間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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持ち掛けられる者。

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バルトロメイがロダーと共にカウンターの前で待っていると、ギルド職員が応接室に来るようにと招いた。
「……どうしたんだ?」
「なんだろうね?」
互いに顔を見合わせながら指示された部屋に入ると、ギルドマスターであるバンドーラという大男が銀髪の女性を伴ってソファに座って待っていた。
「では本題だ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?豚の鳴き真似か?」
「どこがだよ!せめて鳥の鳴き声…いや、そうじゃねぇ!!」
「じゃあいいだろう」
せっかちなのか単に説明するのが面倒なのか、同席する女性を紹介しもせずに、ギルドマスターは1枚の紙をロダーの前にスッと差し出した。
「パーティー脱退届だ。異論は認めん。サインをした瞬間に、お前は『白鳥の姉妹姫ホワイトスワン・プリンセス』と無関係だ」
「望むところだ!」
ニヤッと笑って言われた瞬間に、ロダーはサインを──しようとして取り上げられた。
「その前に、お前自身の殺害未遂についての情報と訴訟状、あのパーティーに加入した男たちの行方で知ってることを記述してくれ」
「何だって?」
ギョッとしてロダーが目を剥く。
だがそんな様子を意に介さず、銀髪の女性はサッと紙の束を取り出し、ロダーの前にペンと共に置いた。
「やだよ!面倒くせぇ!!」
「じゃ、脱退は無しな」
ピリッと音を立てて、ギルドマスターの太い指が掴んでいる紙の上部が少しだけ破れる。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?また豚の鳴き真似か?」
「違うって!てか、あんたの中で豚って『ちょ』って鳴くのかよ?!」
「鳴くぞ?すんごいちっこいのが。鳥かごに入るぐらいのちっこい品種がいるんだ、俺の故郷では」
「いるのかよ?!見てみたいな!!ほらよ!」
問われて何故か嬉しそうな顔つきで、ギルドマスターは大きな手のひらですごく小さな物を包むジェスチャーをする。
それをげんなりとした顔をして見たロダーは、ふぅと溜息をついてから、諦めたように身に付けていた鞄から手のひらに乗る大きさの玉を取り出した。
「……ッチ。何で知ってるんだか……他の奴らがどうやって始末されたのかは知らないが、俺を『他の奴らと同じようにしてから』どうするつもりだったのかは、これに記録されてるよ。そっちの美人さんがこれ・・を使えるんならな」
「ご心配なく。これでも以前はAランクパーティーに所属していましたの。魔法使いとして」
「…………………あ、あんた……ひょ、ひょっとして」
スッと伸ばされた白い手をロダーは握ろうとしたようだったが、それは素早く動いて、玉は初めて声を出した個性の指先で弄ばれている。
「お上手ね。とても鮮明。これだけの能力と魔力があるのならば、Bランク試験もクリアできるのでは?」
「やだね。そうなったら簡単に辞めることもできなくなる」
ふふっと美女に笑いかけられたが、それに喜ぶわけでもなく、憮然としてロダーはソファに座り直した。


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