383 / 437
第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵は言い分を聞く ②
しおりを挟む
入室した時から頬を膨らまし不機嫌さを隠しもしない少年を小突き、頭を押さえつけながら自分も頭を何度も下げる老人を見るラウドは、執務室に据えられたソファに、アーウェンと共に座っている。
ここにあえて義息子を連れてくる必要がないと言えばなかったかもしれないが、あえての対面だ。
「ホレッ!ちゃんと坊ちゃまに謝らんか!!」
「イテッ……何が『坊ちゃま』だよ……生まれつきのお貴族様でもあるまいし……だいたいどこから来たのかだってわかんねぇのに……」
「おっ、お前っ!なっ、何ちゅうことを……」
祖父は青褪めてブルブルと震えるが、少年はお構いなしにアーウェンを睨みつける。
「だいたい!小さい姫様だって、本物の坊ちゃまだって!綺麗な髪じゃないか!こんなニセモノみたいな真っ黒な汚い髪じゃない!こんな悪魔みたいなやつはとっとと……祖父ちゃん、何す……ガァッ!!」
もはや全身をガクガクと揺らし冷汗を垂らす老人が孫の口を塞いだが、それを振り払おうともがき逃れたところで、成長途中の身体は床に激しく叩きつけられ取り押さえられた。
「……アーウェン様を、侮辱するな」
「カラ」
ラウドがそうしろと言ったわけでもないが、アーウェンの従者として後ろに控えていたはずのカラは、さらに言いつのろうとしていた少年を床に押さえつけている。
そして部屋の中に控えている者は誰も少年に同調することなく、狼狽える老人と怯えた顔をするアーウェン以外は冷ややかに少年を見下ろしていた。
「……ずいぶんと増長しているようだが、どうしてアーウェンが貴族ではないと?」
「だ…って……そ、そんな黒い髪のやつなんて、この町にはいな……」
「そうだな」
これまでの訓練の成果を披露するような見事な取り押さえ方でカラは少年を押さえつけているが、声を出すことができる少年がラウドの問いに切れ切れに答える。
「確かに我が一族にはアーウェンと同じ髪色の者はいないし、この領にいる者とて、暗褐色ぐらいの者がせいぜいか」
「領主っ…様だって……わかってるならっ……」
「だがそれは今代と先代の世代の中では、だ」
「ぇ……?」
「数代前のターランド一族の中には、この子と同じように暗い髪色をした者もいたのだ……お前たちが知らぬだけで」
ターランド一族だけが知る、そして限られた者しか入ることが許されないこの城のある一室に、知られざる家族を含めた一族すべての肖像画が所蔵されているのだ。
それを軽々しく広めないのは一族の縁からその髪色の者が排除されているせいであるが──ラウドはジロリと少年の頭を一瞥したが、溜息をつくとこれで何度目かになるかソファに座るようにと促した。
ここにあえて義息子を連れてくる必要がないと言えばなかったかもしれないが、あえての対面だ。
「ホレッ!ちゃんと坊ちゃまに謝らんか!!」
「イテッ……何が『坊ちゃま』だよ……生まれつきのお貴族様でもあるまいし……だいたいどこから来たのかだってわかんねぇのに……」
「おっ、お前っ!なっ、何ちゅうことを……」
祖父は青褪めてブルブルと震えるが、少年はお構いなしにアーウェンを睨みつける。
「だいたい!小さい姫様だって、本物の坊ちゃまだって!綺麗な髪じゃないか!こんなニセモノみたいな真っ黒な汚い髪じゃない!こんな悪魔みたいなやつはとっとと……祖父ちゃん、何す……ガァッ!!」
もはや全身をガクガクと揺らし冷汗を垂らす老人が孫の口を塞いだが、それを振り払おうともがき逃れたところで、成長途中の身体は床に激しく叩きつけられ取り押さえられた。
「……アーウェン様を、侮辱するな」
「カラ」
ラウドがそうしろと言ったわけでもないが、アーウェンの従者として後ろに控えていたはずのカラは、さらに言いつのろうとしていた少年を床に押さえつけている。
そして部屋の中に控えている者は誰も少年に同調することなく、狼狽える老人と怯えた顔をするアーウェン以外は冷ややかに少年を見下ろしていた。
「……ずいぶんと増長しているようだが、どうしてアーウェンが貴族ではないと?」
「だ…って……そ、そんな黒い髪のやつなんて、この町にはいな……」
「そうだな」
これまでの訓練の成果を披露するような見事な取り押さえ方でカラは少年を押さえつけているが、声を出すことができる少年がラウドの問いに切れ切れに答える。
「確かに我が一族にはアーウェンと同じ髪色の者はいないし、この領にいる者とて、暗褐色ぐらいの者がせいぜいか」
「領主っ…様だって……わかってるならっ……」
「だがそれは今代と先代の世代の中では、だ」
「ぇ……?」
「数代前のターランド一族の中には、この子と同じように暗い髪色をした者もいたのだ……お前たちが知らぬだけで」
ターランド一族だけが知る、そして限られた者しか入ることが許されないこの城のある一室に、知られざる家族を含めた一族すべての肖像画が所蔵されているのだ。
それを軽々しく広めないのは一族の縁からその髪色の者が排除されているせいであるが──ラウドはジロリと少年の頭を一瞥したが、溜息をつくとこれで何度目かになるかソファに座るようにと促した。
28
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる