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第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵は決意する ②
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しかしラウドはその報告に顔を顰めはしても、トントンと指で執務机を叩くだけで、何も咎めはしない。
確かに彼は貧しさを金に換えることを条件に性を搾取するということに関して厳粛な態度を取るが、それを産業として表立たずに手を出している貴族がいるということも理解しているのだ。
だがそれが自分の血縁──数代前に家系から外された者の末裔だとしても──が関わっているのならば、目を逸らしているわけにはいかない。
しかもソレを提供していたのはおそらく、アーウェンの実父と実兄。
領村内の若い女を我が物として差し出さなかったというのは、意外ではあるが評価しよう。
しかしそれでも妻以外の女性と肌を合わせるというのが、倫理的に許せないのだ。
「……しかもそんなことをしていても、サウラス男爵家は裕福とは無縁だ。もし貴族家の女性をもてなすというのがただの慈善行為で、金品を受け取っていないというのならばアーウェンの兄たちを奉公に出さざるを得ないということなのかもしれないが」
「王都にあるサウラス男爵家の外観と厨房やアーウェン様と兄君たちの共同寝室としていた応接室は、そのとおり酷い有様のようです。しかし夫妻の使う寝室、その隣にある書斎はまともなもので、特に三男の令息が産まれた時から使っているという奥の部屋に関しては、かなり質の良い物と高価な本などが揃えられているようです」
「ふむ……」
「旦那様が遣わされた執事はほとんどその部屋に入れず、他の使用人もいないのに掃除などにも呼ばれないと……数日に一度、家政婦が衣服を受けとるようですが、それも男爵自身が偽名を使って裕福な平民のために洗濯を請け負う店に持ち込んでいるともあります」
「ということは、実質あの家に残っている息子の世話をしているのは、両親のみということか……」
「いえ……それが……」
言い淀んだロフェナに、ラウドはチラリと視線を向ける。
若い顔は何か理解しがたいという感情で眉を顰め、少し首を傾げながら言葉を続けた。
「両親…というよりは、ほぼ父親、サウラス男爵のみが令息の部屋に出入りし、夫人は顔を合わせることすらしていないようです」
「何だと……?」
使用人どころか、実の母すら会わない息子。
本当にそんな存在が、あの家に居るのだろうか──
「……もう少し、詳しく内情を探る必要があるな。アーウェンの代わりに受け入れた女児を世話するために、使用人を増やすように仕向けろ。追加で給金を出すと言えば、断りはしまい。それとサウラス領村の中にも何人か紛れさせ、もう少し詳しく報告を上げさせるのだ」
「畏まりました。父から、あの村に滞在したことのある貴族家を調べた報告書が届いております。そちらへも『耳』を送りましょうか?」
「ああ。その采配はお前とバラットに任せよう」
スッと手を動かすと、ロフェナは軽く頭を下げてから執務室を出た。
アーウェンから感じていた糸よりも細い黒い気配が消えたことはわかっているが、その原因がサウラス男爵家に根源していることに代わりはないだろう。
何かのきっかけでそれが復活するかもしれず、アーウェンを友人の領へ発たせる前にその憂いを断っておきたいというのが、ラウドの偽ざる心だった。
確かに彼は貧しさを金に換えることを条件に性を搾取するということに関して厳粛な態度を取るが、それを産業として表立たずに手を出している貴族がいるということも理解しているのだ。
だがそれが自分の血縁──数代前に家系から外された者の末裔だとしても──が関わっているのならば、目を逸らしているわけにはいかない。
しかもソレを提供していたのはおそらく、アーウェンの実父と実兄。
領村内の若い女を我が物として差し出さなかったというのは、意外ではあるが評価しよう。
しかしそれでも妻以外の女性と肌を合わせるというのが、倫理的に許せないのだ。
「……しかもそんなことをしていても、サウラス男爵家は裕福とは無縁だ。もし貴族家の女性をもてなすというのがただの慈善行為で、金品を受け取っていないというのならばアーウェンの兄たちを奉公に出さざるを得ないということなのかもしれないが」
「王都にあるサウラス男爵家の外観と厨房やアーウェン様と兄君たちの共同寝室としていた応接室は、そのとおり酷い有様のようです。しかし夫妻の使う寝室、その隣にある書斎はまともなもので、特に三男の令息が産まれた時から使っているという奥の部屋に関しては、かなり質の良い物と高価な本などが揃えられているようです」
「ふむ……」
「旦那様が遣わされた執事はほとんどその部屋に入れず、他の使用人もいないのに掃除などにも呼ばれないと……数日に一度、家政婦が衣服を受けとるようですが、それも男爵自身が偽名を使って裕福な平民のために洗濯を請け負う店に持ち込んでいるともあります」
「ということは、実質あの家に残っている息子の世話をしているのは、両親のみということか……」
「いえ……それが……」
言い淀んだロフェナに、ラウドはチラリと視線を向ける。
若い顔は何か理解しがたいという感情で眉を顰め、少し首を傾げながら言葉を続けた。
「両親…というよりは、ほぼ父親、サウラス男爵のみが令息の部屋に出入りし、夫人は顔を合わせることすらしていないようです」
「何だと……?」
使用人どころか、実の母すら会わない息子。
本当にそんな存在が、あの家に居るのだろうか──
「……もう少し、詳しく内情を探る必要があるな。アーウェンの代わりに受け入れた女児を世話するために、使用人を増やすように仕向けろ。追加で給金を出すと言えば、断りはしまい。それとサウラス領村の中にも何人か紛れさせ、もう少し詳しく報告を上げさせるのだ」
「畏まりました。父から、あの村に滞在したことのある貴族家を調べた報告書が届いております。そちらへも『耳』を送りましょうか?」
「ああ。その采配はお前とバラットに任せよう」
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アーウェンから感じていた糸よりも細い黒い気配が消えたことはわかっているが、その原因がサウラス男爵家に根源していることに代わりはないだろう。
何かのきっかけでそれが復活するかもしれず、アーウェンを友人の領へ発たせる前にその憂いを断っておきたいというのが、ラウドの偽ざる心だった。
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