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秘める者。
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そんなバルトロメイが別れる日まで打ち明けなかったのは、『家族』の存在と『神語が話せる』という事実。
この2つについては師匠であるバルトバーシュと、もう1人の師匠マクロメイから厳しく言われていたのである。
「……お前のそのことについては、誰にも絶対言ってはいけないよ。要らぬ争いに巻き込まれかねない」
「そうだぞ!お前の話す『言葉』には力がある。バルトバーシュが理解して発する『言葉』だって、他の神官たちより数段すごいが、お前の場合はその段数がけた違いに高い位置にあるんだからな」
「高い……?」
意味がわからずバルトロメイが2人の師匠を交互に見ると、それぞれ納得させるように頷いた、
「恐らくは、お前自身が『母』か『父』と呼ぶ者と、常に神語で会話をしていたからだろう。私は彼らと会ったことはないし、得た知識は各地の分教神殿にある書物を見て解析したり、意味を理解せずに音だけ伝えられた『祈り』を聞いて『こういう発音だったら意味が通るのかもしれない』という推測から来るもの……お前が私と同じ『祈り』の言葉を唱えたとしても、私自身がその者に与える効果よりずっといいものを、お前は授けることができるのだ」
「つまり、お前にとっては『当たり前の会話』だったとしても、修行しているバルトバーシュよりもずっとすごいんだぞ!ってことさ」
「ああ……その域に私はとうてい辿り着けまい。私と同じ修練の者にとっては、お前の存在というものが尊く、羨ましく、そして妬ましい……」
そういう師匠の顔は苦痛に耐えるかのように歪んだが、『ヒト』とは違う環境で育ったバルトロメイにはそれが心の内にある葛藤だということを察することはできず、ただ師匠が突然体のどこかを痛めたのかとしか思えなかった。
バルトバーシュは複数形で語ったが、誰よりも一番妬ましく、羨ましく、そして尊く思っているのは他でもない自分だとわかっており、『師匠』という名目でこのまったく人の世に触れることのなかった少年に対する庇護の気持ちと共にその醜い嫉妬心を抱えていることを辛く思っていた。
実を言えばいまだにバルトロメイは師匠が顔を歪ませた理由を、ハッキリとは分かりかねている。
おそらくは自分に対しての気持ちを言ったのだと思うが、何故それを言われたのかわからない。
ただバルトロメイの『家族』のことや神語が話せることを明かしてはいけないと言われ続け、それがバルトロメイ自身を守ることのひとつになると言われて、そうなのだろうと納得してそれ以上考えていないというところだ。
逆に『人間の言葉』を理解したり話したりできないということも、それはそれで危険なのだとも教えられた。
確かにバルトロメイが『家族』から神語とそれぞれの種族の言語で話しかけても『ヒト』は理解してくれず、師匠ですら不完全な神語の単語でやり取りをするのはもどかしかった想いがある。
いっそのこと『母』のように直接頭の中に『伝えたいこと』を流し込んでくれればいいのに、それができる『ヒト』は現れなかった。
となればバルトロメイにできることはやはり『ヒト語』を覚えるしかなく、そこからやっと意思疎通ができて、師匠に請われて神語の研究を手助けすることとなったのだが、その自覚は教える側に回った弟子には無く、単純に師匠との会話が成り立つという手段が増えたぐらいの感覚だったのである。
この2つについては師匠であるバルトバーシュと、もう1人の師匠マクロメイから厳しく言われていたのである。
「……お前のそのことについては、誰にも絶対言ってはいけないよ。要らぬ争いに巻き込まれかねない」
「そうだぞ!お前の話す『言葉』には力がある。バルトバーシュが理解して発する『言葉』だって、他の神官たちより数段すごいが、お前の場合はその段数がけた違いに高い位置にあるんだからな」
「高い……?」
意味がわからずバルトロメイが2人の師匠を交互に見ると、それぞれ納得させるように頷いた、
「恐らくは、お前自身が『母』か『父』と呼ぶ者と、常に神語で会話をしていたからだろう。私は彼らと会ったことはないし、得た知識は各地の分教神殿にある書物を見て解析したり、意味を理解せずに音だけ伝えられた『祈り』を聞いて『こういう発音だったら意味が通るのかもしれない』という推測から来るもの……お前が私と同じ『祈り』の言葉を唱えたとしても、私自身がその者に与える効果よりずっといいものを、お前は授けることができるのだ」
「つまり、お前にとっては『当たり前の会話』だったとしても、修行しているバルトバーシュよりもずっとすごいんだぞ!ってことさ」
「ああ……その域に私はとうてい辿り着けまい。私と同じ修練の者にとっては、お前の存在というものが尊く、羨ましく、そして妬ましい……」
そういう師匠の顔は苦痛に耐えるかのように歪んだが、『ヒト』とは違う環境で育ったバルトロメイにはそれが心の内にある葛藤だということを察することはできず、ただ師匠が突然体のどこかを痛めたのかとしか思えなかった。
バルトバーシュは複数形で語ったが、誰よりも一番妬ましく、羨ましく、そして尊く思っているのは他でもない自分だとわかっており、『師匠』という名目でこのまったく人の世に触れることのなかった少年に対する庇護の気持ちと共にその醜い嫉妬心を抱えていることを辛く思っていた。
実を言えばいまだにバルトロメイは師匠が顔を歪ませた理由を、ハッキリとは分かりかねている。
おそらくは自分に対しての気持ちを言ったのだと思うが、何故それを言われたのかわからない。
ただバルトロメイの『家族』のことや神語が話せることを明かしてはいけないと言われ続け、それがバルトロメイ自身を守ることのひとつになると言われて、そうなのだろうと納得してそれ以上考えていないというところだ。
逆に『人間の言葉』を理解したり話したりできないということも、それはそれで危険なのだとも教えられた。
確かにバルトロメイが『家族』から神語とそれぞれの種族の言語で話しかけても『ヒト』は理解してくれず、師匠ですら不完全な神語の単語でやり取りをするのはもどかしかった想いがある。
いっそのこと『母』のように直接頭の中に『伝えたいこと』を流し込んでくれればいいのに、それができる『ヒト』は現れなかった。
となればバルトロメイにできることはやはり『ヒト語』を覚えるしかなく、そこからやっと意思疎通ができて、師匠に請われて神語の研究を手助けすることとなったのだが、その自覚は教える側に回った弟子には無く、単純に師匠との会話が成り立つという手段が増えたぐらいの感覚だったのである。
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