任せるしかないのである。
「うっ…うっ…うっ……くそぅ……カヤジャは王都に行ったままで、ウラルは臨月までは動きたいと今もきっと可愛いスフィーナを連れて『子ども連れお茶会』とかいうので楽しくやっているというのに……コウジャは女よりも仕事の方が楽しいとまだ誰にも心を預けず、一番阿呆なクージャが息子だけでももうけてくれればと思っていたのに、一番やらかしおって……くっ……可愛い坊や、この爺の頭をなでなでして慰めておくれ……グスッ……」
「タークジャ小父殿……いいかげん、その子を放してくださいよ……」
「嫌じゃ!この町にいる間は、私が祖父代わりに可愛がるのじゃ!お前には可愛いエレノア嬢がおろう!リグレも……おや?あの小生意気な坊主はどうした?」
「アレは今王都の貴族学院所属ですよ。あと二年で中等部に上がります」
「おお、もうそんなになるか……では、今度の休暇には我が家との見合いの都合をつけてくれ!」
「どうしてそんな話になるんですか?!この町のおかしさ具合をどうにかしてくれという話だったのでは?!」
「おぉ!そう……そうだった。そんなわけで、可愛いラウドや、この小父さんの代わりにとっとと役所に行って余所者を叩き出して、クージャの根性も叩き直してくれ。その間お前さんも暇じゃろうから、義父上の代わりにこの爺が遊んでやるからな~?馬に乗るか?玉蹴りが良いか?こんなに細くては、エレノアと駆けっこしても負けてしまうぞ?まずは爺と鬼ごっこでもするかのぅ?」
「……そんな元気な祖父がいてたまりますか。良いですよ。うちの執事も思うところがあったようですし、ある程度は力をお貸しします。しかし……」
「クージャは生涯我が領地から出さん。嫁もいらんじゃろう。どこぞで種を捲いているかわからんような愚か者なぞ埋めて畑の肥やしにしてやってもよいが、毒芽が生えかねんから止めておくが」
なかなかに不穏なことを話すが、言い回しを理解できないアーウェンは、老人というにはまだ逞しいその男性の膝の上でキョトンとしている。
なぜ自分が義父に呼ばれたのかと思ったが、『養子とした…』と義父が言った次の瞬間には抱き上げられ、今まで会ったどの大人よりも素早く熱烈に抱き締められて頭を撫でられ、そのうちに泣き出されてしまったのだ。
脳みそが状況を理解することすら放棄し、ただ頭や身体を優しく撫でられるに任せるしかないのである。
22
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる