207 / 261
持ち掛けられる者。
しおりを挟む
バルトロメイがロダーと共にカウンターの前で待っていると、ギルド職員が応接室に来るようにと招いた。
「……どうしたんだ?」
「なんだろうね?」
互いに顔を見合わせながら指示された部屋に入ると、ギルドマスターであるバンドーラという大男が銀髪の女性を伴ってソファに座って待っていた。
「では本題だ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?豚の鳴き真似か?」
「どこがだよ!せめて鳥の鳴き声…いや、そうじゃねぇ!!」
「じゃあいいだろう」
せっかちなのか単に説明するのが面倒なのか、同席する女性を紹介しもせずに、ギルドマスターは1枚の紙をロダーの前にスッと差し出した。
「パーティー脱退届だ。異論は認めん。サインをした瞬間に、お前は『白鳥の姉妹姫』と無関係だ」
「望むところだ!」
ニヤッと笑って言われた瞬間に、ロダーはサインを──しようとして取り上げられた。
「その前に、お前自身の殺害未遂についての情報と訴訟状、あのパーティーに加入した男たちの行方で知ってることを記述してくれ」
「何だって?」
ギョッとしてロダーが目を剥く。
だがそんな様子を意に介さず、銀髪の女性はサッと紙の束を取り出し、ロダーの前にペンと共に置いた。
「やだよ!面倒くせぇ!!」
「じゃ、脱退は無しな」
ピリッと音を立てて、ギルドマスターの太い指が掴んでいる紙の上部が少しだけ破れる。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?また豚の鳴き真似か?」
「違うって!てか、あんたの中で豚って『ちょ』って鳴くのかよ?!」
「鳴くぞ?すんごいちっこいのが。鳥かごに入るぐらいのちっこい品種がいるんだ、俺の故郷では」
「いるのかよ?!見てみたいな!!ほらよ!」
問われて何故か嬉しそうな顔つきで、ギルドマスターは大きな手のひらですごく小さな物を包むジェスチャーをする。
それをげんなりとした顔をして見たロダーは、ふぅと溜息をついてから、諦めたように身に付けていた鞄から手のひらに乗る大きさの玉を取り出した。
「……ッチ。何で知ってるんだか……他の奴らがどうやって始末されたのかは知らないが、俺を『他の奴らと同じようにしてから』どうするつもりだったのかは、これに記録されてるよ。そっちの美人さんがこれを使えるんならな」
「ご心配なく。これでも以前はAランクパーティーに所属していましたの。魔法使いとして」
「…………………あ、あんた……ひょ、ひょっとして」
スッと伸ばされた白い手をロダーは握ろうとしたようだったが、それは素早く動いて、玉は初めて声を出した個性の指先で弄ばれている。
「お上手ね。とても鮮明。これだけの能力と魔力があるのならば、Bランク試験もクリアできるのでは?」
「やだね。そうなったら簡単に辞めることもできなくなる」
ふふっと美女に笑いかけられたが、それに喜ぶわけでもなく、憮然としてロダーはソファに座り直した。
「……どうしたんだ?」
「なんだろうね?」
互いに顔を見合わせながら指示された部屋に入ると、ギルドマスターであるバンドーラという大男が銀髪の女性を伴ってソファに座って待っていた。
「では本題だ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?豚の鳴き真似か?」
「どこがだよ!せめて鳥の鳴き声…いや、そうじゃねぇ!!」
「じゃあいいだろう」
せっかちなのか単に説明するのが面倒なのか、同席する女性を紹介しもせずに、ギルドマスターは1枚の紙をロダーの前にスッと差し出した。
「パーティー脱退届だ。異論は認めん。サインをした瞬間に、お前は『白鳥の姉妹姫』と無関係だ」
「望むところだ!」
ニヤッと笑って言われた瞬間に、ロダーはサインを──しようとして取り上げられた。
「その前に、お前自身の殺害未遂についての情報と訴訟状、あのパーティーに加入した男たちの行方で知ってることを記述してくれ」
「何だって?」
ギョッとしてロダーが目を剥く。
だがそんな様子を意に介さず、銀髪の女性はサッと紙の束を取り出し、ロダーの前にペンと共に置いた。
「やだよ!面倒くせぇ!!」
「じゃ、脱退は無しな」
ピリッと音を立てて、ギルドマスターの太い指が掴んでいる紙の上部が少しだけ破れる。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
「何だ?また豚の鳴き真似か?」
「違うって!てか、あんたの中で豚って『ちょ』って鳴くのかよ?!」
「鳴くぞ?すんごいちっこいのが。鳥かごに入るぐらいのちっこい品種がいるんだ、俺の故郷では」
「いるのかよ?!見てみたいな!!ほらよ!」
問われて何故か嬉しそうな顔つきで、ギルドマスターは大きな手のひらですごく小さな物を包むジェスチャーをする。
それをげんなりとした顔をして見たロダーは、ふぅと溜息をついてから、諦めたように身に付けていた鞄から手のひらに乗る大きさの玉を取り出した。
「……ッチ。何で知ってるんだか……他の奴らがどうやって始末されたのかは知らないが、俺を『他の奴らと同じようにしてから』どうするつもりだったのかは、これに記録されてるよ。そっちの美人さんがこれを使えるんならな」
「ご心配なく。これでも以前はAランクパーティーに所属していましたの。魔法使いとして」
「…………………あ、あんた……ひょ、ひょっとして」
スッと伸ばされた白い手をロダーは握ろうとしたようだったが、それは素早く動いて、玉は初めて声を出した個性の指先で弄ばれている。
「お上手ね。とても鮮明。これだけの能力と魔力があるのならば、Bランク試験もクリアできるのでは?」
「やだね。そうなったら簡単に辞めることもできなくなる」
ふふっと美女に笑いかけられたが、それに喜ぶわけでもなく、憮然としてロダーはソファに座り直した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー
きみゆぅ
ファンタジー
『ヴェアリアスストーリー』は神秘と冒険が交差するファンタジー世界を舞台にした物語。
不思議なちからを操るセイシュの民、失ったそのちからを求めるイシュの民、そして特殊な力を持たないがゆえに知恵や技術で栄えたヒュムが共存する中、新たなる時代が幕を開けた。
彼らは悩み迷いながらも、自分たちが信じる正義を追求し、どのように未来を切り開いていくのか。ちからと知恵、絆が交差する物語の中で、彼らは自らの運命に立ち向かい、新しい数々のストーリーを紡いでいく。
第一章はセイシュの民の視点での物語。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる